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「人への投資」5割が開示、多様性の指標は公表進む 人的資本の有報記載義務、多様性はNTTなど9割超 日経調査 2023/06/20

上場企業に義務化された人的資本の開示を巡り、5割の企業が人件費や人材育成費など「人への投資」を記すことが分かった。日本経済新聞が主要企業の開示方針を調べた。数値を使った開示は2割にとどまる。人材投資は成長を占う指標として注目される。企業が投資家や従業員の支持を得るには、人材活用戦略や体制の整備が必要となる。

調査方法 日本経済新聞社は、企業統治支援のHRガバナンス・リーダーズの協力を得て、開示指標として想定される11項目を選定。TOPIX100構成銘柄のうち、有価証券報告書を6月に提出する3月期決算企業81社に開示方針を尋ね、57社から回答を得た。
2023年1月に改正された内閣府令は、上場企業に人的資本に関する「戦略」や「指標および目標」を有価証券報告書で開示するよう求めた。法定文書での開示内容に企業は責任を負うことになる。

5割にあたる27社は人件費や人材育成費など人への投資を開示する方針だ。指標や数値を使い定量的に開示すると回答したのは14社、2割強だった。三菱電機や三菱ケミカルグループは実績値を開示する考えで、研修費用などを示す方針。

シスメックスは目標値と実績値の両方を開示すると回答した。連結ベースで算出した人件費などを示す考え。人的資本を重点項目に掲げ、これまで世界共通の人材管理システムの導入に取り組んできた。「積極的な開示を進める」(同社)という。

政府が22年夏に示した指針には「育成」「多様性」「労働慣行」など7分野19項目の開示事項の例が挙げられた。実際に公表する指標や形式は企業に裁量を委ねられている。人的資本は環境分野と異なり、開示ルールなども発展途上の段階だ。企業側は測定する指標を主体的に選び、実態を把握する体制も整備しなければならない。

人への投資で数値を用いた開示が限られたのは、開示までの準備期間が短かったためだ。指針から1年足らずの義務化で「グループとしての意思統一が難しい」(金融大手)のが実態だ。国内外に人事制度の異なる子会社を持つ企業も多い。「システムやリポートラインの体制整備が追い付かない」(流通大手)との声もあがる。

日本企業の取り組みが先行してきた分野の指標は開示が充実しそうだ。大和ハウス工業やJR東日本は採用や離職などの人材確保について、三井不動産は人材育成についても実績や目標値を示す考え。

数値を用いた開示では、性別など従業員の多様性に関する指標が最も多い。NTTなど9割超の企業が開示すると回答した。多様性に関する指標は、女性活躍推進法などでも開示が求められ、体制整備も比較的早く進んできた。富士通では08年に推進部署を置き、社内向けフォーラムなどを定期的に開いている。

人的資本を巡っては欧州は14年に、米国では米証券取引委員会(SEC)が20年に開示を義務付けた。投資家からも「人材戦略が企業価値に及ぼす影響は大きく、企業との対話における優先度も高い」(三井住友DSアセットマネジメントの坂口淳一責任投資オフィサー)と注目される。

企業統治支援、HRガバナンス・リーダーズの内ケ崎茂最高経営責任者(CEO)は「長期的な雇用を前提に人事制度や階層別研修などの人材開発に力を入れてきた日本企業が世界に訴えられる領域だ」として、事業投資との統合的な開示や投資家との対話がより重要になると指摘する。

 

海外勢は独自指標、独SAP 人件費に対する粗利

人的資本への投資は政府の指針で「競争優位を形成する中核要素であり、成長や企業価値向上に直結する戦略投資」とされた。一概に人的投資といっても要素は幅広く、業種や事業によって重視すべき内容は異なる。海外では独自の指標を準備して開示に取り組む例もある。

米欧では男女や人種などの多様性を重視する向きが強い。2022年の米S&P100企業では、多様性に関する開示が96社と最多だった。米ネットワーク機器のシスコシステムズは職種や階層別に性別、民族の多様性を開示している。

義務化で先行してきた欧州企業では、事業戦略と合わせた開示も進む。独化学大手BASFは「従業員の信頼と能力開花」を事業成功のカギと位置づける。従業員の経営陣に対する評価などの調査や、学習サービスの利用度などを開示する。

独ソフトウエア大手SAPは従業員1人あたりの収益や、人件費がどれだけの粗利益を生んだかという投資利益率を算出している。
日本でも長期的な人材戦略を定め、開示につなげる動きは始まっている。丸井グループは教育、研修費や新規事業関連の人件費などを「人的資本投資」として定義し、有価証券報告書で開示している。

育成では自社に必要な人材像を定めて開示する企業もある。双日では、デジタル人材や外国人材などについて長期目標と実績値を公表。豊田合成は、海外経験者や幹部研修の受講者、デジタルトランスフォーメーション(DX)人材などの目標と実績値を示している。

人手不足で有能な人材の獲得競争は激しくなるばかりだ。人的資本への投資の透明性を高め、成長に向けた人材の育成や起用の考え方を開示することは有能な人材の確保にもつながる。(江口良輔)

(日本経済新聞)

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