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国際政治経済最新情報

International Political Economy Updates

トラス英新首相が就任 「この嵐を乗り越える自信ある」 2022/09/06

6日、ロンドンの首相官邸前で演説するトラス英首相=ロイター

【ロンドン=中島裕介】英国のトラス新首相が6日、正式に就任した。物価急騰への対策やウクライナ危機への対応で成果を出し、政権基盤を固めるには前任のジョンソン氏を巡る与党・保守党内の亀裂修復が欠かせない。2025年1月までに実施される次期総選挙(下院選)で勝利するには、早期の挙党体制の構築が必要になる。

トラス氏は6日昼(日本時間同日夜)、英北部スコットランドに滞在中のエリザベス女王に会い、首相に任命された。同氏は同日午後、ロンドンの首相官邸前で演説した。エネルギー価格の高騰に触れ、「この嵐を乗り越える自信がある」と表明した。

これに先立つ6日午前、ジョンソン氏はロンドンの首相官邸前での退任演説で「新政権を熱烈に支援する」と述べ、トラス氏にエールを送った。トラス氏は外相としてジョンソン氏を擁護し続けた。ジョンソン氏は英国の欧州連合(EU)離脱など自身の業績を並べたうえで、「トラス氏と新政権のあらゆるステップを応援していく」と締めくくった。

トラス氏は5日、保守党の新党首に選ばれた直後の演説で「あなたはEU離脱をやりとげ、新型コロナウイルスのワクチンを普及させ、(ウクライナ侵攻に踏み切った)プーチン(ロシア大統領)に立ち向かった」とジョンソン氏をたたえていた。

2人とも新型コロナ対策の行動規制下でのパーティー問題など、首相交代の理由になったジョンソン政権の不祥事には触れなかった。

トラス氏が政権運営を安定させるためには、まず保守党内の亀裂を修復する必要がある。同氏が党首選で勝利できた理由は大規模減税など物価対策への評価だけではない。ジョンソン派の党員の支持を取り込めたのが大きな要因だ。

決選投票に参加した一般党員の5割以上が世論調査で「(ジョンソン氏の)辞任は間違いだった」と回答した。同氏の人気はなお根強い。

トラス氏が下したスナク氏は党首選の最中、7月上旬に財務相を辞任したことでジョンソン政権崩壊の引き金を引いたと批判された。一方、これには60人ほどの副大臣や政務官らが同調して辞任した。党内でスナク氏への賛同が広がっていたのも事実だ。

党首選の決選投票でトラス氏の得票率は57%だった。決選投票になった2001年以降の過去4回の党首選では最も低い。ジョンソン政権の閣僚もトラス氏支持とスナク氏支持に分かれ、党所属の有力な下院議員の間でも溝が深まった。党内の結束を取り戻せなければ、物価対策やウクライナ支援などの難題をまとめる際の障害になりかねない。

英国ではEU離脱を巡る混乱もあり、メイ氏、ジョンソン氏と比較的短命の政権が続いた。トラス政権が2人を超える安定政権を築くには、遅くとも25年1月までに実施される次期総選挙で勝利し、政権を維持する必要がある。この点でトラス政権は大きなジレンマを克服する必要がある。

英調査機関オピニウムの8月中旬の有権者全体の調査では、ジョンソン政権の業績を評価するという回答は26%にとどまった。19年の前回総選挙で保守党に投票した有権者の3割ほどが、次期総選挙で保守党に投票しないと答えた。

足元の複数の世論調査では、労働党が支持率で保守党を約10ポイント上回る。現状のままではトラス氏が次期総選挙で勝つ青写真は描けない。シンクタンクのカーネギー・ヨーロッパは「トラス氏が党内の支持を保つにはジョンソン氏の尊重が必要だが、選挙で勝つには同氏を見限った保守党支持者をひき付けないといけない」と指摘する。

労働党のスターマー党首は5日、ツイッターに「12年間の保守党政権でもたらされたのは低賃金と高物価。つまり保守党による生活費の危機だ」と投稿し、トラス新政権を批判した。今後の政局次第では、総選挙を経験していないトラス政権に下院解散を迫る展開もあり得る。

トラス氏が挙党体制を確立し、物価抑制で成果をあげるまでは、保守党や政権の支持率回復は難しい。イングランド銀行(英中央銀行)の予想では、物価高騰で実質成長率は23年初め、マイナスに沈み、24年後半までプラス圏に回復しない。ロンドン大のアナンド・メノン教授は「下院解散と総選挙は24年秋以降になる。景気回復にメドがつくまで与党は総選挙に踏み出せない」と指摘する。

(日本経済新聞)

英、トラス次期首相に物価高の荒波 減税で財政悪化懸念 2022/09/05

【ロンドン=中島裕介】5日に英国の新首相への就任が決まったトラス外相は、物価急騰への対応が最優先課題となる。トラス氏は法人税引き上げを凍結し、国民保険料の引き下げに踏み切る方針だが、財源の裏付けは乏しい。対策の追加も検討されており、新型コロナウイルス危機で傷ついた財政の一段の悪化の懸念は強い。

