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「大倒産時代」どう生きる ゾンビ回避へ再生力問う 2022/09/12

世界的な金融引き締めの局面を迎え、「大倒産時代」の足音が聞こえてきた。逆風をどうくぐり抜けるかが国力を左右する。

米株式市場を舞台に、今の世界経済の象徴というべき現象が起きている。生活雑貨の販売を手掛けるベッド・バス・アンド・ビヨンドの株価乱高下だ。

個人投資家が手掛ける「ミーム(はやり)株」。販売不振で7月まで5ドル前後で低迷していたが、8月には商いを伴って一時30ドルまで急騰した。その後、大株主による株売却や資金繰りの悪化、さらに債務の再編交渉に強い法律事務所との契約が報じられて急落した。今月は、最高財務責任者(CFO)も自殺で失った。

この一件には、過去と未来の潮流が交差している。一つは長年のカネ余りがもたらしたマネーゲーム。もう一つは、今後増えるだろう企業の経営悪化だ。

「デフォルト率」が反転
米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが物騒な予測をしている。格付けが投機的等級の世界の社債のうち、デフォルト(債務不履行)に陥る割合を示す「デフォルト率」は2021年に1.7%と、08年のリーマン危機後の最低を更新した。コロナ禍に対応した各国の財政・金融面の刺激策の恩恵だ。

ところが今年はウクライナ危機、「ゼロ・コロナ政策」による中国経済の不振に、世界的な金融引き締めが重なって反転する。来年も上昇が続き、最も悲観的なシナリオだと14.5%と、大恐慌のさなかだった1933年の15.8%以来の高水準に跳ね上がる。

倒産が増えるのは、景気が悪化する局面に共通の現象だ。しかし今回は、米欧で約40年ぶりのインフレを封じ込めるための引き締めも企業に襲いかかり、資金繰りを苦しめる。景気が悪化する際、中央銀行は金融政策を緩和方向に動かしてきたが、米連邦準備理事会(FRB)も欧州中央銀行(ECB)も、今は「景気への配慮よりインフレ退治」の姿勢が鮮明だ。

大倒産時代といえば真っ暗に聞こえるが、そうとは言い切れない。企業の新陳代謝を後押しし、経済を強くしてきたからだ。

少なくとも米国はそうだ。2000年のIT(情報技術)株バブル崩壊は、01年の世界のデフォルト率を9.3%に押し上げた。「ドットコム」と名がつくだけの企業も、ITを駆使したエネルギー取引で鳴らしたが、粉飾に手を染めたエンロンも退場した。だがアマゾン・ドット・コムは同年黒字に転じ、今に続く成長を始めている。

デフォルト率の次のピークはリーマン危機翌09年の12.1%。経営危機が続いた米企業の顔、ゼネラル・モーターズ(GM)も破綻したが、米政府傘下で債務や資産の削減を断行し、新興国に強い企業として10年に株を再上場した。著名投資家ウォーレン・バフェット氏が株を買い増しているアライ・ファイナンシャルの前身は、かつての金融子会社GMACだ。

海外企業入手のチャンス
そして今。コロナ危機で破綻したレンタカー大手のハーツ・グローバル・ホールディングスは、テスラからの電気自動車の大量購入が昨年話題になった通り、投資家傘下で姿を変え再上場した。

米国は、倒産の逆風を構造変化につなげてきた。破綻企業でも割安なら遠慮無く投資するリスクマネー、企業再生を専門とする投資銀行家や法律家、雇用を成長分野に移す柔軟な労働市場が変化を支えた。何より、人や企業の再挑戦を受け入れる土壌がある。

このような再生力こそが、日本には足りない。米コンサルティング会社アリックスパートナーズが5月、投資銀行家ら世界の企業専門家に聞いたところ、「財務懸念のある企業への買収が増える」という回答が76%に達した。経営の逆境が企業再編という進化につながる認識を表している。

ところが同社の野田努・日本代表は「日本で同じ調査をしても、こんな高い数字にはならない」とみる。「変わらなければ」という危機感を日本企業に感じないからだ。資金に余裕のある日本企業にとっては、海外企業を格安で手に入れるチャンスなのにだ。

「時は敵なり」という警告
日本企業はすでに、再生待ったなしの状況にある。開業・廃業率で見る新陳代謝は米国の半分以下。収益力を高めるために再編で上場企業の数を減らした米国に対し、日本は増えた。稼げればいいが、利益率は米国を大きく下回る。

そして株の時価総額が帳簿上の企業価値を下回り、「このままだと企業価値が減っていく」と市場が警告するPBR(株価純資産倍率)1倍割れの企業は、上場銘柄の47%に及ぶ。存在しているだけで稼がない「ゾンビ化」の兆しが漂ったままだと、倒産時代を克服して一皮むける米国との差はもっと開くに違いない。

岸田文雄首相が今月、ニューヨーク証券取引所で講演するなら刺さる一言がある。「日本企業は果敢な失敗を許容する」。失敗したら飛ばされる風土からは、リスクを取って会社を変えるアニマル・スピリッツは生まれない。日本通の米国人ほど、日本企業に潜むそんな危うさを知っている。「失敗あっての成功」は、岸田氏が押すスタートアップの常識でもある。

もちろん、最後は経営者自身が決断して巻き返さないと投資家は選んでくれない。「タイム・イズ・エネミー(時は敵なり)」。企業再生の世界では、問題を先送りしている間に戦略の選択肢を失って惨めな末路を迎える事態を、こんな警告で戒めている。

(日本経済新聞)

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