金融、コンサル、外資系の転職・求人なら人材紹介【アスパイア】

無料転職支援・
相談のお申し込み

簡単登録
(入力1分)
信頼度NO.1の人材紹介エージェント

ASPIREからのメッセージ

ASPIRE message

企業の最大の資産が人材の時代に~転職がキャリア構築のメインストリームに

世界経済における日本のプレゼンスの大きな後退

グローバリゼーションやデジタルトランスフォーメーションが急速に進展するなかで、社会や企業の姿が大きく変容しています。四方を海に囲まれた島国の日本にいると1990年のバブル崩壊以降の失われた30年間における日本と世界の相対的な関係の変化に気づくことはあまりありません。然しながら、世界経済における日本のプレゼンスは大きく後退しているのです。世界のGDPに占める日本の割合の推移をみると、1968年に世界第2位の経済大国になったあと、1995年には17.6%まで シェアを拡大しました。ハーバード大学のエズラ・ヴォーゲル教授が1979年に出版した『ジャパン アズ ナンバーワン: アメリカへの教訓』が世界的な大ベストセラリーになり、日本の強さの源泉が世界から注目されたのです。私は新卒で財閥系総合商社に入社しましたが、欧米やアジアに出張すると、日本と日本人が世界から尊敬されていた時代でした。日本製品が世界に輸出され、日本企業が世界を席巻していたのです。その後、産業金融の雄と称されていた銀行に入行しました。当時の時価総額は世界第2位であり、金融業界における世界的なプレセンスは高く外資系の金融機関を遥かに凌駕していました。1998年12月の金融システム改革法により抜本的な金融市場の改革が進められるまでは、日本における外資系金融機関の業務は制限されていたのです。その後、1990年のバブル崩壊を経て失われた30年が始まり、2010年に中国に抜かれて世界第3位の経済規模に後退し、世界のGDPに占める日本のシェアは、2018年には5.7%まで縮小してしまったのです。1989年には日本の三分の一の経済規模しかなかった中国が、現在は日本の三倍以上の経済規模まで発展しているのです。

また、世界企業の時価総額ランキングでは、1989年には上位50社中、日本企業が32社も占めていました。上位10社では日本企業が8社も独占していたのです。日経平均株価は1989年12月29日の大納会で3万8915円を付け、地価高騰も凄まじく、東京23区の地価が米国全体の地価の合計を上回るともいわていました。その後30年を経過した2021年4月では、世界時価総額ランキングの上位50社中、日本企業はトヨタ自動車の1社のみになってしまいました。さらに注目すべきことは、1989年の世界時価総額ランキングのトップ企業の時価総額が10兆円程度だったのに対して、現在のGAFAなどのトップ企業の時価総額は100兆円を超えているのです。この30年で世界のトップ企業の時価総額は10倍以上も拡大しているのです。世界を見渡して銘柄を選ぶ海外の投資家は、成長性も、収益性も、投資リターンも見劣りする日本株を選ぶ理由がないと断言しています。

人的資本が企業の最大の経営資源に

世界に、物、金、情報が溢れるなかで、人の希少性が企業の成長力に大きな影響を与えるようになりました。1995年にMicrosoft Windows 95が発売され、インターネットが一般家庭にも急速に普及し始めIT業界のベンチャー企業の躍進が始まりました。東西冷戦が終わり、GPSや画像処理などの高度な軍事技術が民間産業へ転換され、停滞していたアメリカ産業が復活し始めました。1985年から1995年には、パソコン時代の到来とともにパソコン機器やソフトウェア企業が数多く設立され、市場のディファクトスタンダードを握る世界的な企業に成長しました。1975年にマイクロソフト、1977年にオラクル、1982年にコンパック・コンピュータ、1982年にアドビシステムズ、サン・マイクロシステムズ、1984年にシスコシステムズ、1984年 にデルなどが相次いで設立されました。1995年から2005年には、インターネット時代の到来とともにインターネット企業が設立され、現在の世界を席巻していす。1994年にAmazon.com、1995年にYahoo、1998年にGoogle、1999年にセールスフォース・ドットコム、2004年にFacebook、2005年にYouTubeなどが設立されたのです。

米国でIT業界を中心とするベンチャー企業が世界的な企業に成長するなかで、なぜ、日本では戦後の松下電器産業やホンダのような世界的なベンチャー企業が育たないのか。ベンチャー企業の成長力の差は、日本と米国の経済成長力の差として問題視されるようになりました。ミレミアムの2000年が目前に迫ったころ、私は、経団連の情報通信委員会のメンバーとして、日米のベンチャー企業の成長力の差について、検討する機会を得ました。

