金融、コンサル、外資系の転職・求人なら人材紹介【アスパイア】

無料転職支援・
相談のお申し込み

簡単登録
(入力1分)
信頼度NO.1の人材紹介エージェント
  • pic

    Bank of America Tower entrance in Charlotte, North Carolina, USA

  • pic

    Jamie Dimon, Chairman and CEO of JPMorgan Chase & Co.

金融&M&A業界最新情報

Financial & M&A Industry Updates

ゴールドマン、見えぬ反転 7~9月も最終減益続くM&A低調、回復道半ば  個人向け縮小費用も膨らむ 2023/10/19

【ニューヨーク=斉藤雄太】米金融大手ゴールドマン・サックスが業績不振でもがいている。2023年7~9月期まで2年間にわたって最終減益が続き、同業他社に比べ出遅れが目立つ。主力の投資銀行ビジネスの回復は道半ばで、個人向け(リテール)事業縮小に伴う費用が膨らむなど戦略の失敗も重く響く。

「資本市場(での資金調達)が広く再開される見通しであることに励まされている」。ゴールドマンのデービッド・ソロモン最高経営責任者(CEO)は17日、23年7~9月期の決算説明会でこう語りかけた。

9月以降、英半導体設計のアームや食品宅配サービス「インスタカート」の運営会社など計4社が米市場で時価総額1兆円を超す大型の新規株式公開(IPO)を果たした。ゴールドマンはこのすべてで上場を取り仕切る主幹事を務め、ソロモンCEOは「他のどの銀行も同じ主張はできない」と強調した。

それでもゴールドマンの稼ぐ力はかつての水準に遠く及ばない。7~9月期の純利益は33%減の20億ドル(約3000億円)で、21年10~12月期から8四半期連続の2桁減益になった。M&A(合併・買収)助言が低調で投資銀全体の手数料収入は1%増にとどまった。

米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めにカジを切った後、企業の買収や資金調達が落ち込んだ。長引く「投資銀行の冬」に直面するのは他の米金融大手も同じだ。

だが、他の金融大手は金利上昇による預貸利ざやの拡大が追い風になり、7~9月期はJPモルガン・チェースが35%増益、バンク・オブ・アメリカが10%増益となった。21年のゴールドマンは四半期純利益でJPモルガンの半分程度を稼いでいたが、現在は同1~2割にとどまる。投資銀依存度の違いが業績格差につながっている。

ゴールドマンは収益源の多様化や安定的な資金調達に向け、ネット銀行の設立や米アップルとの金融事業での提携などリテール事業の強化を進めてきた。だが黒字化に苦戦したことから1年前に同事業は縮小路線に転換した。この撤退戦のコストも業績悪化に追い打ちをかけている。

23年7~9月期は個人の住宅修繕向け融資を手がける「グリーンスカイ」の事業売却が税引き前ベースで2億ドルの減益要因になった。4~6月期にも約5億ドルの減損処理を実施した。グリーンスカイは1年半前に買収を完了したばかりだが、戦略転換に伴う損失が膨らんだ。

アップルの顧客向けに提供するクレジットカードや預金といった金融サービス事業を売却するという観測もくすぶっている。ソロモンCEOは決算説明会で「提携は長期的な契約で、一方的に解消する権利はない」と語った。カード事業は新たな幹部の起用でてこ入れを図るとしつつ「我々にとって長期的に何が最善かを検討する」と今後の売却に含みも持たせた。

投資銀行ビジネスでは世界トップの実績と知名度を誇るゴールドマンもリテールでは後発組だった。このため人材など経営資源が十分に整わないまま事業の拡大を急ぎ、コスト管理も甘くなって赤字体質が定着した。ソロモンCEOはかねて「我々はあまりに早く多くのことをやろうとしすぎた」と述べている。

ネット銀行はロイド・ブランクファイン前CEOの時代に始めたが、さらなるリテール強化路線を敷いたのは18年10月に就任したソロモンCEOだ。

本業が好調なうちに安定した収益源を育てる狙いだったが、FRBの急速利上げで投資銀ビジネスの稼ぐ力が落ち込み、費用先行のリテール拡大を続ける余力がなくなった。トップ主導の戦略だっただけに、方針転換を判断するのに時間がかかり傷口を広げた面もある。

「誰が消費者事業の戦略転換で生じた損失の責任を負い、代償を払うのか」。17日の決算説明会ではアナリストから厳しい意見も出た。ソロモンCEOは自身を含む経営陣に説明責任があるとしたうえで「間違った決断をしたと考えるなら、それに応じて調整をする。我々はそれを実行し、前進している」と答えた。

ゴールドマンは昨秋以降に複数回の人員削減を実施し、有力幹部の退社も相次いだ。業績悪化で昨冬のボーナスが大幅カットになったため、残った幹部も不満を強め、一時はソロモンCEOの続投を懐疑的にみる向きもあった。今も経営陣に対する社内や市場の信認が完全に回復したとは言いがたい。「ウォール街最強」といわれた名門復活の道筋はなお見えない。

(日本経済新聞)

menu