金融、コンサル、外資系の転職・求人なら人材紹介【アスパイア】

無料転職支援・
相談のお申し込み

簡単登録
(入力1分)
信頼度NO.1の人材紹介エージェント
  • pic

    Facebook CEO Mark Zuckerberg

  • pic

    Amazon in Silicon Valley, San Francisco bay area

IT&デジタル業界最新業界

IT&Digital Industry Latest Information

「スター軍団」は元グーグル オープンAIに才能集結 チャットGPTの開発けん引 2023/04/28

チャットGPTは公開から2カ月で世界の利用者が1億人を超えたとされる

米新興のオープンAIが開発した生成人工知能(AI)「ChatGPT(チャットGPT)」が世界を揺らしている。AI研究の先頭を走る米グーグルに対抗するために集められた「スター軍団」では、実はグーグル出身の研究者が中心的役割を担う。一部の人材はオープンAIからも独立し、巨大テクノロジー企業の向こうを張って新勢力を築きつつある。

「グーグルに対抗する組織をつくるため、本当に労力を費やした」。米起業家のイーロン・マスク氏は4月中旬、米メディアのインタビューでオープンAIの設立に参画した2015年当時をこう振り返った。

前年の14年にはグーグルが新興AI開発の英ディープマインドを買収していた。巨大テックが資金力を武器に高度なAIの開発を秘密裏に進めれば、新たな独占を生む恐れがある。こうした危機感が、マスク氏を「人類のためのAI」を標榜するオープンAIの設立へと駆り立てた。

マスク氏とともにオープンAIの創設に携わり、現在は最高経営責任者(CEO)を務めるサム・アルトマン氏はスタートアップ支援の米Yコンビネーターで頭角を現し、社長にまで上り詰めた。シリコンバレーにおける起業のノウハウを熟知する実務家だ。

マスク氏とアルトマン氏がオープンAIの研究開発を率いる責任者として白羽の矢を立てたのが、グーグルのAI開発部門で中枢を歩んでいたイリア・サツキバー氏だ。同氏はオープンAIの創設に参画し、18年からはチーフサイエンティストを務める。

サツキバー氏はカナダのトロント大学でAI研究の大家として知られるジェフリー・ヒントン氏に師事した。12年の画像認識コンテストで圧倒的な性能で優勝し、AIの新時代を切り開いた機械学習モデル「アレックスネット」にも携わった。AI分野における抜群の知名度で世界の企業や研究機関から発足間もないオープンAIにトップタレントをかき集める役目を担った。

オープンAIがチャットGPTで活用する基盤技術の中核は、グーグルの研究開発成果に由来する。例えばグーグルが17年に発表した「トランスフォーマー」と呼ぶ技術は、生成AIが文章の文脈などを理解する能力を飛躍的に高めた。トランスフォーマーの論文を共同執筆したルカシュ・カイザー氏は21年にオープンAIに移っている。

グーグルからの人材流出をチャンスとみて反応したのが米マイクロソフトのサティア・ナデラCEOだ。ネット検索市場でグーグルに大きく水をあけられていたマイクロソフトは早くから生成AIが起死回生の一手となる可能性に着目していたとされる。

マイクロソフトは19年にオープンAIへの10億ドル(約1300億円)の投資を決めた。23年1月には数十億ドル規模の追加投資を表明した。検索エンジン「Bing(ビング)」でオープンAIの技術を使い始め、「ワード」や「エクセル」などの業務ソフトでも生成AIの活用を狙う。

マイクロソフトのすばやい動きに焦ったのがグーグルだ。ネット検索市場での優位性が揺らぐとみるや、スンダー・ピチャイCEOら経営陣は社内に対策を号令。23年2月にはチャットGPTに対抗する対話型AI「Bard(バード)」を発表した。

進化の激しい生成AIの分野では、グーグルとオープンAIに続く「第三極」の地位を狙う動きもある。グーグルから16年にオープンAIに転じ、研究担当の副社長を務めたダリオ・アモデイ氏は21年、生成AIスタートアップの米アンソロピックを設立して独立した。

アンソロピックはすでにチャットGPTに似た「クロード」と呼ぶ対話型AIの開発にこぎ着けている。23年2月にグーグルからの出資が判明したほか、4月には米アマゾン・ドット・コムとも協業を決めた。足元の企業価値の評価額は約40億ドルと、生成AIスタートアップとしてはオープンAIの290億ドルに次ぐ位置につける。

オープンAIの発足を主導したマスク氏は独自の生成AIの開発に向けた新会社「X.AI」を立ち上げた。同社がキーパーソンとして迎え入れると報じられたイゴール・バブシュキン氏も、やはりグーグル系のディープマインド出身だ。有力企業からトップタレントが分散して新勢力を生み出す人材の流動性の高さが、テクノロジー分野における米国の競争優位性を確かなものにしている。

営利部門、19年に発足 創業理念は後退、人材流出も

米オープンAIはもともと非営利の研究法人として発足した。2015年12月に公表した設立趣意書のなかでは「株主ではなく、あらゆる人のために価値を構築する」と宣言した。開発者らは収益を生み出す義務を負わず、人類の科学的進歩への貢献に焦点を当てることができた。こうした理念が優秀な研究者をひき付けてきた。

当初は10億ドル(約1300億円)の資金を集めたものの、設立3年目ごろから追加調達の必要に迫られる。19年には米マイクロソフトの出資を受け入れるために傘下に営利部門を設立した。創設メンバーのイーロン・マスク氏は運営方針を巡る内部対立を理由にオープンAIの運営から離れたとされる。

オープンAIでは生成AIの基盤となる大規模言語モデルの詳細を非公開とするなど、発足時の約束に反する動きが目立つ。マスク氏は「マイクロソフトと提携したことで技術が閉鎖的になった」と批判する。収益重視の姿勢が強まれば、理念に共感して集まった研究者の離反を招く恐れもある。

(シリコンバレー=渡辺直樹、AI量子エディター 生川暁、伴正春)

(日本経済新聞)

menu