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アリババ、時価総額が半減 アント上場延期から1年 ネット通販、稼ぐ力衰え 2021/11/30

インフルエンサーの雪梨さんは脱税で11億円超の追徴課税と罰金の支払いを命じられた(SNSから)

【上海=松田直樹】中国のインターネット通販最大手、アリババ集団が築き上げた高収益のビジネスモデルが崩れつつある。2020年11月に傘下の金融会社アント・グループの大型上場が当局の圧力で延期になって以降、本業は勢いを失い、この1年間で時価総額の半分が吹き飛んだ。政府はアリババを筆頭にネット大手に対する統制の手を緩める気配はない。王者が事業構造の再構築を迫られている。

「新規事業の黒字化はいつ?」「収益低迷の原因はマクロ環境か?」――。18日に開いた21年7~9月期の決算会見で、張勇・会長兼最高経営責任者(CEO)ら幹部にアナリストは厳しい質問をぶつけ続けた。歯切れの良い回答は聞かれず、現在のアリババの低迷ぶりを映す会見となった。

売上高伸び最低
そして最も驚かせたのが武衛・最高財務責任者(CFO)の発言だった。「下半期の売上高の伸び率は11~16%まで落ち込む」。21年3月期は41%増加しており、失速が鮮明だ。22年3月期は20~23%増にとどまる見通しで、通期の伸び率としては過去最低となる。アリババが業績予想を開示するのは珍しい。武CFOの発言は、市場の動揺を早めに抑え込もうとする焦りにも見えた。

わずか1年前と状況は様変わりした。アントの大型上場を翌月に控え、さらに新型コロナウイルス禍による巣ごもり需要の広がりなどでネット通販も勢いを増し、アリババに対する市場の期待は最高潮に達していた。

香港取引所に上場するアリババの時価総額は20年10月末、ピークの約6兆6000億香港ドル(約95兆円)まで膨らんだが、足元は約2兆8000億香港ドルと、5割以上減った。上場中止に追い込まれたアントの企業価値は「1年前の3000億ドル超(約34兆円)から2000億ドル弱まで下がった」との試算もある。

11日に終了した中国で年間最大のネット通販セール「独身の日」で、アリババは取扱高が過去最高となる5403億元に達したとアピールしたものの、実際は20年よりセール期間を大幅に延ばして実現した数字だ。足元の稼ぐ力は明らかに衰えており、ネット通販を中核とするコマース事業の21年7~9月期の営業利益は17%減少した。

王者ゆえ、政府のネット統制の矛先がアリババに向かう中、間隙を突くように競合は勢いづく。

2位の京東集団(JDドットコム)は21年7~9月期、ネット通販を含むリテール事業の営業利益が18%増えた。当局は4月、京東などライバルと取引しないよう出店者に圧力をかけるアリババの行為が独占禁止法違反にあたると認定。いわば「敵失」で得たチャンスを京東は確実にものにし、取引先のメーカーを増やすことに成功した。

決算発表翌日の株価は市場の受け止めそのものだった。19日の香港株式市場で、アリババ株は10%強下落する一方、京東株は9%強も上昇した。

ネット通販以外でもライバルの攻勢を受ける。騰訊控股(テンセント)と二分するスマートフォン決済では、今年に入りネット3位の多多(ピンドゥオドゥオ)や「TikTok」を運営する北京字節跳動科技(バイトダンス)が相次ぎ参入を決めた。稼ぎ頭の一つに暗雲が垂れ込める。

今年の独身の日でもインフルエンサーの存在は大きな話題となり、紹介した商品はいずれも飛ぶように売れた。ここにも政府のメスが入った。

「金の卵」摘発
アリババのライブコマースで活躍する有名女性インフルエンサー2人が22日、当局から脱税で摘発された。2人で約2500万人ものフォロワーを抱え、追徴課税と罰金額は合計で16億円を超える悪質な事案とされた。

摘発された1人で「雪梨」の名前で活躍する朱宸慧さんは、アリババのライブコマースを通じて20年には40億元弱を売り上げていた。朱さんは脱税を認める謝罪声明を出し、ライブコマースの活動も一時停止すると公表した。消費者の人気に左右されるインフルエンサーにとって、こうした不祥事は致命的となる。

アリババにとってインフルエンサーは大きな利益を生み出す「金の卵」だ。アリババのライブコマースを主戦場とする業界トップの李佳琦さんと薇さんは、今年の独身の日の前半期間の予約分だけで取扱高は合計3000億円を超えた。

業界では長年インフルエンサーの「あしき習慣」が問題視されていた。インフルエンサーがメーカーと契約する際、税金を免れるために領収書の発行を拒むケースが少なくなかったという。「当局もこうした習慣は当然把握している。今後も脱税による摘発が続く可能性がある」(関係者)。事実であればアリババにはさらなる打撃となる。

このほか、今夏にはアリババの社内で、上司に乱暴されたと女性社員が訴える事件も発生している。詳細な事実は明らかになっていないが、こうした騒動が外部に伝わること自体、企業統治(コンプライアンス)に課題があることも露呈した。

「共同富裕(共に豊かになる)」を掲げている習近平(シー・ジンピン)指導部が今後、アリババに対する統制を一段と強めることも否定できない。「もうけ過ぎ」との批判の声はなお根強い。

アリババはネット分野の圧倒的なシェアを支えに高収益のビジネスモデルを築き上げてきた。低空飛行がより鮮明になれば、トップの張会長ら幹部の責任問題に発展する可能性もある。

(日本経済新聞)

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