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シティ、聖域なきリストラ 管理職含む2万人削減 2024/02/07

米連邦準備理事会(FRB)が利下げの時期を探り、競争環境が変わりつつある中で、米銀の優勝劣敗が強まっている。JPモルガン・チェースが「1強」の座を固める一方で、シティグループなどは事業の再構築に追われる。米地銀の経営不安もくすぶっており、金融システムの動揺が広がれば米景気の軟着陸シナリオが揺らぎかねない。

1月中旬。シティグループのジェーン・フレーザー最高経営責任者(CEO)が昼食を共にしたのはウォーレン・バフェット氏だった。同氏が率いる投資会社バークシャー・ハザウェイは2022年、約30億ドル(約4400億円)でシティ株を取得した大株主だ。関係者によるとフレーザー氏は自らが主導する改革への支持を取り付けたという。

「Citi never sleeps(シティは眠らない)」。かつて世界中に支店網を築いた自らをこう呼び、世界最大の規模を誇った複合金融グループが構造改革に追われている。社内で「プロジェクト・ボラボラ」と呼ぶ改革は、太平洋に浮かぶ島の楽園のイメージとは似つかわしくない苛烈な内容だ。

投資銀行業務と法人融資を担うバンキング、市場、富裕層、消費者、証券の5部門に事業を再編し、各部門トップはフレーザー氏の直轄とする。中間管理職など経営判断に関わる階層を約3分の2に減らし、従業員の1割弱にあたる2万人が26年までにシティを去る。過去数十年で最大規模のリストラになる。

収入の高い中間管理職がだぶつき意思決定が遅れ、業績低迷の温床になっていた。23年10~12月期の最終損益は四半期で14年ぶりの赤字に転落。PBR(株価純資産倍率)は0.5倍と、JPモルガン(1.6倍)など同業他社と比べ突出して低い。遅れはもはや許されないとの危機感がフレーザー氏を改革に駆り立てる。

かつての花形だった事業にもメスをいれる。地方債事業ではワールド・トレード・センター跡地の再開発に伴う資金調達などで中心的な役割を担ってきたが、事業の収益性に疑問符が付き、撤退を決めた。

改革は海外にも及ぶ。他行に先駆けて始めた海外での個人向け事業は、世界中で支店やATMを構えてサービスを展開するシティの象徴だった。リーマン危機後の規制強化で支店網の維持コストが増し、収益をあげるのは難しくなった。

ここ数年でアジアやオセアニアの9カ国・地域で個人向け事業の撤退を完了した。残るロシア、韓国、中国などからも撤退する。フレーザー氏は「戦略を完全にリセットし、改革は最終章を迎えている」と強調する。

事業の絞り込みを進める米銀はシティだけではない。

ウェルズ・ファーゴは23年、かつて最大手だった住宅ローン業務を抜本的に見直し、債権回収事業などの大幅縮小を決めた。過去の不正で規制対応の負担が増し、金利上昇による需要の冷え込みで採算が悪化したためだ。低収益のビジネスを整理し、23年末までの1年間で1万2000人以上の従業員がウェルズを去った。

拡大戦略を見直し総合的な金融サービスを諦める米銀が増えるなか、今なお巨大化を突き進むのがJPモルガンだ。

リーマン危機後に買収を繰り返して規模を拡大し、23年春の地銀危機ではファースト・リパブリック・バンクの買収に動いた。23年12月期の純利益は495億ドルと過去最高を記録し、シティの5倍以上だ。05年にはシティがJPモルガンの3倍近く稼いでいたことを踏まえると、「新旧王者」の格差が鮮明になる。

JPモルガンの23年末の社員数は約31万人と2年半で5万人も増えた。ダニエル・ピント社長は1月の「ダボス会議」で米メディアに、あらゆる分野で事業機会があると強調。「今年も確実に人員を増やす」と意欲を示した。

「1強」の座を固めるJPモルガンが、シティの二の舞いになるリスクはないのか。S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスの銀行アナリスト、ネイサン・ストーバル氏は「JPモルガンは常に真に効率的であることに集中してきた」と指摘する。勝てる分野に資本を投じ、規模拡大ありきではない成長を遂げてきたとみる。

それでもJPモルガンは在任20年近くになるジェイミー・ダイモンCEOの退任後、後継者が巨大組織を掌握できるのかという別の問題も抱える。米経済の血流を担う「ウォール街の覇者」を巡る争いに終わりはない。

(日本経済新聞)

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