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オープンAIなど群雄割拠 ユニコーン13社、差別化で競う 2023/07/10

「Chat(チャット)GPT」の米オープンAIを筆頭に、生成AI(人工知能)分野では新興勢が技術革新をけん引している。成長力への期待は高く、ユニコーン(企業価値10億ドル以上の未上場企業)はオープンAIを含め世界で13社に達した。各社は資金力に勝る大手とも協力関係を築いている。

企業価値、約1年で3倍超も
米西部カリフォルニア州パロアルト市。2022年設立の米インフレクションAIは米テスラや米HPの拠点が並ぶ緑豊かなオフィス街に登記上の本社を置く。6月下旬には13億ドル(約1900億円)の調達を発表して注目を集めた。企業価値の評価額は40億ドルと約1年前の3倍強に跳ね上がった。

ただ、本社があるはずの建物に入居するのはスタートアップ支援で知られる地元の法律事務所で、インフレクションの看板は見当たらない。35人強の従業員は共用オフィスなどで働き、まだ目立った本社を構えていない状況とみられる。

表に見えづらい事業活動とは対照的に、スタートアップ投資分野における存在感はめざましい。出資者には米マイクロソフトや米半導体大手エヌビディアに加え、マイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツ氏や米グーグル元最高経営責任者(CEO)のエリック・シュミット氏が名を連ねる。

設立1年あまりで有力企業などの出資を受けられたのは、強力な創業メンバーの存在があってこそ。米リンクトイン元会長のリード・ホフマン氏らとともにインフレクションを立ち上げたのはムスタファ・スレイマンCEOだ。16年に世界のトップ棋士を破った「アルファ碁」を開発した英ディープマインド(現在はグーグルのAI研究部門と統合)の共同創業者として知られる。

インフレクションはチャットGPTに似た一般向けの対話型生成AI「Pi(パイ)」を手掛け、その基盤となる大規模言語モデルも自社で開発する。巧みな受け答えで世界を驚かせたオープンAIとの違いは、AIにも高いEQ(心の知能指数)を持たせようとする開発姿勢にある。

「いらだつのも分かります」。スマートフォンのアプリでパイに悩みを相談すると、共感を示す言葉から回答が始まる。質問を重ねて利用者の状況をよく知ろうとしたり、絵文字で会話の雰囲気を和ませたりする。スレイマン氏は「親切で実務的なチーフ・オブ・スタッフ(首席補佐官)を誰もがポケットの中に持つようになる」と話す。

チャットGPTが火を付けたブームによって、生成AI分野では23年に入ってスタートアップによる大型の資金調達が相次いでいる。米CBインサイツによると6月までにユニコーンは13社となり、22年末からほぼ倍増した。

開発方針の違いなどからオープンAIを離れた7人が21年に起業した米アンソロピックはチャットGPTの向こうを張って独自の対話型生成AI「Claude(クロード)」の開発を進める。5月下旬にはグーグルなどから4億5000万ドルを調達したと発表した。企業価値の評価額は約41億ドルと、生成AI分野のユニコーンではオープンAIの290億ドルに次ぐ2番手につける。

アンソロピックはAI開発の透明性を重視し、学習データなどを非公開とするオープンAIとの違いを鮮明にしている。大規模言語モデルの計算基盤についてもマイクロソフトから独占的に供給を受けるオープンAIとは異なり、アンソロピックは株主であるグーグルだけでなく米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)とも協業する。

グーグル出身者が相次ぎ起業
13社のユニコーンの創業メンバーにはAI研究を長年リードしてきたグーグルの出身者が多い。生成AIを使った社内情報の検索ソフトウエアを手掛ける米グリーンのアービンド・ジェインCEOはその一人だ。「生産性を高めたい企業のニーズは強い」とみて、19年に起業に踏み切った。

企業価値の評価額が21億ドルに達したコーヒア(カナダ)を率いるエイダン・ゴメスCEOもグーグルでインターン中にAI研究に携わった。「変革が楽しみな分野の一つはカスタマーサポートだ」と言い、接客用対話AIの精度向上や要約サービスなどの開発に力を入れる。

今後は生成AIの分野では文章だけでなく画像や音声、動画なども扱う「マルチモーダル化」への期待が大きい。動画編集では18年設立の米ランウェイのAIが映画制作の現場などでも使われ始めている。同社は6月下旬、グーグルやエヌビディア、米セールスフォース傘下のベンチャーキャピタル(VC)などから1億4100万ドルを集めたと発表した。

コード(プログラムを動かす文字列)生成などソフト開発者支援でもAIの活用が進む。フランス出身の連続起業家クレマン・デラングCEOが設立した米ハギングフェイスはソフト開発共有サイト「ギットハブ」のAI版として、エンジニアらのコミュニティーの基盤となりつつある。

金利上昇でスタートアップの資金調達が低迷するなか、成長期待が大きい生成AI分野にマネーが集中する傾向が強まっている。米国では1〜6月のスタートアップ投資額が前年同期比で半減したのに対し、生成AI分野に限れば投資額は半年ですでに22年通年の実績を上回った。

オープンAIがマイクロソフトと排他的に資本・業務提携したのと対照的に、インフレクションAIやアンソロピック、コーヒアなどは複数のテクノロジー大手から少額ずつ出資を受けている。特定の勢力に依存しない「等距離外交」によって、経営の独立性を維持する狙いとみられる。

高まる投資熱、バブルの懸念も
生成AI分野では知的財産や人材を取り込むためのM&A(合併・買収)も活発だ。ビッグデータの分析基盤などを手掛ける米データブリックスは6月下旬、大規模言語モデル開発の米モザイクMLを13億ドルで買収すると決めた。様々な買い手の存在がユニコーンの企業価値の評価額をつり上げている。

著名投資家のビノッド・コースラ氏は生成AIスタートアップを取り巻く現状について「バブルの面はあるが、その崩壊を生き残るのがトップ企業だ」と話す。ブームに乗り遅れまいとする心理が投資家を強気に傾かせている。

インターネットの普及初期にも多数の検索エンジンが登場したが、1998年創業で後発だったグーグルが覇権を握ることになった。生成AIではいずれ大手が出資を手がかりにスタートアップを飲み込むのか。あるいは新興勢が大手を踏み台に駆け上がるのか。市場拡大に伴い、新旧勢力の駆け引きが激しさを増すことになる。

(日本経済新聞)

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