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テック金融の要、不安連鎖 シリコンバレー銀、債券で巨額損 新興の資金繰りに波及 2023/03/12

米テクノロジー企業への融資で知られ、米西海岸シリコンバレーのエコシステムの中核を担ってきたシリコンバレーバンク(SVB)が10日、経営破綻した。テック企業の預金を債券に投じたが、急ピッチな利上げで実質債務超過に陥っていたとみられる。スポンサー探しが行き詰まれば新興企業の資金繰りへの波及が必至だ。

「昨晩、別の銀行口座に資金を移そうとしたが取引できなかった」――。10日朝、米カリフォルニア州サンタクララ市のSVB本店を訪れた男性は肩を落とした。医療関連のスタートアップ企業を経営し、SVBに350万ドル(約4億7000万円)を預けていた。米連邦預金保険公社(FDIC)による1口座あたりの預金保護上限(25万ドル)を大きく超える。

SVBファイナンシャル・グループ傘下のSVBは1983年に創業した。口座の開きやすさや対応の速さがスタートアップやベンチャーキャピタル(VC)に支持され、同社によるとVCが投資する米国のテックやヘルスケア企業の約半数と取引がある。「起業したら口座を開くのが当然」(10日に本店を訪れた経営者)とされる。

グループでVCも持ち、起業家の資産運用も手掛ける。シリコンバレーのエコシステムの中核を担う金融機関といえる。

突如破綻した原因が債券の損失だ。新型コロナウイルス下の金融緩和に伴うカネ余りで、スタートアップは資金調達を拡大した。SVBはスタートアップから預金を集め22年3月末の預金残高は前年同期比6割増の1980億ドルに膨らんだ。

預金が増える一方、株式で十分に資金調達していたスタートアップへの融資は限られ、資金を住宅ローン担保証券(MBS)など有価証券の購入にあてた。利上げが進むと含み損が膨らみ、22年末時点ではグループで151億ドルと、普通株式と内部留保の合算である自己資本の中核「CET1」の136億ドルを上回っていた。実質的には過小資本に陥っていた。

米オッペンハイマーのクリス・コトウスキ氏は「金利上昇は(金利収入の増加で)多くの銀行に恩恵をもたらすが、SVBは金利上昇が打撃となる構造を持っていた」と指摘する。預金に対する有価証券の割合を示す預証率は70%弱と、20~40%が中心の他の米銀に比べ突出して高かった。

引き締めで資金調達環境が逆風に転じたスタートアップからの預金も減った。SVBの預金残高は22年末、ピークの同年3月末より13%減った。

8日に債券売却や増資を発表し打開を狙ったところ、むしろ「投資先が一斉に預金を引き出し始めた」。オンラインバンキングで障害が発生し、預金が引き出せなかったとの声も上がる。

預金者にはテックやヘルスケア系企業が全体の6割を占める。個人預金に比べ流出しやすい。会社資料によると、22年末時点でFDICの保護上限を超えた額は預金全体の約9割を占めた。こうした状況が取り付け騒ぎを広げたとみられる。

スタートアップ側の当面の焦点は運転資金の確保だ。特に「設立から日が浅い企業ほどSVBへの依存度が高い」(VC幹部)という。ソフトウエア系のスタートアップに融資する会社が給与支払いのための短期融資を案内したところ、問い合わせが殺到した。

米調査会社ピッチブックのマデリン・シー氏は「SVBから資金を取り戻せない場合、多くのベンチャー企業が現在の景気減速を乗り切れるか疑問だ」と指摘する。米ブルームバーグ通信によると、数日内にも資産売却先が決まる可能性がある。スポンサーが決まり、どの程度の預金が返済されるかが焦点になる。

(ニューヨーク=大島有美子、シリコンバレー=奥平和行)

(日本経済新聞)

米連邦預金保険公社(FDIC) 破綻時の預金を補償 2023/03/12

▽…米国の金融機関が破綻した場合に、一定額の預金などを保護するための預金保険制度を運営する。預金を取り扱う金融機関は加盟が義務付けられ、FDICは金融機関の健全性を監督する。破綻処理では管財人の役割も果たす。1口座あたりの預金保護上限は25万ドル(約3380万円)。

▽…1920年代後半からの大恐慌時に大量の銀行が破綻し、預金者が損失を被った。33年のFDIC設立によって小口預金者を保護し、金融システムへの信頼を確保する狙いがあった。80年代、貯蓄金融機関(S&L)の大量破綻を契機に預金保険制度の改革が実施され、FDICの権限も強化された。

▽…2008~09年の金融危機でワシントン・ミューチュアル・バンクなど大手銀が破綻し、FDICの保険基金が大きく減少した。米銀ワコビアの破綻を防ぐため、同業シティグループによる買収を仲介しようとしたこともあった。10年の「ドッド・フランク法(金融規制改革法)」成立で、金融機関のストレステストを実施したり破綻処理計画の提出を求めたりするようになった。

(日本経済新聞)

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