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ネット時代に「人には人」 JPモルガンが新型300店 支店、地域のつながり重視 2023/09/27


ガラス張りの会議スペースは地域住民の誰でも利用できる

米銀最大手のJPモルガン・チェースが支店「チェース」の再拡大に乗り出している。他の大手銀と同様に支店網の統廃合を進めてきたが、年間約130店の積極出店で近く閉店数を出店数が上回る見通しだ。ニューヨーク市のハーレム地区の店舗を訪ねると、その戦略が見えてきた。

外観は通常の銀行の支店だが、店内に足を踏み入れると一風異なる。現代的なデザインのソファが置かれ、子供の遊びスペースもある。銀行員と相談できるブースは開放的なつくりだ。

この店舗は2019年半ばに、JPモルガンが地域の共同体との関わりを深めることを目的に始めた新型支店「コミュニティーブランチ(センター)」の1号店だ。低所得層が多く住む地域や、有色人種の多い地域など支店網が手薄だった場所に出店している。既存店の改装などを通じ、現在は全米に約300店展開する。

JPモルガンはリテール分野で約4000万人の顧客を有する最大手銀だ。今年6月末時点の店舗数は約4870店。大都市では当たり前のように目にするが、中心部を少し外れればその存在は「少数派」となる。

ハーレムは黒人やヒスパニック系など有色人種が多いことで知られる。大銀行は「白人中心のエリート集団」との見方も強く、住民から縁遠い存在とみられている場所でビジネスを拡大するのは容易ではない。

キーパーソンとなるのがコミュニティーマネジャーだ。預金集めや融資などで数値目標を追う支店長(ブランチマネジャー)とは一線を画す。

ハーレムの店舗のコミュニティーマネジャー、ロッキー・チョードリー氏は「何よりもまず、真のつながりを持つことに重点を置く」と話す。同氏は地元住民向けに、家計や信用管理などに関するワークショップを毎週開催している。中小企業の経営を支援するレクチャーも実施する。

「住民が銀行でお金の話をすることに抵抗がなくなるよう、金融教育の支援者として私は支店にいる」。顧客から金融商品の相談をしたいと持ちかけられたら、支店の営業担当者につなぐ。

コミュニティーブランチは収益面でも重要な役割を負っている。JPモルガンによると、コミュニティーブランチでは従来型の支店と比べ、当座預金の開設数が20%、法人向けクレジットカードの開設数は50%増えた。

モバイルバンキングが普及し、支店の重要性は薄れたかのようにみえる。「22年に我々の顧客の3分の2が支店を訪れた。この傾向は世代を問わない。複雑な取引について相談したいのだ」。消費者部門を統括するジェニファー・ロバーツ氏は5月の投資家説明会でこう強調した。デジタルが普及するなかでも「人には人が必要だ」。

(大島有美子)

(日本経済新聞)

JPモルガン、支店再拡大 「チェース」で年120~130店ペース、預金確保へ顧客と接点 2023/07/14

【ニューヨーク=大島有美子】米銀最大手のJPモルガン・チェースが支店網を再拡大する。急ピッチな金利上昇で利回りの高い金融商品へ預金が流出するなか、粘着性の強い預金の重要性は増す。「チェース」ブランドで展開する支店を増やし中小・個人との接点を深める。

店舗拡大戦略を担当するマネジング・ディレクターのラクエル・オーデン氏と、地域のコミュニティーや事業開発を担当する同ディードラ・ポルシェ氏が日本経済新聞の取材で明らかにした。

2022年は114店を新規出店しており、今後は年120~130店出す。18年時点での出店地域は23州だったが、18年以降全米をほぼ網羅する48州に広げた。直近5年間では650店超を出店。新規進出地域を中心に今後も出店する。

支店網の維持はコストが重い。デジタルシフトに伴ってJPモルガンの全支店数は13年末(5630店)をピークに9年連続で減少した。22年末の支店数は4787店でピーク時より15%減った。統廃合は続けるが、出店増が続くため全支店数は小幅な増加に向かう。

JPモルガンのリテール顧客は約4000万人で、うち85%の客がデジタルバンクと併用する。オーデン氏は「顧客はあらゆる利用可能な形式を望む。利便性を第一に考えると、支店は必要だ」と話す。「人口や学生数の増加など、地域ごとにつぶさに顧客行動をデータ分析」し、人工知能(AI)も活用しつつ出店網を構築する。

ニューヨーク市のハーレム地区にあるチェースの支店。昼下がりにビジネス客や手押し車を押す買い物客などが頻繁に出入りしていた。ガラス張りの会議室は道路に面しイベント空間も備える。

「常に地域の人の声を聞くことに重点を置いている」(支店のコミュニティーマネジャー、ロッキー・チャウダリー氏)。不動産価格の高騰で、地元のNPOなどが会議室を持てないといった事情を聞き取り、無料で貸し出している。

JPモルガンは19年から「コミュニティーブランチ」と呼ぶ地域密着型の支店を展開し始めた。ハーレムの店舗が1号店で、現状で約300店ある。新規出店の3割を中低所得層が多く住む地域に振り向ける方向だ。

店舗では地元企業の経営者を集めたワークショップを開いたり、NPOと組み金融教育を提供したりする。顧客以外も利用でき「気軽に店を訪ね、自身のビジネスに役立つ情報を得られるようにする」(ポルシェ氏)。支店の従業員の8割は地元の人を採用する。

「チェースは大きなブランドだが、新規出店州の多くでは存在感が薄かった」(オーデン氏)。地域密着店では通常の支店と比べ、当座預金口座の開設が20%程度増え、法人向けクレジットカードの口座開設数は5割増えた。「地元の銀行のように捉えてもらうことで信頼を築く」(同)。

米連邦預金保険公社(FDIC)によると、全米の銀行の支店数は減少の一途をたどってきた。22年末は前年比2%減の約7万1000店となり、10年前と比べて17%減った。支店網の減少は、金融包摂を妨げるとして民主党左派議員の批判の対象にもなっている。

ただ、この流れには変化の兆しがある。米連邦準備理事会(FRB)の利上げで、銀行預金はより金利に敏感なMMF(マネー・マーケット・ファンド)などに流れた。SNS(交流サイト)を通じた信用不安の拡大などもあり、今春は急速な預金流出が米地銀の破綻につながった。

米銀大手関係者からは「粘着性の高い預金を確保するには、支店を開き、教育資金の提供など小さなディールを積み重ねていくことが重要だ」との声が出ている。融資や投資の専門家をそろえた支店を拡大させ、顧客の成長に合わせた金融サービスを提供することで、大企業や富裕層ビジネスにつなげる端緒とする。

大手銀では、バンク・オブ・アメリカが6月、26年にかけて南部アラバマ州やルイジアナ州など4州に新たに進出すると発表した。進出拡大により、全米39州で支店網を展開することになる。リリースでは「デジタルバンクの利用客は多いが、複雑な金融ニーズは支店で話して対応することが多い」(店舗担当幹部)と支店拡大の理由を説明した。

(日本経済新聞)

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