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「失われた33年」でいいのか 世界で伸び悩む日本株 2022/01/03

1989年末に日経平均株価が3万8915円の史上最高値をつけて今年で33年。「失われた33年」でいいのか。

世界の主要株で構成するMSCI全世界株指数はこの間5倍以上になった。米欧でも、インドや韓国でも……。昨年は世界で株価の最高値が続出した。ところが日経平均は89年末の8割以下。当時がバブルだったことを差し引いても、ここまで長い間高値を抜けないのは異例だ。

日本株の「埋没」は、世界経済における日本の存在感が薄くなったという警告だ。

QUICK・ファクトセットによると、日本の国内総生産(GDP)が世界に占める比率は94年の約18%をピークに低下を続け、2018年以降は6%を下回る。株式時価総額の世界上位500社中、89年は203社を日本企業が占めていたが、昨年11月では31社しか残っていない。

放置すれば地盤沈下はもっと進む。イノベーションを生む研究開発投資で見劣りするからだ。文部科学省によると、00年から19年までの研究開発費の伸びは、米国やドイツが70%、韓国は4.5倍、中国は12.9倍に及ぶが、日本は30%にとどまる。金額でも中国に抜かれ、ドイツや韓国に差を詰められている。

なぜ後退に歯止めがかからないのか。世界の市場関係者と議論した結果、日本人から危機感を奪っている「2つの錯覚」が浮かんだ。

ひとつは「1人あたりGDPが増えている」というものだ。人口の減少が目立った直近の10年では14%も増えている。人口が減り続ければ値は今後も増え、「まだ豊かだ」と感じる人もいるだろう。

もうひとつは「日本企業は成長している」だ。上場企業は21年4~9月期決算で過去最高益を更新、新型コロナウイルスの逆風をはねのけた。

だが、この2つを「外の視点」で見直すと解釈は逆転する。豊かさの面で、日本は他の先進国と異なり所得の横ばいが続く。円安と物価上昇で、円建ての米国の物価は1年で1割以上高くなった。今年久々に海外旅行する人は、出費の痛みに驚くだろう。

企業についても、外国人投資家に言わせると「世界はもっと稼いでいる」だ。21年の推定増益率(利払い・税引き前ベース)は28%と米国(47%)、欧州(54%)に見劣りする。売上高に対する利益率や自己資本利益率(ROE)はアジアと比べても低く、投資家に選んでもらえない。

株価はこの構図を裏付ける。ソニーグループ、日立製作所、オリンパスの3社は今や日本を代表する優良銘柄で、時価総額もコロナ前の19年末から増えた。だがそれぞれのライバルである韓国のサムスン電子、独シーメンス、手術支援ロボット「ダビンチ」の米インテュイティブサージカルとの差は開いている。

心地よさに安住していると矛盾のマグマは蓄積し、追い込まれる形で代償を迫られる。市場関係者の間では、日本人が危うさに気付くきっかけとして想定を超えるインフレがささやかれている。

各国より成長力が弱い日本は金融引き締めが難しく、円に先安観もある。円安が続けばエネルギーなどの輸入価格の上昇が生活を苦しめる。日銀が物価を抑えようと金融緩和にブレーキをかければ長期金利は上昇する。景気は冷え、政府の利払い負担が膨らんで財政は悪化する――。

こんな逆境を防ぐのは企業の成長だ。先に紹介した日本の3社は、企業が失われた33年を終える処方箋も持っている。ウミを出し、存在意義を問い直し、株式市場と向き合って再生した経験だ。

ソニーも日立も、08年のリーマン危機以降に経営を揺るがす巨額損失を出した。オリンパスは粉飾決算も明るみに出た。投資家の批判に耳を傾けて本業を絞り、歴史ある事業でも売却に踏み切ってよみがえった経緯は一致する。

昨年露呈したのは、このような企業だけではないという現実だ。東芝はリーマン危機後の損失を隠し続けた結果、経営の再建が遅れて迷走が続いた。三菱電機は80年代から品質不正が続いていた。みずほフィナンシャルグループも、18年のシステム障害を公表していなかった。

企業が改革して価値を高めれば、日本株は米GAFAのように世界からマネーを引き付け、インフレを招くだけの円安も起きない。家計も2000兆円に及ぶ金融資産を日本株に移し、株高で本当に豊かになる。資本主義の新たなかたちが見える頃には、失われた時代も終わっている。

東京、ニューヨーク、ソウル、香港を拠点に市場を通して世界を見てきた。アジア通貨危機、日本の金融危機、リーマン危機も取材。編集委員、論説委員、英文コラムニストを経て2017年2月から現職。市場に映る全てを追う。

(日本経済新聞)

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