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「50年以上同じ監査法人」上場企業1割 なれ合い懸念 平均22年 2022/03/13

上場企業の決算関係の書類が正しく作成されているかを確認する会計監査で、同じ監査法人に50年以上業務を依頼している企業が全体の1割あることが分かった。監査期間が長いと事業を詳細に把握できる一方、企業とのなれ合いにつながるとの懸念もある。企業統治の強化に向け、契約期間の長期化を理由に監査法人を変更する企業も出始めた。

QUICKのデータをもとに日本経済新聞が集計した。対象は2021年3月期~21年8月期決算の約2800社。

50年以上同じ監査法人に依頼している企業は11%にあたる295社あった。最長とみられるのは公認会計士による上場企業の監査制度が始まった1951年以来の約70年間だ。信越化学工業やENEOSホールディングス(HD)、川崎汽船など9社あった。監査期間の平均は22年だった。

監査法人は財務諸表の内容が適切かを確認し、問題がなければ適正意見の「お墨付き」を与える。異変などにいち早く気づくためには事業や業界への理解が欠かせない。

例えば、海運大手は海外子会社が多く、業界の特性を把握して監査する必要がある。同じ監査法人が長年担当することで「業界やビジネスの構造などに習熟し、品質の高い監査が期待できる」(川崎汽船)利点がある。

ただ、監査期間が長期化することには懸念も根強い。企業と監査法人がなれ合い、監査で最も大切な監査法人の「独立性」が保ちにくくなるとの懸念だ。

監査が正しく実施されなければ、上場企業や株式市場の信頼が失墜し、会計不正が原因で01年に経営破綻した米エンロンのように資本主義の根幹をも揺るがす事態になりかねない。

欧州連合(EU)や英国では継続して監査できる期間を原則10年とする制度を設けている。「ファームローテーション」と呼ばれ、契約期間に上限を設けることで企業と監査法人の癒着やなれ合いを防ぐ狙いだ。

日本でも20年3月期の有価証券報告書から監査期間の開示が義務付けられ、投資家などから状況は見えやすくなった。ファームローテーションは15年に発覚した東芝の会計不正問題後に導入すべきか議論になったが、監査コストの増加懸念などで義務化は見送られた。

ニッセイアセットマネジメントの井口譲二氏は「監査の期間が長いほど独立性は低くなりやすい。監査人をどのように評価・選任したか詳しい開示が必要だ」と語る。

同じ監査法人が約60年間のソニーグループは「監査委員会が監査人からの報告と関係部署の意見の両方を踏まえて評価し監査人を選んでいる」と説明。長期化でも問題はないとする。

一方、長期化で監査人を変更する企業もある。

46年間同じ監査法人だった芦森工業が21年に、同70年近い味の素が20年に監査法人を変えた。味の素は「長期にわたっていたことに問題意識を持っていた。新たな視点での監査がガバナンスに寄与する」と説明する。

日本公認会計士協会によると、20年3月期に会計不正を公表した企業は46社あった。調査で遡れる14年3月期より4割多い。21年3月期は25社に減ったが、新型コロナウイルス禍で監査人の海外子会社への訪問などが減り、不正が見つけにくくなったとの指摘もある。

会計不正が後を絶たないなか、監査の独立性をどう保つのか。企業にも監査法人にも明確な説明が求められている。

(企業財務エディター 森国司)

(日本経済新聞)

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