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「ゾンビ企業」世界で増加 昨年度16%が過剰債務、金融危機後最高 利上げで破綻懸念 2022/07/28

世界で過剰債務企業が増えている。本業の利益が借金の利払いより少ないのが特徴で、全体に占める比率は2021年度に金融危機後で最も高い16%になった。長期にわたる金融緩和のため増加傾向にあったが、直近では利上げの進む米国でこうした企業が破綻に追い込まれる事例が相次ぐ。世界的な利上げに伴う破綻増加懸念が、経済のリスク要因として意識され始めた。

本業のもうけを示すEBIT(利払い・税引き前損益)が3年連続で支払利息を下回る設立10年以上の企業を過剰債務企業と定義した。同様の定義で「ゾンビ企業」と呼ばれることもある。QUICK・ファクトセットなどのデータを基に北米・欧州・アジア太平洋の主要国の金融を除く上場企業約2万4500社を調べたところ、21年度は全体の約16%にあたる3900社が該当した。

企業全体に占める比率は08年のリーマン・ショック前の07年度と比べ約6ポイント上昇し、08年度以降で最高水準だ。リーマン危機後の世界的な金融緩和をきっかけに増加基調になった。本業の収益力が衰えても、金融機関や投資家など資金の出し手の規律が緩み、負債による調達で日々の資金の不足を補いやすくなった。

20年以降の新型コロナウイルス禍後に比率が一段と拡大した。コロナ禍での経営悪化を補うため各国の中央銀行が金融緩和を拡大し、負債依存を強める企業が増えた。

国・地域別ではカナダが32%と高く、オーストラリア(23%)、インド(20%)が続く。社数では米国(606社)や欧州連合(EU、661社)が多い。金融市場が発達し、低格付け社債の発行などで財務体質が脆弱な企業でも資金調達がしやすいためとみられる。日本は負債の積極的な活用に慎重な企業が多いこともあり、4%(155社)にとどまる。

業種別では医薬品や素材エネルギー、情報通信、食品などでゾンビ企業の比率が2割前後と高く、社数では電機やサービスも多い。米広告のクリア・チャネル・アウトドア・ホールディングスは過去10年で負債が3倍弱に膨らみ、利払い費を利益で賄えていない。穀物販売などを手掛ける中国のオリエント・グループは「ゾンビ状態」が10年以上続いている。

9割は売上高が年5億ドル(約680億円)以下の企業だ。身の丈以上の負債を抱え、業績が低迷する中で「延命」してきた現状が浮かぶ。継続比較できる企業のEBITは21年度に約1387億ドルの赤字と赤字幅はコロナ前の18年度比で5倍に拡大し、有利子負債も1.2兆ドルと3割増えた。

今年に入って各国の金融引き締めや景気減速の懸念などを背景に投資家や金融機関のリスク回避姿勢は強まり、こうした企業の調達環境は厳しくなっている。米インターコンチネンタル取引所(ICE)によると、世界の低格付け社債を組み入れて算出する指標の国債に対する上乗せ金利(スプレッド)は7月26日時点で約5.8%と昨年末から2%程度拡大した。

金融情報会社リフィニティブのデータでは22年4~6月に世界の企業が発行した低格付け社債は約293億ドルと前年同期比で86%減り、四半期として約11年ぶりの低水準。低格付け企業向けの銀行協調融資も前年同期から2割減っており、資金調達に急ブレーキがかかっている。

企業破綻も出始めた。米化粧品会社のレブロンは6月中旬、米連邦破産法11条(チャプター11)の適用を申請した。競争激化などから17年12月期以降は5年連続でEBITが支払利息を下回っており、コロナ禍の供給網混乱などが追い打ちをかけた。同様の状態だった米床材メーカーのアームストロング・フローリングもコスト高などを理由に5月に破産を申請した。

フランスの信用保険会社、アリアンツ・トレードは23年に世界の企業の倒産が21年比で26%増えると予想する。同社のアナリスト、マクシム・ルメール氏は今後の事業環境の悪化などを踏まえ、「金利上昇で持続可能性に問題が生じかねない」と警鐘を鳴らしている。

(日本経済新聞)

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