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「人的資本」の情報開示へ 政府指針 2022/05/14

政府は今夏にも企業に対し、従業員の育成状況や多様性の確保といった人材への投資にかかわる19項目の経営情報を開示するよう求める。企業が従業員について価値を生み出す「人的資本」と捉えて適切に投資しているかを投資家が判断できるようにする。うち一部は2023年度にも有価証券報告書に記載することを義務付ける。開示を通じて人材への投資を促すことで無形資産を積み上げ、日本企業の成長力を高める。

従業員を投資の対象である人的資本と位置づける考え方は企業経営で広がっている。製造ラインでの作業などが多かった時代は、人件費をコストと捉える傾向があった。

今は経済のデジタル化が進み、従業員が生むアイデアが企業に利益をもたらす。企業が人材にどう投資しているかは、財務諸表の数値だけでは読み取れず開示機運が高まっている。政府の要請を受け、統合報告書などに人的資本に関わる記述を盛り込む企業が増えると見込まれる。

内閣官房は今夏にも、人的資本への投資を企業がどのように開示すべきかの指針を作る。6月中にまとめる骨子案では、投資家に伝えるべき情報を19項目に分けて整理する。主な項目は従業員のスキル向上などの人材育成や多様な背景を持つ人材の採用状況などだ。

企業には自社の戦略に沿う項目を選び、具体的な数値目標や事例を公表するよう求める。例えば多様性を示す従業員の男女比や人種、女性役員の比率などは、企業ごとの差を測れるように具体的な算出基準の開示を促す。企業によって異なる従業員の研修方法などは、できるだけ具体的な事例を記載してもらう。

金融庁は23年度にも人的資本に関する一部の情報を有価証券報告書に記載することを義務付ける方針で、育児休業の取得率、男女間の賃金差、女性管理職の比率が候補となっている。内閣官房は金融庁の方針とは別に、人的資本にかかわる幅広い情報を公表することを企業に求める。

欧米は人的資本の情報開示が進んでいる。米国では米証券取引委員会(SEC)が20年8月、企業に対して人的資本にかかわる情報開示を義務づけた。企業がそれぞれ重視する指標や、その目標値の開示を求めている。欧州連合(EU)は14年、従業員500人以上の企業を対象に開示を義務化している。

日用品の米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は21年のアニュアルリポートから開示を始めた。消費財を扱う企業は多様な顧客のニーズに応えることが重要としたうえで、米国の経営層で40%を多様な文化的背景を持つ人材にするという目標を記載した。

現状では投資家の要求水準を満たす日本企業は少ない。一橋大の伊藤邦雄氏や三井住友信託銀行の調査によると、経営層や中核人材の多様性をどう確保するかについて、67%の投資家が開示を求めている。実際にはプライム市場に上場する企業で19%、スタンダード市場では5%の企業しか公表していない。

人的資本への投資の遅れは、日本企業が競争力を失う一因となっている。知的資産の評価を手掛ける米オーシャン・トモによると、20年の主要企業の時価総額から有形資産の評価額を引いた額を無形資産の価値と考えると、米国はこの比率が90%を占め、日本は32%にすぎなかった。米企業は人材への投資で無形資産を積み上げ、株価を上げている。

岸田文雄首相は21年12月の所信表明演説で「人材投資の見える化を図るため、非財務情報開示を推進する」と述べた。形式的な開示内容にとどまれば市場の評価は高まらず、投資家に分かりやすく伝える努力が求められる。

(日本経済新聞)

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