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バフェット流、インフレに解 値上げ・資本効率で選別 2022/02/28

ウクライナ危機とインフレ高進への警戒がマーケットを覆っている。先の見えない時代に、著名投資家ウォーレン・バフェット氏は何を思うのか。世界の市場関係者が注目する「株主への手紙」が26日、公表された。今年のメッセージは「銘柄を選ぶのではなく、ビジネスを選べ」。経験に裏打ちされたシンプルな言葉には、投資のヒントがちりばめられていた。

バフェット氏は今年の手紙で、2009年に米鉄道会社バーリントン・ノーザン・サンタフェ(現BNSF)を買収した経緯を明かした。バークシャー・ハザウェイの会合で米南部テキサス州に飛んだバフェット氏は、当時上場会社だったBNSFの本社が近くにあるとわかり、初めて訪問したという。金融危機後の景気後退に直面し、業績見通しは悪化。ウォール街は鉄道株に冷淡で、株式は売られていた。

初会合の翌日、バフェット氏は同社の経営トップに非上場化と完全買収を提案し、11日後に合意にこぎつけた。スピード決着は大株主としてBNSFの高い競争力を見抜いていたからこそ可能だった。同氏の見立て通り、BNSFの業績は回復し、21年12月期に過去最高益を更新した。手紙の中で「BNSFは100年後もバークシャーや我が国にとって重要な資産になる」と述べた。

企業を売り買いする商品(=銘柄)とみなさず、ビジネスオーナーの意識を持つことが大切――。バフェット氏はこう説く。持ち分が少数にとどまる上場株運用でも意識は変わらない。今回の手紙で「永久保有」を宣言したBNSFと、上場株の投資先アップルを同列に語ったのも、こうした考え方からだ。長期オーナーの視点に立てば、持続的な競争優位性の有無が極めて重要になる。

バフェット氏のスタイルは改めて評価されている。バークシャー株は年初から7%上昇し、史上最高値圏で推移する。米運用会社スミード・キャピタル・マネジメント創業者で、1991年からバークシャー株を保有するビル・スミード氏は「インフレ耐性への期待が大きい」と話す。

今年92歳になるバフェット氏は人生の大半でインフレを経験している。11年の手紙では、投資において将来の購買力が落ちる可能性がリスクと説いた。つまりインフレに負けない投資を強く意識している。ビジネスオーナーとして投資先を見極める際も、インフレに強い企業を選んできた。

1970年代、物価高と不景気が併存するスタグフレーションが米国を襲った。ダウ工業株30種平均は低迷し、73年につけた高値を上回れない状況が続いた。米誌ビジネスウイークは79年に「株式の死」と題した特集を組んだ。一方、65~80年にバークシャーの株価は約20倍になった。

バフェット氏は81年の手紙でインフレに強い企業の条件を紹介した。(1)市場占有率や販売量が大きく下がる恐れなしに、容易に価格を上げられる(2)資本を少し追加投入するだけで、事業の規模を拡大できる――の2つだ。バークシャーの現保有企業をみると、今もこうした選別条件に沿っていることが分かる。

北米最大規模の貨物鉄道BNSFは(1)にあたる。バフェット氏は今年の手紙で「もしBNSFが運ぶ重要な製品がトラックで運ばれるようになれば、米国の二酸化炭素排出量は急増する」と指摘した。鉄道を使ったエコ輸送の需要は増えると踏んでいるわけだ。値上げも視野に入るだろう。

(1)と(2)を兼ね備えるのは、上場株最大の投資先であるアップルだ。商品力とブランド力で顧客を囲い込んでいる。生産拠点を持たず、設備投資は少ない。インフレ期は投資額が膨らみやすいが、その心配がない。余剰資金を自社株買いに回しており、バークシャーの株式持ち分は追加購入なしで1年前の5.39%から5.55%に高まった。

株式市場は緩やかな景気拡大と低インフレの併存に慣れきっていた。キャシー・ウッド氏率いるARKインベストメント・マネジメントの興隆は時代を象徴する。破壊的イノベーションへの投資を掲げ、キャッシュフローが赤字でも将来性のある企業は組み込んだ。低金利を前提にした手法とも言え、バフェット氏とは正反対のスタイルだ。

潮目は変化している。ARKの主力ETFはピークから約6割下落する一方、バークシャーは着実に株価を伸ばし、20年以降のパフォーマンス差はなくなった。「強気相場は口先だけの強気を生む」。バフェット氏は今年の手紙でこう記し、財務的な根拠のない投資をいさめた。オーナーの視点があれば、明るい未来だけでなく収益性にも目を向けるはずだ。賢人の言葉は、長期投資の基本に立ち返らせてくれる。

(ニューヨーク=宮本岳則)

(日本経済新聞)

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