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「大いなる安定」は終わった。株・債券28年ぶり同時安 投資戦略に転換迫る 2022/12/23

歴史的な急変動に見舞われた2022年の市場を振り返る。初回は物価が安定する「グレートモデレーション(大いなる安定)」の終わり。各国の急速な金融引き締めを受け、暗号資産(仮想通貨)など高リスク資産が急落。ヘッジファンドには受難の年となった。株式と債券は28年ぶりの同時安となり、長期投資家も大きな痛みを被った。低金利が前提の従来の投資戦略が通用しなくなっている。

「投資家のお金を失い、本当に申し訳なく思っている」。仮想通貨ヘッジファンドのイキガイ・アセット・マネジメントの創業者、トラビス・クリング氏は11月、顧客に謝罪した。交換所大手FTXトレーディングが破綻し、預けていた資産が引き出せなくなったためだ。

22年、ウクライナ侵攻後に高進したインフレを抑えるため、各国の中央銀行が急速な利上げを進めた。新型コロナウイルス禍を受けた金融緩和に沸いたマネーが逆回転し、高リスク資産から流出した。代表的な仮想通貨「ビットコイン」の足元の価格は1万6800ドル台と年初から6割安となっている。

仮想通貨は取引の透明性が低く、価値の裏付けに乏しいとの指摘は以前からあった。ウォール街出身者は高いリターンを求めて仮想通貨市場に集まったが、著名投資家スティーブ・コーエン氏の会社で腕を磨いたクリング氏でさえも一敗地にまみれた。過度なリスクを取ったファンドは運用縮小や撤退を迫られている。

株式と債券で運用する機関投資家にとっても厳しい1年だった。世界の株の値動きを示すMSCI世界株指数は16日時点で昨年末比18%安、国債でもFTSE世界国債インデックスは12%安となった。両指数が同時にマイナス圏に沈むのは1994年以来。安定資産の債券はリスク回避時に買われやすい。だがインフレが高進した今年は金利が上昇(債券価格が下落)し、運用成績を下押しした。

英調査会社プレキンによると、例えばアジア太平洋地域の株式ヘッジファンドで、利益を上げたのは14%にとどまった。4分の1近くが少なくとも40%の損失を出している。伝統的な「株式6割・債券4割」で運用する年金基金も大きな損失を被った可能性がある。

ビットコインから国債まであらゆる資産が下落する異常事態だ。投資業界歴53年の著名投資家で、オークツリー・キャピタル創業者のハワード・マークス氏は13日付の顧客向けメモに「3度目の潮目の変化が進行中かもしれない」とつづった。

1度目が1970年代の信用力の低い企業向け社債(ジャンク債)の誕生。2度目が80年代で米連邦準備理事会(FRB)のボルカー議長(当時)によるインフレ抑制の成功だ。長期間にわたり世界経済の緩やかな成長と物価の低位安定は、株と債券の変動を抑えた。いわゆる「大いなる安定」のおかげで、投資家はレバレッジ(借り入れによるテコ)を活用し、株式などリスク資産にマネーを振り向けやすくなった。投資家のリスク選好が米株など幅広い資産の強気相場を支えた。

「債券版恐怖指数」の異名を持つMOVE指数をみると分かりやすい。米国債の先行き変動リスクを示す指数で、数値が低いほど先行き懸念は後退している。08年のリーマン・ショックや20年の新型コロナといった危機に直面しても、長期低下傾向は変わらなかった。インフレ懸念が小さく、中央銀行は大規模な緩和で経済を下支えすることができたからだ。

22年に入り局面が変わった。中銀は景気後退の回避よりインフレ退治を優先する方針を示唆し、市場で浮上する将来の利下げ期待をけん制する。金融政策の先行き不透明感からMOVE指数も急騰した。「大いなる安定」は崩れ、過去40年間の大半、もしくは金融危機以降の13年間で成功していた投資戦略が通用しなくなる可能性がある。マークス氏が「大転換」と主張するゆえんだ。

激動の22年相場で存在感を示した投資家がいる。米投資会社バークシャー・ハザウェイを率いるウォーレン・バフェット氏だ。バークシャー株は昨年末比でプラス圏に浮上しており、3割安に沈むナスダック総合株価指数と対照的だ。

アップルやコカ・コーラ、アメリカン・エキスプレス――。優良企業を厳選し、長期目線で投資する姿勢は今も昔も変わらない。インフレの怖さを知る92歳の著名投資家は、相場が転換点を迎えるずっと前から、安定したキャッシュフローとインフレ耐性を重視してきた。小さな危機が頻発した今年、バフェット氏の目利き力と投資姿勢が改めて評価され、株価の底堅さにつながった。

大転換後のニューノーマル(新常態)はまだ分からない。みずほ証券の浜本吉郎社長は23年の金融市場について「08年のような急性のショック型危機が再来する可能性は低いが、ミニクランチ(小さな危機)が慢性的に続くかもしれない」と話す。投資家は22年に続き、対応に苦慮するだろう。混迷の時代だからこそ、ぶれないバフェット流に学ぶべき点は多い。

(日本経済新聞)

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