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サウス台頭「旧秩序」突く 「南南輸出」急増、南北超え/米中「世界二分論」に異議 2024/01/22

世界秩序が塗り替わる。変化の中心は覇権を争う米国と中国だけではない。グローバルサウス(総合・経済面きょうのことば)と呼ばれる新興勢も台頭し、国際社会の極は北から南へと揺れ動く。従来の常識が覆る「ポーラーシフト」の時代に入った。

2023年12月16日、サウジアラビアのリヤドに主要7カ国(G7)やインド、トルコなどの政府高官がひそかに集まった。ウクライナが提唱するロシア軍の全面撤退を柱とする「和平案」を協議する非公式会合だ。

和平案はウクライナ主導でロシアに対抗する狙いだった。ところがこの日の会合では、新興国からウクライナに早期停戦に向けたロシアとの対話を促す声が相次いだ。ウクライナははねつけ、会合は冷ややかな雰囲気で終わったという。

二重基準と批判
「パレスチナ自治区ガザでも国際法を順守すべきだ」。リヤド会合に先立つ23年10月の会議でもトルコなどが欧米への批判を展開した。ロシアを「国際人道法違反」と断じる一方、イスラエルに寄り添う欧米の「二重基準」に不信を募らせる。

1945年の第2次大戦終結から約80年がたった。世界は戦勝国を基軸に国連などの戦後体制を築き、安定と繁栄を享受してきたが、限界と矛盾があらわになってきた。

代わりに発言力を高めたのが新興国だ。

「最大の民主主義国であるインドやアフリカ、中南米から常任理事国を拒み続けるなら、国連安全保障理事会の意思決定の信頼性は疑われる」

インドのモディ首相は23年、日本経済新聞のインタビューで強調した。長年、日本やドイツと安保理改革をめざしてきたが、サウスの代弁者として旧秩序を批判する。

10日、モディ氏は地元グジャラート州の投資誘致会議で「我々はグローバルサウスの代表であり、世界経済の成長エンジンだ」と力説した。

自信の裏側には3つの力の変化がある。

人口の6割に
インドは23年、最大の人口大国になった。国連統計では22年の世界人口は80億人と、1950年の3倍強に増えた。中国を除く新興国による枠組み「77カ国グループ(G77)」の伸びが著しく、いまでは6割を占める。

経済でも新興国が主役となる時代へ向かう。インドの国内総生産(GDP)は26年に日本を上回る見通しだ。三菱総合研究所はG77のGDPが40年前後に米国や中国を抜くと試算する。

中国を含む新興国から新興国への「南南輸出」は21年に6.2兆ドル(約920兆円)と、05年の3.5倍に急増した。先進国への4.5兆ドルをしのぐ。

軍事バランスも変わり始めた。30年前はG7が世界の軍事費の7割を握っていたが、22年の比率は5割に下がった。

23年9月、ブラジル最大都市サンパウロ。「わが国はただの資源提供国では終わらない」。デアギアル海軍提督は33年までに原子力潜水艦を自主建造し、実戦配備すると明かした。

実現すれば南半球初、米中ロなどに続く7カ国目の原潜保有国となる。提督は「核弾頭は積まない」と言うが、周辺国は海軍増強に動きだす。

存在感を高める新興国には危うさものぞく。

23年10月、インド。「彼の目的はバーラト(インド)を破壊することだ」。モディ氏率いるインド人民党(BJP)はX(旧ツイッター)の公式アカウントで最大野党のラフル・ガンジー氏を中傷する投稿を連発した。

BJPは世論対策部隊「ITセル」を抱える。強力な情報統制で治めるやり口は従来の民主主義国家とはかけ離れる。

「この地球は米中両国を受け入れられるほど広い」。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は23年11月、バイデン米大統領と会い「世界二分論」を主張した。しかし世界はそう単純ではない。

北京で23年10月に開いた広域経済圏構想「一帯一路」首脳会議では、首脳級の参加国が24カ国と19年の前回会議(37カ国)から減った。陣営内でも利害が入り乱れる。

23年12月、20カ国・地域(G20)の議長国を務めるブラジルはシェルパ(首脳の補佐役)会合を主催し、2月の外相会合で共同声明を見送る方針を示した。ウクライナやガザ情勢をめぐる意見集約が難しいためだが、南アフリカやサウジ、トルコはさっそく反発した。

グローバルサウスも決して一枚岩ではない。

24年は世界の主要国・地域で史上最多となる計40億人が選挙をむかえる。何を選び、どの道を行くか。絶対的な極はもはや存在しない。

(日経新聞)

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