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インド、人口世界一へ 「途上国の代弁者」を自任 米欧日と戦略ズレ 2023/01/24

分断が深まる世界でインドが存在感を高めている。2023年の20カ国・地域(G20)議長国として発展途上国の代弁者を自任する。国連推計で14億人を超えた人口は23年、資料が残る1950年代以降で初めて中国を抜き、世界最多となる見通しだ。インドの台頭は何を意味するのか。

「あなた方の声はインドの声だ」。12~13日にオンラインで主催し約120カ国・地域が参加した「グローバルサウスの声サミット」で同国のモディ首相が語りかけた。

地政学上の緊張やインフレ、地球温暖化など、世界の問題の多くは先進国発なのに、影響を被るのは自分たち、という不満が途上国にはある。現代版「南北問題」に、インドは多数派である途上国の代表として臨む姿勢を鮮明にした。

■米中に次ぐ経済大国に
経済面での裏付けがある。アジア開発銀行(ADB)はインドの2023年の実質成長率を7.2%と、域内46カ国・地域で最高になると予測する。国際通貨基金(IMF)によれば22年の国内総生産(GDP)は旧宗主国の英国を上回り、世界5位に浮上。25年にドイツ、27年には日本を抜き、米中に次ぐ3位に躍り出るとみられている。

大国然としたインドの振る舞いは、最近までは空回り気味だった。22年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻では、国際法違反に口をつぐんだ。ヒマラヤ山中の国境地帯で軍事侵攻をちらつかせる中国をインドは「領土保全と主権の尊重」を理由に激しく非難してきたのにもかかわらずだ。

インドが歴史的にロシアと親密とはいえ、同じ民主主義陣営の米欧や日本は「戦略でも価値観でも利害が重なる我々の側へなぜもっと近づかないのか」といら立った。インドは近年、中国抑止のため米欧日に接近していただけに、なおさらだ。

22年3~4月、岸田文雄首相や欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長らが相次ぎインドを訪問。バイデン米大統領もオンラインでモディ氏との首脳協議に臨んだ。対ロシアで同調を迫るためだった。

言葉だけのロシア非難
モディ氏は22年9月、ロシアのプーチン大統領に「いまは戦争の時代でない」と苦言を呈して反響を呼んだ。だが、米欧日の働きかけの成果とみるのは早計だ。

インドは22年8~9月、ロシアの軍事演習に参加。侵攻後に急増したロシア産原油の輸入は同年9月以降、日量100万バレルを超えた。ロシアによるウクライナ東・南部4州の一方的な併合宣言を巡る同年10月の国連の非難決議は棄権した。

それでも一時の米欧日との気まずいムードは去り、存在感はむしろ増した。「姿勢を変えたのは米欧日の側だ。説得しても無理と気づき、逆に追い込みすぎて相手陣営に押しやっては元も子もないと考えた」と防衛大学校の伊藤融教授はみる。

インドのジャイシャンカル外相は20年の著書で、1947年のインドとパキスタンの分離独立では人口、政治の両面で力がそがれ、中国により広い戦略的空間を与えてしまったと悔いている。

「インド外交の基点は対中抑止」との原点に戻れば、日米欧の「こちら側」と「あちら側」という線引きに誤認があったといわざるを得ない。

ひとつは海と陸の線引きだ。インドが米欧日との協力で期待するのは、インドを包囲する中国のシーレーン(海上交通路)戦略へのけん制だ。中国との領有権争いや、パキスタン、アフガニスタンなど周辺国の陸上部で増す中国の影響力抑止ではない。「中国に対抗するため、もう一方の強権国ロシアを利用するのがインド外交」(インド経済研究所の菅谷弘主任研究員)というわけだ。

■民主陣営から脱落も
もうひとつは「同じ民主主義陣営」という認識だろう。「ヒンズー至上主義」のモディ政権は宗教少数派を弾圧してきた。スウェーデンのV-Dem(多様な民主主義)研究所は2020年の報告書でインドを「メディア、市民社会、野党勢力が自由に活動できる領域が極端に狭まり、民主主義のカテゴリーから脱落する寸前だ」と評した。

米欧日は「戦略的自律外交」を掲げるインドと、必ずしも戦略や価値観が一致しない現実を思い知らされたはずだ。

「世界最大の民主国家」をうたいつつ、その名実を乖離(かいり)させながら大国化へひた走るインド。言われて久しい「アジアの世紀」が「インドの世紀」を意味するようになったとき、世界にはより厄介な存在となりかねない予感がする。

(編集委員 高橋徹)

(日本経済新聞)

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