新しいアイデアを持つスタートアップ企業を育てるファンディング方法を日米で比較すると、家族・親友、ベンチャーキャピタル、大企業、政府からの調達については共通していました。最大の違いは、アメリカではエンジェル投資家の存在が極めて大きかったのです。スタートアップ企業は、最初の自己投資を使い終わってから、ベンチャーキャピタルの支援を受けるまでの期間が最も苦しい時期になりますが、アメリカではこの期間にエンジェル投資家が大きな役割を果たしていたのです。アメリカのエンジェル投資家は、起業経験者が多く、投資資金のみならず、起業や企業経営について優れたノウハウを有しています。資金の提供のみならず、自らボードメンバーになり、経営の指南にも積極的に参加するのです。さらに注目すべきことは、アメリカのエンジェル投資家は豊富な人脈から、スタートアップ企業を成長を加速させるために、優秀な経営幹部を集め、ドリームチームを組織するのです。このドリームチームの人材力が、短期間にIPOを達成させ、ベンチャー企業をグローバル企業に成長させているのです。スタートアップ企業が世界的な企業に成長した要因は、革新的で卓越した技術力や商品力、サービス力、或いは、最も早い市場への参入では必ずしもありません。スタートアップした時期には、技術力や商品力、サービス力が劣っていても、或いは、市場には競合企業がすでに数多く出現していても、ドリームチームの人材力で、群雄割拠の競争を勝ち抜き、世界的な企業に発展させたのです。スタートアップ企業の成長には、物、金、情報よりも、人が企業の最大の経営資源として重要な役割を果たす時代を迎えました。

人的資本の価値向上という時代の要請に応えるためにASPIREを設立

財閥系総合商社で物と情報のビジネスに取り組み、産業金融の雄と称される銀行で金融ビジネスに取り組んだ後、人が企業の最大の経営資源となる時代の社会的な要請と使命に応えるために、2001年に人的資本に取り組むASPIREを設立しました。

「経営戦略を実現し企業価値を高める源泉は人材である」との信念から、HumanCapitalManagement事業を展開しています。新卒の就職活動や、社会人の転職活動において、最終的に仕事や勤務先企業を選択するのは個人の主観的な判断になります。しかし、人間の判断はこれまでの経験と知識、見識に基づいてのみ行われるのです。判断をする時点で、知らない、経験したことのない仕事や企業は選択の対象になりません。知らない企業を理解することも、経験したことのない仕事の遣り甲斐や適性、将来性などを理解することは出来ないのです。その時点ではベストだと思っていた判断が、数年後には、ベストでなかったと気づくことも多々あるのです。戦略コンサルタントの草分けといわれるマッキンゼーの大前研一元日本代表も、日立製作所の原子力エンジニアを辞めて、マッキンゼーに入社した時、日本法人は設立されて二年目であり、マッキンゼーはITコンサルファームだと勘違いしており、入社後、戦略コンサルファームだと初めて認識されたそうです。

さらに、これからどのように社会やビジネス、市場、技術が変化していくのか、将来を見通すことは大変難しいことです。普通の人間は、目の前や、一歩先しか見通すことが出来ません。しかし、将棋の世界では、プロ棋士は、対局中100手先までの駒の動きを読み、それを記憶していると言われています。松下幸之助や稲盛和夫など日本を代表する経営者たちは、物事の本質を見抜き、先を見通す力が卓越しているといわれ、一般人が見えない将来の姿が明確に見えているのです。自分にはどんな適性があるのか、どんな仕事がしたいのか、なりたい自分になるにはどうしたらいいのか。自分一人で考えても、これまでの知識と経験、見識に基づく検討しかできず、これまでの自分を変えていくような新しい発想や選択肢に辿り着くのは大変難しいことなのです。予測が難しい将来を見通し、適性と関心にあったキャリアビジョンを構築していくことや、キャリアを構築する方法について検討するには、幅広い見識と経験、知識を有した信頼できる第三者からの支援やアドバイスが大切なのです。

人的資産が企業の命運の鍵を握る時代に

物、金、情報が企業の最大の経営資源だった時代には、損益決算書や貸借対照表など財務諸表に基づいて企業や株価が評価されてきました。財務諸表のなかでは、人の資産は人件費であり経費とみなされてきたのです。例えば株価については、これまで日米株式市場において、PER(株価収益率)でみて株価が割安な銘柄を買う完全予見投資が高いリターンを上げてきました。しかし、2018年以降は、株価が企業業績というファンダメンタルズと無関係に動くようになっています。企業の価値が現行の財務会計だけでは捕捉できなくなってきているのです。財務会計から漏れている企業価値の代表格が無形資産であり、知的財産や人的資産、顧客データといったバランスシートに表示されない見えない資産が、企業の成長力を左右するようになっています。スポーツの世界では、人的資産が、有形資産よりも重視されています。野球やサッカーなどのチームの戦力分析をする時に、チームの人件費の総額や一人あたりの人件費で評価するでしょうか。監督や選手一人ひとりの実績や強み・弱みを分析して、チームの戦力を分析します。チームを優勝させるには卓越した監督や絶対的なエースがどうしても必要なのです。アメリカの大リーグ(MLB)のロサンゼルス・エンゼルスのマイク・トラウトの2020年の年俸は約40億円でした。2019年から2030年までの12年間で年俸総額460億円の契約を結んでいます。2020年の世界で最も稼ぐスポーツ選手のトップはテニスのロジャー・フェデラーで約114億円でした。

