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コロナ債務処理、ファンド名乗り ニューホライズン、120億円規模 地銀と連携、地域を支援 2022/08/23

投資ファンドが地域金融機関と組み、新型コロナウイルス禍で経営難に陥った中小企業の再生に乗り出す。ニューホライズンキャピタル(東京・港)は地方銀行などから資金を募り、約120億円規模の再生ファンドを設立する。飲食や宿泊業などではコロナ禍で過剰債務を抱え、自力再建が困難な企業が増えている。ファンドのノウハウを活用して企業の再生を支援し、地域経済の悪化を防ぐ。

ニューホライズンの新ファンドは7月までに経済産業省が所管する中小企業基盤整備機構のほか、きらぼし銀行や紀陽銀行などから約80億円を集めた。最終的な金額は120億円程度をめざし、今後5年間で全国規模で数十社に投資する。

ロングブラックパートナーズ(LBP、東京・港)は各地で再生ファンド設立に取り組んでおり、7月に北洋銀行と共同で20億円のファンドを立ち上げた。北海道内の中小企業を投資対象とし、道内の信用金庫や信用組合が出資を決めた。LBPは2023年には全国型ファンドの設立を計画する。

再生ファンドは金融機関から経営難に陥った取引先企業の債権を時価で買い取り、再生を支援する。対象会社から継続の見込みのある事業を別会社に分離し、他は清算して再スタートさせることが多い。再生には経営者や金融機関の協力が欠かせないため、債権を安く買いたたいて短期の利益を狙う手法とは異なる。

あおぞら銀行は傘下ファンドを通じて全国の地銀や信金から債権を買い取っており、22年度には新たに荘内銀行や伊達信用金庫がファンド利用に関する提携を決めた。NECキャピタルソリューション傘下のリサ・パートナーズは21年に設立した三重県特化の再生ファンドに続き、他の地域でもファンドを準備中だ。

地域再生のファンドが増えているのは、債務処理を含めた抜本的な再生ニーズが高まる公算が大きいためだ。財務省によると、実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)を中心とするコロナ関連融資は21年4月末時点で約56兆円にのぼった。すでに完済した企業が出ている一方、業績が上向かず返済に着手できない企業も目立つ。

中小企業の再生相談は増えている。中小企業の私的整理を担う公的機関の中小企業活性化協議会(活性協、旧中小企業再生支援協議会)への相談件数は21年度までの2年間で約9800件にのぼった。このうち4割強の約4300件は取引金融機関による特例的なリスケ(返済猶予)で対応しており、将来債務処理を迫られる恐れがある。業種別で製造業のほか、卸や小売、飲食や宿泊でリスクが目立つ。

もっとも再生に関する相談は増えているものの、実際にファンドへ債権を売却する動きはまだ少ない。理由の一つにコロナ禍の長期化がある。経営環境が不透明なままで、事業再生の計画策定が難しくなっている。こうした状況下で債権を売却すれば、取引先を見捨てたように映るという金融機関側の風評に対する懸念もあるとみられる。

もう一つが事業再生に関わる人材の不足だ。09~12年度の中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)以降、一部の地銀では不良債権処理のニーズが薄れ、再生に関わる人材を減らした。再生実務を担う債権回収会社(サービサー)の廃業も相次ぎ、21年末時点のサービサー数は76社とピーク時から25%減った。

過剰債務を抱えた中小企業は時間がたつほど事業価値が下がり、将来の再生余地が狭まる恐れもある。ファンドや地銀が連携した企業の再生支援は地域経済の将来にとっても重要な意味を持っている。

(和田大蔵)

(日本経済新聞)

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