夢は成長の原動力だ。社会を変え、世界市場を席巻し、常識に挑む――。日本企業の社長の夢からは覚悟が透ける。停滞の30年で蓄えた人材や資金、技術を武器に世界で再び勝負する。かつて名経営者も夢を語った。決断と行動で社員をリードし世界を変えてきた。あなたの社長の夢は何ですか？

日本経済新聞は3月下旬までに主要企業の社長（4月就任含む）に夢を聞いた。

最も多かったのが気候変動や食料問題など社会課題の解決だ。社長の5割が夢として挙げた。

ダイキン工業の十河政則社長は「世界中の人々に快適で安心な空気を届け、気候変動の解決に貢献する」。三菱食品の京谷裕社長は「生活者に不可欠な食品のサプライチェーンを持続可能な形で維持する」。食品卸として農水産物を安定して届け続けることを掲げた。

世界一を目指す社長も多い。

サントリーホールディングスの新浪剛史社長は「貪欲に世界で戦う。缶入りアルコール飲料で世界一に挑戦する」。村田製作所の中島規巨社長も「グローバルでナンバーワンの部品メーカーとなる」。世界市場を席巻し、「最強企業」に飛躍することを夢にする。

高度成長期、企業をけん引したのも夢だった。技術も資金も欧米に及ばない。それでも経営者は夢を語り、巨人と伍していく突破口にしてきた。

松下電器産業創業者で「経営の神様」、松下幸之助氏は「水道の水のごとく物資を豊富にかつ廉価に生産提供することでこの世から貧乏を克服する」。ホンダ創業者の本田宗一郎氏は「日本だけの日本一はたちまち崩れ去る。世界一であって初めて日本一だ」。いずれもトップとしての強い決意が社員を鼓舞し、両社を世界的企業に育てた。

現社長の夢はどうか。パナソニックホールディングスの楠見雄規社長は「社会の進展のために人と技術を磨き上げ、皆様の『幸せのチカラに』なり続ける」。ホンダの三部敏宏社長は「ホンダを改めて存在が期待される企業にする」と答えた。

（日本経済新聞）