スポーツの世界と同じように個人の人材力を重視する流れは、ビジネスの世界でも広がってきており、人的資産が、企業の命運の鍵を握っていることを証左する事例が多くなっています。2014年にソフトバンクの孫正義社長は、インド生まれの47歳のニケシュ・アローラを副社長に迎え入れ、半年に受け取った報酬が約165億円でした。年収1000万円の社員の1650名分に相当する年収をひとりの人間が得ているのです。テクノロジーの発展とともに注目が集まる人工知能(AI)の分野では、専門のエンジニアの不足が世界的な喫緊の課題になっています。アメリカで博士号を取得したAIエンジニアの一般的な年収は、約3300万円から5500万円だと報じられています。シリコンバレーでの自動運転技術者の平均年収は3300万円、新卒で2000万円を超えているといわれています。データベースソフトウェアで知られる世界第3位のソフトウェア企業のオラクルは、優秀なAIエンジニアを獲得するために6億円超という報酬を提示したそうです。AIエンジニアのなかでも最も高額な報酬を得ているのが、AIプロジェクトを率いた経験のあるリーダー経験者で、例えばグーグルの自動運転車開発部門のリーダーは、グーグル在職中の10年間の報酬が約137億円だったそうです。欧米では企業が自社株式を役員報酬に活用する株式報酬が一般的になっています。株価が上がれば報酬が増える仕組みで、業績拡大の動機づけを強めており、役員のパフォーマンスが年収に反映されるようになりました。最高経営責任者(CEO)の報酬で株式報酬など長期のインセンティブが占める比率は、米国が72%、英国が46%になっており、国をまたぐ経営人材の獲得競争が激しくなっています。日本でも役員報酬を活用する動きが広がっており、2021年には役員報酬を導入する企業は約2000社と上場企業の5割を超えるようになりました。2020年には日本でも役員報酬総額が10億円を超える役員は10人を超えています。1位はセブン&アイ・ホールディングス取締役のジョセフ・マイケル・デピントで報酬は24億7400万円。3位はソフトバンクグループの副社長であるマルセロ・クラウレで報酬は21億1300万円。4位は武田薬品工業のクリストフ・ウェバーで、報酬は20億7300万円と、なっています。一般的なサラリーマンの生涯給料の目安といわれる2億円以上の報酬を得ていた役員は200人を超えるようになりました。

pic

個人のキャリア構築を大きく変革する新しい潮流

無形資産である人的資産が企業の最大の経営資源になるなかで、個人のキャリア構築に、どのような大きな変革の波が押し寄せているのでしょうか。

1.個人におけるダイバーシティが不可欠に

グローバリゼーションが進展するなかで、企業の組織におけるダイバーシティが重要になるといわれてきました。さらに、事業が全世界で展開され、市場変化のなかで対象事業が組み換えられ、企業買収や経営統合で企業の組織が分裂と統合を繰り返す時代に、グローバル企業の経営幹部として活躍するには、三つの文化、三つの業界、三つの企業の経験が不可欠であるといわれています。これからは、組織だけではなく、個人のダイバーシティが大切になっているのです。全世界を対象にビジネスを展開し、絶えず対象事業が変化し、多国籍で構成される組織体であるにもかかわらず、日本だけの生活経験しかなく、一つの業界経験しかなく、一つの企業の勤務経験しかない人材の見識や判断を信任することが出来るでしょうか。

スポーツの世界では、個人におけるダイバーシティの重要性を証左する事例が溢れています。多くの日本人に刻み込まれた事例としては、2015年と2019年のラクビーワールドカップにおいて日本代表チームのキャプテンを務め、躍進の原動力になったリーチ マイケルがあげられます。母がフィジー系、父はスコットランド系の白人で、ニュージーランドで生まれ育ちながら、2014年に名将エディー・ジョーンズヘッドコーチから、日本代表のキャプテンに指名されたのです。2019年のラグビーワールドカップでは、念願の初のベスト8進出を果たしました。多国籍のチームを率いるには、日本の文化しか知らない日本選手よりも彼が適任だったのです。日本人以上に、日本と日本人を愛して理解するリーチ マイケルは、日本人と外国人の狭間でリーダーシップを発揮し、日本代表チームをONE TEAMに纏め上げました。また、試合中の審判への抗議は、勝敗の流れを左右する鍵といわれており、国際試合ではキャプテンのネィティブな英語力と国際的な交渉力が勝敗の命運を握っています。彼の卓越した英語力と交渉力が、日本代表チームの勝利に大きく貢献したことは間違いありません。スポーツの世界だけではなくビジネスの世界においても、エグゼクティブな人材として世界を舞台に活躍するには、三つの文化、三つの業界、三つの企業の経験が不可欠になっているのです。

