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トーマツ、AIで不正会計を検知 300社の財務データ学習 2023/08/12

監査法人トーマツは9月にも、人工知能(AI)を使って企業の財務情報を監査する取り組みを本格的に始める。過去に誤りや不正があった企業の財務報告書を学ばせることで、監査先企業の不正リスクを探り当てる。企業の不適切会計が増える中、AIを活用して効率的な監査をする動きが広がってきた。

トーマツが本格的に活用するのは、会計データの誤りや不正の可能性を自動的に検知するシステム。過去に誤りや不正で訂正した約300社の財務報告書をAIが学び、監査先の財務データと比較して不正の可能性を分析する。リスクが高い財務項目を把握しやすく監査業務の効率化につながるという。

基本的に公開されている財務情報を使用する。「学習の方法に様々な工夫を施すことで、監査実務に用いることができる精度を担保している」(トーマツ)という。

2022年からトーマツの不正分析の専門家が同システムを活用していたが、AIの精度を高めたうえで今年9月から実際の監査にあたる会計士が直接使えるようにする。23年度決算の監査で100社程度の活用をめざす。

この10年間で上場企業数は約4000社と1割増えた。東京商工リサーチによると上場企業による不適切会計は22年度に55社で10年で2倍の水準に達している。早期の不正発見のため監査手続きは増加し1社あたりの監査時間は1割強増えた。

会計士の登録者は23年3月末時点で3万4400人と10年前から38%増えているが、監査法人所属の会計士の割合は10年前の51%から直近で41%まで低下。多忙さなどを嫌気してコンサルティング会社や事業会社で働く会計士が増えている。AI監査は業務の効率化につながるだけでなく、会計士の働き方改革につながる可能性もある。

他の監査法人でもAIを活用した取り組みが広がる。あずさ監査法人は、加盟先の大手会計事務所KPMGインターナショナルが提携したカナダのAI企業の技術をとり入れる。顧客の仕入れや販売などの取引データ、お金やモノの動きを勘定科目で記録した仕訳データなど大量の財務関連データから通常と異なる動きを捉える。

23年度決算の監査から50〜100社で使う。先行導入したKPMGの米国やカナダでは顧客の売上高データを請求書などと突き合わせる作業を80%以上減らせた例がある。

EY新日本監査法人は監査先の企業のシステムと連携して、会計データの誤りや不正の可能性をAIで自動検知する監査を本格的に始めた。企業にその都度依頼するのでなく週次や月次などのあらかじめ決めた頻度で自動的にデータを受け取り分析。不正の早期発見につなげる。26年6月末までに100社への導入をめざす。

注目が集まる生成AIの利用も動き出す。あずさは8月中にも「チャットGPT」の活用を始める。まずは会計士が会計監査の専門知識を確認したり、顧客企業の発表情報が監査上重要か判断したりするのに使う。今後は仕訳分析にも利用する。業界では「将来は生成AIで監査報告書の素案まで自動で作れるようになる」(PwCあらた監査法人の久保田正崇執行役副代表)との見方もある。

理化学研究所が日本公認会計士協会の協力を受け手掛けた22年発表の調査によると、監査現場の進捗管理や取りまとめなどを担う現場責任者の各業務はAIの活用で10年後に平均で35%の時間短縮につながる可能性があるという。特に定型的な監査手続きは70%の減少、監査契約時のリスク評価は42%の減少と期待される効果が大きい。監査へのAI活用については、法的に定めたルールはなく、日本公認会計士協会でもガイドラインなどを設けていない。

AIの活用によって監査法人の事業領域も広がりそうだ。温暖化ガスや男女間賃金格差といったサステナビリティー(持続可能性)情報も今後は情報の確かさに「お墨付き」を与える保証業務の需要が見込まれる。AI監査で大量データを扱うノウハウを培えば「データに信頼性を与える」という仕組みを幅広い分野に生かせる。

(企業財務エディター 森国司)

(日本経済新聞)

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