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クラウド小国、日本の限界 投資比率は北米の3分の1 2022/09/25

インターネット経由でソフトウエアなどを使うクラウドサービスの普及が日本で遅れている。IT(情報技術)投資に占める比率は2021年に4%と北米の3分の1にとどまり、25年には差がさらに広がる見通しだ。独自仕様で作る旧来システム志向が根強いためだ。クラウドの強みの低コストや最新技術を生かせず、日本のデジタルトランスフォーメーション(DX)が進まない要因になっている。

クラウドで主流となっているのが、不特定多数の利用者が使う「パブリッククラウド」だ。システム障害時に自ら対処できないといったデメリットがある一方、事業者がデータセンターを整備してサービスを一括提供するため、利用者はシステムを独自に構築せずに済む。米IDCが米アマゾン・ドット・コムのクラウド「AWS」を対象に実施した調査によると、企業はクラウド導入後にITインフラの年間コストを1社平均で22~29%削減した。

クラウドの投資効率の高さを生かし、世界の企業はDXを加速している。人工知能(AI)やビッグデータ解析など最先端の処理を行えるようになり、PwCコンサルティングの中山裕之パートナーは「クラウドで企業の開発スピードが速くなった」と話す。

米ブーム・スーパーソニックは超音速航空機の開発にクラウドによるシミュレーションを導入し、開発期間を数年短縮。24年の生産開始を目指す。ドイツ自動車大手フォルクスワーゲンは「インダストリアルクラウド」と呼ぶ生産基盤を構築し、25年までに生産効率を30%高める計画だ。

だが、日本ではクラウド利用が広がらない。米ガートナーによると、パブリッククラウドの支出額がIT支出全体に占める割合は21年に日本が4.3%。北米(14.4%)や欧州(9.7%)、中国(6.4%)を下回る。

25年の予測でも日本は8.0%と伸び悩み、22.2%の北米などとの差がさらに広がる。「世の中のスタンダードから外れてクラウド化が遅れた」。パナソニックホールディングスでDXを指揮する玉置肇グループ最高情報責任者はこう話す。

日本でクラウド活用が進まない要因は、個別に仕様を変えて開発する「オンプレミス」と呼ばれる旧来システム志向が根強いことだ。システムを組織に最適化させることを重視し、事業部門ごとに独自仕様で作ることが多い。社内に高度IT人材が少なく、システム会社への外注に依存していることも背景とされる。

このため企業はシステムの保守費用がかさみ、攻めのDX投資に資金を振り向けられずにいる。日本情報システム・ユーザー協会の21年度の調査によると、企業のIT予算の76.4%が現行ビジネスの維持・運営に使われた。

クラウド活用の遅れは、企業の競争力を劣後させる恐れがある。情報処理推進機構(IPA)や欧州連合(EU)統計局がまとめた日米欧30カ国の企業のクラウド利用状況と、スイスのIMDの「世界デジタル競争力ランキング2021」を使い散布図を作ると、クラウド利用が進む国・地域ほどデジタル競争力が高いことが見て取れる。

スウェーデンはクラウド利用企業の割合が75%と高く、デジタル競争力のスコアも95.2に達する。米国やフィンランド、ノルウェーも高水準だ。これに対し、日本はクラウド比率が31%、デジタル競争力も73.0と見劣りする。

さくらインターネットの田中邦裕社長は「企業はDXをシステム会社任せにせず、主体性を持って取り組むべきだ」と指摘する。クラウド活用の遅れは、企業にDXへの本気度を問いかけている。

(DXエディター 杜師康佑、グラフィックス 佐藤季司、映像 森田 英幸)

クラウドサービス
IT(情報技術)インフラやソフトウエアをインターネットを通じて利用するサービスの総称。ユーザーは使いたい機能を使いたい分だけ利用し、データ容量や機能を自由に拡張できる。クラウド事業者が機能を頻繁にアップグレードするため利便性に優れる。

独スタティスタによると、幅広いユーザーが使う「パブリッククラウド」の世界市場のシェアは2021年、「AWS」を展開するアマゾン・ドット・コムが15.8%で首位となった。マイクロソフト(10.7%)やグーグル(4.3%)など米国勢が上位を占め、これをアリババ集団など中国勢が追いかけている。21年の世界市場は3344億ドル(約48兆円)で、27年には2.5倍の8345億ドルに拡大する見通しだ。

クラウドはあらゆるモノがネットにつながるIoT社会の基盤になることから、経済産業省は半導体と並ぶ重要産業として育成する方針を掲げている。日立製作所元副社長で情報処理推進機構(IPA)デジタルアーキテクチャ・デザインセンターの斉藤裕センター長は「国内にある程度の技術力がなくては、インフラを維持できない」と指摘する。

(日本経済新聞)

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