2.指名委員会等設置会社により一社に長期間勤務するメリットが喪失

グローバルに活動する企業が増えるなか、事実上の世界標準となっているアメリカのコーポレート・ガバナンスに近づける必要性に迫られています。相次ぐ企業の不祥事を防ぐために、コーポレート・ガバナンスを強化し、経営の透明性を高めるために、取締役会のモニタリング機能を高めることが重視されています。モニタリング機能の要となるのが、経営陣の指名と報酬といわれています。社外取締役の活用によるコーポレート・ガバナンスの強化のなかで、2014年の会社法改正により、監査等委員会設置会社制度が導入され、従来の委員会設置会社は、指名委員会等設置会社に改名されました。指名委員会・監査委員会・報酬委員会という三つの委員会を通じて、経営全般を監督する取締役と、業務を執行する執行役に分離され、三つの委員会の委員は、過半数が社外取締役で構成されなければなりません。

社長・CEOは企業の顔であり、誰が選任されるかによって、企業価値は大きく変わります。経営トップが適切なタイミングで適切な後継者に交代することで、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上が確保されます。指名委員会は、社長・CEOの指名という重要な役割を担っているのです。現社⻑が後継社⻑を指名するという実務慣⾏によれば、現社長が後継社長を指名した合理的な理由を説明されることはありませんでした。しかし、指名委員会等設置会社では、社外役員が関与して適正なプロセスで社長・CEOが選任されているかをチェックし、現社長の恣意的な人選でないことを裏付け、次期社長の正統性を内外に示すことが必要になったのです。経済産業省のCGSガイドラインによれば、社長・CEOに求められる資質・能力として、困難に取り組む強い姿勢や、決断力、変化への対応力、高潔性、胆力、構想力、実行力、変革力などが求められています。

指名委員会において、サクセッションプラン(後継者計画)を策定・運用し、「あるべき社長・CEO像」に合う候補者を選出します。選出する候補者としては、必ずしも内部登用にこだわる必要はなく、むしろ、プロの経営者を外部から採用することも検討されます。

いかに優れた経営者を採用できるかが企業価値向上の鍵となっており、プロパーの社員へのこだわりを捨て、外部登用も積極的に検討していく必要があると認識されるようになっています。「あるべき社長・CEO像」に照らして、最終候補者に対する評価を行い、その評価結果を踏まえて指名委員会にて議論し、取締役会で最終的な候補者を確定します。指名された候補者に対し、現社長から業務や取引関係の引継ぎを行います。候補者が確定したことについて適時開示を行う等、ステークホルダーへ説明されます。

これまでは、指名と報酬は会長や社長に一任されることが多く、決定プロセスが不透明でした。これまで後継社長に選ばれる為には、社歴が長く、前任社長との関係が深く、前任の社長から信任されることが何よりも重要でした。終身雇用・年功序列の人事制度では、後継社長の指名は、会長や社長に一任されてきたのです。しかし、これからは、後継社長になるには、社長・CEOに求められる資質や能力、実績などを備えていなければなりません。経営トップとしてグローバルな舞台で活躍するには、新卒に入社した企業でただ社歴を重ねて順番を待つのではなく、高い専門性と幅広い経験、抜群の実績を積み重ねていくことが求めれているのです。

3.人生100年時代の個人の就業期間は、企業寿命を超過する時代に

日本人の平均寿命は、江戸時代は32歳〜44歳、明治・大正時代は44歳前後だったといわれています。高度経済成長期の1970年は70歳でしたので、先進7か国の中で最も短命な国だったのです。60歳で退職しても平均寿命まで10年程度しかありませんでした。その後、女性が1984年に80歳を超え、男性は2013年に初めて80歳を超えました。現在は女性が87.45歳、男性が81.41歳になり、女性は5年連続で世界2位、男性は3年連続で世界3位になっています。2007年に日本で生まれた子供の半数が107歳より長く生きると推計されており、日本は健康寿命でも世界一の長寿社会になりました。人生100年時代では65歳で退職しても、100歳まで35年もあるのです。

このような少子超高齢化社会のなかで、2010年に65歳以上の人口が2割程度だったのに対して、2060年には4割程度まで拡大すると予想されています。1950年には12.1人の現役世代で一人の高齢者を支えていましたが、2015年には2.3人で一人、2060年の推計では1.4人で一人の高齢者を支えることになります。現在は、50歳以下の国民は、国民年金も厚生年金も65歳から支給されますが、これからは、年金の支給年齢がさらに遅くなることが予想されています。

