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ネット銀の預金、5年で2倍 高金利・ポイント武器に 2023/05/30

ネット専業銀行の預金量が急増している。2023年3月末の主要6行合計の残高は約29兆円と5年前に比べ倍増した。スマートフォンで完結する利便性や証券口座との連携などで、店舗にこだわらない若い世代を引き寄せている。メガバンクの100〜200倍になる金利水準や取引で得られるポイントも人気の理由だ。預金規模はすでに地銀並みに成長している。

預金規模1兆円超の主要6行(楽天銀行、住信SBIネット銀行、ソニー銀行、auじぶん銀行、PayPay銀行、大和ネクスト銀行)の23年3月期決算をもとに集計した。純利益は楽天銀と大和ネクスト銀が前の期比4割増と大きく増え、ほかの4行も1〜2割の増益となった。

6行の預金残高の合計は約29兆円で1年前に比べ11%増えた。全国銀行協会によれば全国の大手銀行や地銀など計110行の実質預金の伸び率は3%。110行で908兆円のため規模は大きく異なるが、ネット銀の伸び率は3倍超に達する。6行の預金残高の平均は4.8兆円で、全銀協の統計をもとに計算した地銀62行の平均(5.2兆円)に迫る。

首位の楽天銀は9.1兆円と、京都銀行や七十七銀行など地銀上位行を上回る。前年比の伸び率は18%で、5年前と比べると4倍超だ。口座の数は1373万にのぼる。給与・賞与の受け取りや口座振替で使われる「メイン口座」の比率が上昇しており、3月時点では31%となった。

楽天銀は楽天グループの経済圏の活用で口座数を増やしてきた。銀行口座と証券口座を連携すると、普通預金の金利が最大0.1%とメガバンクの普通預金金利の100倍になる。

楽天銀よりも高い金利で預金者を集めるのがauじぶん銀だ。直近1年の預金の伸び率は20%と、6行の中で最も高い。証券やクレジットカードなどグループ内の金融サービスと連携すればメガバンクの200倍の最大0.2%の金利がつく。

銀行取引を続けるうちにたまるポイントも魅力だ。楽天銀行を使うことで、ネット通販の楽天市場でのポイント還元率上昇につながる。さらに、他行宛ての振り込みやATMの入出金を1回するたびに、取引状況に応じて最大3ポイントたまる。

楽天カードでの基本的なポイント還元率が1%であることを考えると、取引で付く3ポイントは300円分の買い物をした際に得られるポイントに相当する。それほど大きくはないが、ポイントをこつこつと集めたい利用者には魅力的に映る。楽天カードの口座振替では1件ごとに最大9ポイントたまる。

auじぶん銀行も取引で「Pontaポイント」がたまる。入金や口座振替などで取引状況に応じてそれぞれ月に最大15ポイントたまる。他行宛て振込手数料が最大月15回無料になる特典とあわせ、顧客を開拓する。

デジタルに慣れた世代は店舗にこだわらず、金利やポイントなどの「お得さ」やスマホアプリの操作のしやすさを重視する。楽天銀と住信SBI銀、PayPay銀の顧客は、30代以下が4割を占める。40代も含めると7割に達する。

ネット銀は外貨預金などの運用サービスの操作性や店舗を持たない低コストを武器に競争力のある金利を設定し、手数料収入も稼ぐ。ソニー銀は積み立てた外貨を海外でそのまま使えるサービスで利便性を高めている。大和ネクスト銀も外貨預金が人気だ。

ネット銀は集めた預金を主に住宅ローンで運用している。住信SBI銀の住宅ローン市場でのシェアは6%を超え、大手銀を含めてもトップクラスだ。代理店や人工知能(AI)による審査を駆使し、25年3月期にはシェア10%を目指す。auじぶん銀やソニー銀も住宅ローンで攻勢をかける。信用力の高い優良顧客に低い金利で融資するビジネスモデルだ。

足元では融資先の多様化も進む。楽天銀は投資用マンションローンの貸出金が23年3月期に前の期比8割増えた。楽天銀やPayPay銀、GMOあおぞらネット銀行は中小向けの法人融資にも力を入れる。

帝国データバンクによれば、22年時点で企業の28%がネット銀と取引している。創業から間もない企業で比率が高く、業種別には小売りが多い。貸出金の増加もあり、ネット銀各行は預金集めに今後も注力する方針だ。

急速に規模を拡大するネット銀だが、競争は激化が見込まれる。三井住友フィナンシャルグループ(FG)は3月に始めたスマホ上の総合金融サービス「オリーブ」で個人との取引の軸足を店舗からスマホに移す。ポイントや振込手数料の優遇なども駆使し、国内金利の上昇を見越して預金を集めにかかる。

「デジタルはネット系に比べて劣後している」(木原正裕社長)と認めるみずほFGも、アプリなどのデジタル分野の投資を進める考えだ。大手銀がスマホサービスに主戦場を移しつつあることで、いまは大手銀の顧客を切り崩す立場のネット銀が将来、守勢に転じる可能性もある。

(北川開)

(日本経済新聞)

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