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「影の銀行」融資資産120兆円 高利回り求め資金流入 中小に需要、リスクは蓄積 2022/01/18

世界の機関投資家が企業に直接融資する「プライベートデット(PD)」が拡大している。既存の金融規制から外れ「影の銀行(シャドーバンク)」と呼ばれ、貸し付けの基となるファンドなどの資産規模は過去4年間で2倍の1.1兆ドル(約120兆円)に増えた。低金利下で年金基金など機関投資家のマネーが高利回り商品に向かっているためだが、融資先の信用は低く、景気後退時のリスクが蓄積している。

調査会社プレキンによると、世界のPDの運用資産総額は米国を中心に2021年3月に1.1兆ドル。特に新型コロナウイルス前の19年から3割も拡大している。21年9月のファンド数も年初から3割増の691に増えた。

金融緩和で世界中で低金利の環境が続く中、米欧の年金基金や生命保険といった機関投資家が高利回りを求めているためだ。主にPDの対象となる中小企業は売上高が5千万~5億ドル程度とされる。規模や財務基盤の脆弱さから社債を発行できず信用格付けも取得できない。融資のリスクが高いため、PDの年間利回りは6~10%程度と世界の社債指標の利回りである約2%と比べ大きい。

株式や債券ではない代替(オルタナティブ)投資の分野では、プライベートエクイティ(PE、未公開企業向けの出資)と不動産に次ぐ資産規模となっている。

情報会社PEIによると、21年時点で世界の機関投資家のPD投資額の首位は米TIAA(全米教職員年金保険組合)で約900億ドルを投じている。米生命保険大手のメットライフが約720億ドルで2位。著名な投資家が上位に並ぶ。

3位のカナダのマニュライフ・インベストメント・マネジメントは運用するPDファンドで21年4月、カリフォルニア州を中心にピザのフランチャイズチェーン(FC)店展開を手がける米企業に3610万ドルを直接融資した。同社は国内の機関投資家向けにも21年にPDファンドを立ち上げた。

中小企業側の需要も大きい。リーマン・ショック以降、米国の金融規制改革法(ドッド・フランク法)など、リスクの高い取引に対する金融機関の規制が強まり、銀行の中小企業向け融資が減っている。

金融情報会社のレバレッジド・コメンタリー&データによると、貸出時に標準金利に一定以上の上乗せ金利が必要な高リスク企業向けの融資は、00年時点で銀行が5割弱を占めていた。こうした企業の大半は中小企業とされるが、21年には9割弱が運用会社や保険会社など機関投資家によるPDに変わり、銀行は1割強に減っている。

PDの運用を手がける米運用会社アダムズ・ストリート・パートナーズのジェフ・ディール・マネージング・パートナーは「企業買収などで資金需要が高まる一方、高リスクの中小企業への貸し手は限られている。すでに割高感のあるPEと比べて投資妙味がある」と話す。

ただ、融資側のリスクは大きい。企業は信用格付けを取得できず、融資側はデフォルト(債務不履行)の可能性などを見極めにくい。相対での貸し付けで、5年前後の貸付期間は債権を他の機関投資家に売れず、流動性リスクを抱える。

米法律事務所プロスカウアーの指標によると、PDのデフォルト率は20年3月末の5.9%から6月末に8.1%まで急騰した。米国をはじめ、各国政府の新型コロナの経済対策でその後のデフォルトは21年7~9月には1.5%に抑えられてきたが、経済支援が縮小すれば再び増加する可能性がある。

PDへの傾斜はマーケットを揺るがすきっかけにもなりうる。08年のリーマン・ショックのきっかけは、低所得で信用力の低い借り手向けの住宅ローン(サブプライムローン)の債務不履行により、それを裏付けにした証券化商品を持つ金融機関が運用損を招いたことだった。当時は企業破綻にともなってPDの運用損は出たが、規模は小さく影響は限られた。

ただ、08年と比べPDの規模はいまやほぼ5倍だ。世界の機関投資家の多くが、高リスクで開示が限定的なPDを保有するなど、構図はサブプライムローンに似ているとの指摘もある。リスクは確実に高まっている。

(日本経済新聞)

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