一方、上場企業の平均寿命を比較すると、2017年では、米ニューヨーク証券取引所の上場企業が15年、英ロンドン証券取引所の上場企業が9年だったのに対して、日本証券取引所の上場企業が89年と極端に長寿になっています。日本では上場社数は増え続けており、3600社と世界的にも多くの企業が上場しています。景気低迷が長期にわたって続いたうえ、日本では銀行の力が強いため、M&A(合併・買収)などを駆使して積極的に成長を狙うよりも、借金返済が確実になる安定型の経営を選ぶ企業が多く、突出した長寿につながっています。米ニューヨーク証券取引所の上場企業の廃止理由の約8割がM&A(合併・買収)によるもので、競争力の一段の強化を狙った大型再編や独自の強みをもつ小型企業の買収が続出しており、上場企業の平均寿命が短命化されています。

また、ダウ・ジョーンズ工業株価平均(Dow Jones Industrial Average)は米国を代表する株価指数で、米国を代表する優良銘柄を30社集めたものです。構成銘柄は時代の変化に合わせ入れ替えを行っている為に、採用銘柄に選ばれる企業の推移は、企業の栄枯盛衰を物語っています。NYダウは、1928年10月から現在の30銘柄となりました。2018年6月にGEが除外されたことで、1896年の当初から継続して採用されている銘柄はなくなりました。2019年4月には1935年から継続して採用されていたデュポンも除外となりました。2020年8月には1928年10月から継続して採用されていたエクソン・モービルも除外となり、現在、最も古くから採用されている企業は1932年から採用されているP&Gになっています。また、1999年に初めてナスダックからインテルとマイクロソフトが採用され、アップル、シスコシステムズ、ウォールグリーン・ブーツ・アライアンスの合計5社がナスダック市場から採用されています。

少子超高齢化のなかで日本の経済規模の大幅な縮小が避けて通れず、日本企業も世界的な大型再編・企業買収の波に巻き込まれていくことが予想され、欧米の上場企業のように企業の平均寿命が大幅に短命化していくものと予想されています。1983年に日経ビジネスが掲載した「企業寿命30年説」が現実のものになっているのです。企業の平均寿命が短命化していくにもかかわらず、人生100年時代のなかで個人の生涯の就業期間は50年程度まで延びていきます。戦後の日本では、生涯の就業期間よりも企業の平均寿命が長かった為に、新卒以降、定年まで勤務する終身雇用が可能でした。しかし、これからは、個人の生涯の就業期間よりも、企業の平均寿命が短い時代に突入することになり、新卒以降、定年まで勤務する終身雇用制度は、構造的に難しくなってきているのです。

グローバル化と急速な技術革新により、日本的雇用の前提は崩れ始めているのです。終身雇用制度は年功序列と並び、戦後の日本企業における特徴的な雇用制度でしたが、終身雇用時代の終焉がすぐそこまで迫っていることを象徴する出来事がありました。2019年5月に日本を代表する大企業であるトヨタ自動車の豊田章男社長が、「今の日本をみていると、雇用をずっと続けている企業へのインセンティブがあまりない」と指摘しました。また、2019年6月に経団連の中西宏明会長も「企業からみると従業員を一生雇い続ける保証書を持っているわけではない」と話し、雇用慣行の見直しを唱えました。グローバルでのコスト競争の厳しさや、国境や業種を越える競争が激しくなるなか、日本企業は日本的雇用との決別を模索せざるを得なくなってきているのです。就職した時点と同じ企業、事業が長期にわたり継続するとは考えにくい現実に直面しており、終身雇用を前提に企業運営や事業活動を考えることは限界にきているのです。

pic

世界を舞台に活躍する皆様方へのASPIREからのメッセージ

社会や企業、個人のあり方が大きく変革していくなかで、人的資産が企業の最大の資産になり、人の力が企業の生命力や競争力を左右する時代が到来しています。これからの新しい潮流のなかで世界を舞台に活躍していく為には、三つの文化、三つの業界、三つの企業を経験していく個人のダイバーシティーの構築が大切になるなかで、グローバルな転職はキャリア構築のメインストリームになっています。このような時代背景のなかで、グローバルな転職を支援する人材紹介エージェントの社会的な使命や責任は大きくなっています。キャリア構築のメインストリームになる転職を支援する人材紹介エージェントには、経済的価値以上に社会的な価値も求めれているのです。

最後に、グローバル化と技術革新の大きな変革のなかで、社会の先導者としてグローバルなエクセレントカンパニーの経営者や経営層を目指す皆様方が、真摯にキャリア構築に取り組むにあたり、ASPIREからの四つのメッセージを送らせて頂きます。

