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International Political Economy Updates
「北大西洋条約機構(NATO)はウクライナのために戦争をすべきか」。2月27日、米CNNが番組中に実施した意識調査で、78%の回答者が「イエス」と答えた。
一変した世界
バイデン米大統領はウクライナへの米軍派遣を否定している。だが、ロシアがNATO諸国に手を伸ばそうとすれば、米国も加わるNATOも容赦しない。侵攻前は関与に慎重な見方が優勢だった米世論は変わりつつある。侵攻の実態を見て自衛や支援を支持する声が強まっている。
「1週間で世界は一変した」(米ハドソン研究所前所長のケネス・ワインスタイン氏)。米国は日欧と組んで国際決済網からの排除などでプーチン体制を追い込む。ドイツはロシアとのガス管の稼働を凍結し、軍事費の大幅増額を即決した。
「プーチンは暴力と混乱を解き放った」。3月1日の一般教書演説で非難したバイデン氏だが、世論は厳しい。2月下旬の世論調査で「トランプ氏が大統領だったらプーチン氏は侵攻しなかった」との回答は62%に。アフガニスタンからの米軍撤退の混乱を過半数が原因に挙げる。「プーチン氏は人殺しか」と問われて「ああ、そう思う」と答えたバイデン氏の軽口も弱さを印象づけた。
上院議員と副大統領で50年近く外交経験を積んだバイデン氏。優秀な外交チームを抱える政権だが、クリミア併合を許した14年のオバマ政権と同様に、ロシアに見くびられたのではないか。
11月には米連邦議会の中間選挙がある。バイデン氏の支持率は低迷し、議会での優位を野党の共和党に渡す可能性も高い。「決められない米国」はロシアに加え、中国への抑止力も奪う。
世界秩序は第2次世界大戦後で最も危険な局面といえる。プーチン氏の無謀で破壊的な行動の懸念も消えない。ロシアと中国の国防費が世界に占める比率は20年に16%とイラク戦争の03年に比べほぼ倍増。米国は40%と逆に10ポイント下げた。
米国が「世界の警察官」を担う時代は過ぎた。その中でプーチン氏のような暴挙を許しつづければ、中国が狙う台湾統一など騒乱の種となる。
超党派で結束を
米国はロシア軍の機密情報を積極公開し、NATOへ武器供与を進め、世界の民主主義勢を集めてロシアを孤立させた。米国が総力を発揮して国際社会と連携すればさらなる暴挙を制止できる。
障害は米国内の分断だ。プーチン氏を「天才的だ」と称賛するトランプ前大統領が復権へ動けば米欧同盟もゆらぐ。
危機は党派を超えた結束のバネとなる。ウクライナ侵攻を機に、共和党の主流派に手をさしのべ、民主党の急進派を制し、米国の実行力を再建する。日欧の協力を集めて強権主義に対抗するためにも、まず取り組むべきは米国の分断修復だ。
(ワシントンで、本社コメンテーター 菅野幹雄)
(日本経済新聞)