「私は国民の光熱費問題に対処し、エネルギー危機を解決する」。トラス氏は5日の当選後のスピーチで懸案への意気込みを語った。1週間以内に家計や企業への支援策を発表する予定だ。

消費者物価指数(CPI)の上昇率は、7月時点で前年同月比10.1%に達した。欧州連合(EU)離脱に伴う労働力不足や、新たな通関手続きの発生によって増えた英EU間の貿易コストが物価を押し上げ、そこにエネルギー価格高騰が追い打ちをかけた。2023年初にはインフレ率が22%になるとの予測もある。

天然ガス価格高騰の利用者への転嫁が本格化し、10月には標準的な家庭の年換算の光熱費が9月までと比べて8割増の3549ポンド(約57万円)に上がる。1月には5300ポンドを超えるとの試算もある。

打撃は家計だけでない。英文化の象徴のパブでは光熱費が3倍に跳ね上がった店もある。英商工会議所は倒産の連鎖を防ぐために「新型コロナウイルス危機の際と同じような支援が必要だ」と訴え始めた。

トラス氏は党首選の序盤で国民保険料の引き下げや法人税上げの凍結など国内総生産(GDP)の1.4%に相当する年間約300億ポンドの減税を打ち出した。これでは力不足として消費税にあたる付加価値税(標準税率20%)の5%引き下げも検討する。

政府の総債務はコロナ危機での大規模な財政支援で膨らみ、コロナ前のGDP比80%台から22年3月時点で100%に跳ね上がっている。金融街シティーのファンドマネジャーは「新首相が財源なしで減税や財政出動を重ねれば、通貨ポンドが売られるうえに国債市場に動揺が走り金利上昇が起こるだろう」とみる。

新首相には財政悪化のリスクを抱えても、物価対策を優先せざるを得ない事情がある。インフレ抑制は25年1月までにある次期総選挙に向けた政権支持率の回復だけでなく、対ロシア制裁の継続にも関わるためだ。

トラス氏は党首選の討論会で「ロシアに厳しい制裁を科した英国を誇りに思う」と述べ、ロシアへの強硬姿勢を続けると力説した。30年までの防衛費のGDP比3%への増額も訴えた。

ただ足元のエネルギー価格の高騰は、ロシア産化石燃料の輸入を制限する西側諸国と、報復に欧州へのガス供給を絞るロシアとの応酬が原因だ。物価への対応が不十分で深刻な景気後退や倒産の急増を招けば、英国内でロシア制裁やウクライナ支援の見直しを求める声が台頭しかねない。

現実に英国では物価上昇に見合う賃上げを求める鉄道職員らのストライキが頻発している。高騰する光熱費の支払いを拒否する市民運動「Don’t Pay」も勢力を拡大し、10万人超の支持者を集めたという。

トラス氏はジョンソン路線を継承し、離脱以降、関係が冷え込むEUへの強硬姿勢を続ける方針だ。ただ摩擦が続く英領北アイルランドの国境問題がこじれて、英・EU貿易の関税ゼロを定める協定の一部停止などに発展すれば、英経済にさらにダメージとなる。ウクライナ危機を抱える中での英・EU関係の悪化は、バイデン米政権も望んでいない。

米シンクタンク、アトランティック・カウンシルのフランシス・バーウェル特別研究員はウクライナ危機の動向次第では「英国外交のアジアや日本の優先順位が下がる可能性がある」と指摘する。バーウェル氏は「リーダーが注意を費やせる問題の数は限られている」としたうえで、今後の英経済の状況もアジア外交の関与の強さに影響を与えると語った。

(日本経済新聞)

英次期首相トラス氏 こんな人 サッチャー氏信奉 閣僚経験は豊富 2022/09/06

【ロンドン=中島裕介】英国史上3人目の女性首相に就くリズ・トラス外相(47)は、初代女性首相のサッチャー氏を信奉する保守党内のリバタリアン(自由至上主義)派の代表格だ。2010年に政界入りし、わずか4年で環境相に抜てきされ、それ以降、複数の閣僚ポストで経験を重ねた。

20年には国際貿易相として、日英経済連携協定(EPA)の英側の交渉を主導した。外相だけでなく財務省の副大臣級のポストも歴任しており、省庁の仕事について内政・外政の双方に精通していると評価が高い。

一方、自ら「私は巧妙なプレゼンターではない」と語る通り、演説や討論での発言は機械的でぎこちない場面も多く、発信力や親しみやすさには課題を残す。トラス氏自身は「その代わり、やると言ったことは実行する」と英政界でもトップクラスの閣僚経験を強みとしてアピールする。

英メディアは「政界で最も早くソーシャルメディアを活用した議員」とも評する。外相時代も外遊や新政策を相次ぎインスタグラムやツイッターに投稿して話題になった。自身も認めるプレゼン力不足を補うため、首相就任後もこうした発信が続きそうだ。

(日本経済新聞)

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