1.自分の限界を超える成功体験が自己成長を極大化する

新卒の就職活動においても、社会人の転職活動においても、人物評価をする時の代表的な質問があります。「あなたが自分の殻を破って成長したと思う経験のうち、最も困難を伴ったものについて、途中でチャレンジを諦めなかった理由も含めて教えてください。」、「これまでのなかで自分にとって最も大きい実績や経験を教えてください。」グローバル化や急速な技術革新が進展していくなかで、21世紀は格差の時代といわれています。個人に課せられた課題や目標を達成することが求められています。自分が出来る限りのことはしました、ベストを尽くしましたでは、評価されない時代になっています。自分の限界を超えて、コミットした目標を達成しなければならないのです。自分のこれまでの限界を超えて成長することが求められているなかで、成長していくためには、何が最も大切なのでしょうか。ひとつは、人間は他者との結びつきによって、学び、鍛えられ、成長していくということです。独りでできる成長には限界があり、いずれ伸び悩んでしまいます。一方、人から多くの刺激を受けることにより大きく成長することが出来ます。人生で巡り合った人々との縁が人生を形成していくのです。あの時あの出会いがなければ、全く違った道を歩んでいく人生になるのです。自分を成長させていくには、「人との出会い」と「人と共感する力」がなによりも大切なのです。仕事をするうえで、人生の師匠と出会えるかどうかが人生の岐路になります。「この人はすばらしい」という先輩や上司を探して近づき、目標にして努力していくことが成功の秘訣になります。多くの人との出会いから、のちの人生を左右する多くの邂逅(かいこう)が待っているのです。

もうひとつは、自分の限界を超えた成功体験です。人生のなかで、毎日必死に考え、試行錯誤を続けた日々の経験が成功の原動力になります。真剣な挑戦には何かが残り、真剣なチャレンジの中で得たものは人生の大きな財産になります。苦難を乗り越え、自分の限界を超えた達成感は、何にも代えがたいの喜びとなり、この成功体験がさらに自分の限界を超える挑戦への原動力になるのです。心の持ち方や求めるものがそのままその人の人生を現実に形づくっていきます。誰よりも強く熱意を持ってそう有りたいと願望すること、人生の目標となる志を持つことが何よりも大切なのです。志を実現するためには、地道な努力と覚悟が伴なければなりません。無理だと思える高い目標にもひるまず、情熱を傾け、努力研鑽や創意工夫を繰り返していくと、大きな飛躍が生まれ、精神的な豊かさや人格が磨かれていくのです。自分の限界を超えた成功体験は、人間としての基礎をつくっているのです。

人間はいつでも成長することが出来、生涯、目標を持って計画と準備を怠らず一日一日を大切に過ごしていくことが大切です。しかし、人間の器を形成を考えると、やはり20代が最も重要になります。ガラス細工では、ガラスが高熱で柔らかい液状の時には、どのような大きさでも形状でも自由に形作ることが出来ますが、固まってしまった後は、大きさや形を変えることは出来ません。人間も同様で、人間の器が形成される時期は限られているのです。人間としての器をどのような大きさのどのような形にするのか、20代に人間の基本的な骨格が形成されることを認識しなければなりません。企業が新卒や20代の採用を重視するのは、人間としての根幹を一緒に創ることが出来るからなのです。20代前半から後半にかけては、人生で最も無心に頑張れる時期であり、この大切な「瞬間」を絶対無駄にしてはいけないのです。

2.適性と関心に合致した専門性を磨く

終身雇用の人事制度では、ローテーション人事などでいくつかの部門に配属されてしまい、専門性を磨くことが難しかった為に、組織に依存せざるをえなくなり、自分の力でキャリアを構築していくことが困難でした。企業や事業の短命化が加速するなかで、新卒で入社した企業で、終身雇用制を頼って一歩ずつ昇進する世界はもうありません。これからは、好奇心を持って1つのことを追求し、あらゆる知識を実践で応用し、どんな職業でも専門性を高めてその道のプロになることが大切になります。夢の実現には計画と準備が必要であり仕事も同じで、計画と準備を怠らず一日一日を大切にしていくことが成功に繋がっていきます。

これからの人生100年時代では、生涯の就業期間を三つに分け、20歳~40歳は専門性の修得、40歳~60歳は組織で専門性を発揮、60歳~80歳は社外から専門性を提供。することが理想的な働き方のひとつになるのではないでしょうか。40歳までは、適性と関心のある専門性を出来る限り磨いて、60歳までは修得した専門性を武器に組織のなかで活躍する、さらに60歳以降はアドバイザーやコンサルタントとして、社外から高い専門性を企業に提供して貢献することが、理想的なキャリアになるのではないでしょうか。例えば、人事のプロフェショナルを目指すのであれば、40歳までは、いくつかの企業で、いくつかの異なる業界で、いくつかの異なる文化圏の国で、人事職を経験する。グローバルな見識と高い専門性を武器に人事部門の役員にキャリアアップする。その後、管理部門の役員として管理部門全体に守備範囲を広げ、さらにCOOやCEOとして企業経営全般に取り組む。役員退任後は、企業から離れ、専門性を磨いてきた人事や経営を武器に、アドバイザーとして社外からいくつかの企業や個人を指南していくようなキャリア構築になります。

キャリアの武器となる専門性を選ぶ時に大切なことは、自分の適性と関心にあった仕事を選ぶことです。人間は、自分に適性があり好きなことであれば大きな成果をあげることが可能で誰にも負けません。反対に、適性がなく好きでないことに取り組んでも、適性があり好きなひとに勝つことは難しいのです。同じ陸上競技でも100メートルの短距離とマラソンの長距離の両種目でオリンピックの金メダルを取ることは不可能です。

また、ある分野で専門性を身に着ければその専門性を武器に経営層に近づくことが出来るのです。経営層になれば、担当業務も広がっていき、企業経営の幅広い業務を経験することになり、企業経営全般に精通することが出来ます。執行役員クラスまでは専門性を武器にキャリアアップを繰り返し徐々に守備範囲を拡大しながら、COOになれば経営全般を担えるようになります。また、社員の高齢化が進むなかで、いつまでも社員でいられることには限りがあります。スポーツの世界でも選手としてチームに所属して活躍できる時期は限られていますが、引退後、チームから離れても後進の指導者などで活躍することも出来ます。ビジネスの世界でも、企業の組織から離れても、社外からいくつかの企業や個人に、磨いてきた高い専門性を提供することは可能なのです。60歳以降も、個人として働き続けられることは、人生を豊かに彩るために大切なことではないでしょうか。

3.仕事は人生のポートフォリオの一つと認識する

2014年に英オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授は、20年後までに人類の仕事の約50%が人工知能、或いは機械によって代替され消滅すると予測しました。 2020年にマッキンゼー・アンド・カンパニーは、2030年までに日本中の業務の27%が自動化され、約1660万人の雇用が機械に代替される可能性があると指摘しています。新しいテクノロジーは人間の仕事を奪うと同時に、新しい仕事を生み出し、「人余り」と「人不足」が同時に訪れる可能性がありますが、人間の能力の拡張であるテクノロジーによって、人間の仕事が代替されることは必然であり、その代替は歴史上たびたび起こってきました。

目の前の仕事に脇目も振らず全身全霊を懸けることにより、新しい世界が開けていき、仕事に一所懸命打ち込むことにより人生が輝かしいものになっていくことは確かです。しかし、技術革新により人間の仕事が代替され、少子超高齢社会を迎え経済規模が縮小するなかで、仕事をする機会そのものが日本全体で縮小するようになり、多くの人間が仕事に人生の遣り甲斐や目標のすべてを追い求めることは、現実的に難しくなってきています。

2019年版の世界幸福度ランキングでは、日本は58位でしたが、例年通り上位を占めたのは1位フィンランド、2位デンマーク、3位ノルウェー、7位スウェーデンといった北欧諸国でした。デンマークは幸福度の高い国として知られていまが、デンマークの労働時間は週37時間までと労使協約で決められており、定時内で仕事を終えることが一般的になっています。午前と午後の2回にわたり仕事中にフィーカを楽み、仕事は15時ごろまでに終えて余暇を楽しむ人が多いそうです。さらにサマーバケーションは2週間から1ヵ月間取得するなど北欧人はオンとオフをきっちり分けています。オランダではパートタイム労働でも正社員であり、正社員としての各種保障が受けられ、ワークシェアリング大国になっています。

高度経済成長の時代には、仕事は人生のすべてと考える人が多かったですが、これからは、人生は、仕事の時間、家族との時間、友人との時間、個人の時間、ボランティアの時間、公共への貢献の時間などで構成され、仕事は人生のポートフォリオの一つと考えるべきではないかと思われます。欧米の履歴書にはあって、日本の履歴書には記載欄がない事項に、ボランティア活動欄と公共機関での勤務経験欄があります。欧米では、自社に相応しい人物であるか企業の採用者が応募者を評価する時に、ボランティア活動や公共機関での勤務経験を重視しています。仕事を通じて自己成長を図る、人生の目標を達成する、専門性や見識を高めることは人生において重要なことです。しかし、これからは人生のすべてが必ずしも仕事だけではありません。仕事と共に、家族、友人、個人、ボランティアなどの時間も大切にしていくことが、人生を実り豊かなものにしていくのではないでしょうか。

4.エグゼクティブ人材の社会的な責務

フランスの経済学者、トマ・ピケティは、『21世紀の資本』で、20カ国以上におよぶ経済データを収集・分析し、世界中で拡大する経済格差の状況を明らかにしました。「r(利子や配当などとして分配される資本収益率)>g(経済成長率)」という不等式を示し、格差拡大の原因を解明し大きな話題になりました。超富裕層が増えたアメリカの反格差運動“We are the 99%”に象徴されるように、多くの人々が資本主義による極端な富の偏在がもたらす不平等に疑問を感じています。21年4月にアメリカのバイデン大統領は、「ウォール街ではなく、中間層がこの国を作ったのだ」と施政方針演説で述べ、中間層からの経済発展を模索しています。戦後の目覚ましい経済成長においては、一億総中流社会の中核を形成してきた中間層の存在が大きかったのですが、97年以降、中間層の貧困化が進んでいます。21世紀は所得格差や貧困が加速し、社会や経済が不安定になると予想されています。

一方、インターネットの世界においては、ウィナー・テイクス・オールという現象が顕著に現れています。ウィナー・テイクス・オールとは「一人勝ち」、「勝者総取り」という意味で、戦いに勝ったものがすべてを獲得し、負けた者は何も得られない状況を指します。現在は、GAFAの頭文字で知られるGoogle、Apple、Facebook、Amazonが莫大な個人データを集約し活用するディジタルプラットフォーマーとして世界を席巻しており、IT業界で支配的・独占的な影響力をもっています。勝者が人・者・金・情報を独占し、敗者は何も得ることができません。資本主義社会で生き残るならば勝者になる以外に選択肢はない状況が加速化しています。私たちは信じられないほど技術革新のスピードが速い時代を生きており、技術革新による人間の仕事機会の縮小、格差の拡大、勝者総取りの時代に向かっているのです。このような世界で、グローバルな舞台で活躍できる人間は限られています。ごく少数のリーダーに、仕事の機会と権限、富が集中していくことになります。幸運にも限られたリーダーとして活躍する機会を得た人間は、これまでのリーダー以上に、大きな責任と使命を担うことになるのです。欧米社会には「ノブレスオブリージュ」という基本的な道徳感があり、身分の高い者はそれに応じて果たさなければならない社会的責任と義務があるといわれています。明治時代の最高の思想家と称される福澤諭吉は、「気品の泉源」と「智徳の模範」を重視し、社会の先導者は、ふさわしい人格を形成しなければならないと諭しました。

企業は利益を追求するだけでなく、環境問題や人権問題への対応をはじめさまざまな社会的な責任を果たすべきとするCSR(Corporate Social Responsibility=企業の社会的責任)が重視されています。企業だけでなく、グローバルな舞台で活躍するエグゼクティブな人材も、自社の利益や事業価値の向上だけではなく、業界全体を牽引して社会的意義を高めることにも配慮しながら、日本のみならず世界の成長と発展に貢献することを目指してほしいと思います。終身雇用の時代には、ひとつ上のポジションで考え行動することが大切だといわれていました。平社員の時は課長の視点で、課長の時は部長の視点で、部長の時には役員の視点で、役員の時には社長の視点で、業務を遂行すべきだと教わりました。しかし、人的資本が最大の経営資産になった時代には、若い頃から、経営者の視点のみならず、業界全体の視点で、さらには日本のみならず世界全体の視点から、物事を考え判断して行動しながら、経済的価値のみならず、社会的価値や環境的価値の向上も目指していくことが求められているのです。

医療技術の進展などで寿命が延び、現在の20代は90歳、100歳、あるいはそれ以上の人生を過ごすことになると予測されています。その結果、70代や80代になっても自分のスタイルで働いているのが普通の時代になるのです。ジョー・バイデンは、アメリカの第46代大統領に最高齢の78歳で就任しました。バイデン大統領は就任演説で「民主主義が勝利した。米国民、米国を団結させる」と分断の修復を訴え、国際政治経済の世界的な課題に精力的に取り組んでいます。社会のダイバシティーが重視されるなかで、若い世代からシニアな世代まで、各世代のリーダーが社会の先導者としてリーダーシップを発揮していくことが健全な社会の発展のためには極めて重要です。時代を超えて、学び続けることの大切さは今も変わっていません。人生100年の時代のなかで、ひとり一人が、何歳になっても、その時々の時代の要請に対応して、社会の発展に貢献していく責任と自覚を持ち続けることが何よりも大切なのではないでしょうか。ドイツ出身のアメリカの詩人、サミュエル・ウルマンの詩を心に刻みながら、自分の可能性を信じて、新たな高い目標を目指し努力研鑽を惜しまない毎日を送ることが私たちの使命だと確信しています。
「青春とは人生の或る期間を言うのではなく心の様相を言うのだ。
年を重ねただけで人は老いない。理想を失う時に初めて老いがくる。」

アスパイア株式会社
代表取締役社長 冨永昌裕

menu