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ファンド投資先の破綻増加 負債総額、倒産企業全体の4割 コロナ・物価高で計画達成難しく 2023/06/02

ファンドの投資先企業の破綻が相次いでいる。2023年に入って国内大手ファンド投資先の飲食チェーンやスマートフォンメーカーが法的整理に入った。4月までに倒産した企業全体の負債総額約5000億円のうち、ファンドの投資先や過去に投資していた企業の負債総額は約4割を占める。ファンド投資先はもともと経営基盤の弱い企業が多いことに加え、新型コロナウイルス禍や物価高が直撃し、出資時の事業計画を達成するのが難しくなった。

国内大手ファンドのポラリス・キャピタル・グループ投資先のFCNT(神奈川県大和市)など3社は高齢者向け端末「らくらくホン」などで知られる。円安で海外からの部材などの仕入れ価格が高騰し、資金繰りが悪化した。ポラリスが2018年に富士通から買収した当時の価格は推定で400億円超だった。法的整理でポラリスの出資分の価値はゼロとなる見通しだ。

22年半ば以降、ファンド投資先の破綻が目立つ。同年6月には米KKR投資先の自動車部品メーカー、マレリホールディングス(HD、旧カルソニックカンセイ)が民事再生法を申請した。負債総額は約1兆円超。コロナ禍での部品需要の低下に加え、コロナ前の19年にイタリアの同業大手を買収した影響で過剰債務を抱えていた。

23年に入ってからも2月に国内系のユニゾン・キャピタル投資先の飲食チェーン、ダイナミクス(東京・中央)が破産を申請した。負債総額は100億円超だった。居酒屋やお好み焼き店を運営していたが、コロナ禍で2次会利用などが減ったことが響いた。スポンサーも見つからず、事業をたたむことを決断した。

過去にファンドの支援を受けた企業では、4月に不動産会社ユニゾホールディングスが民事再生法を申請した。同社は20年に米ファンドのローンスターと組んで株式を非公開化した。ローンスターへの資金返済のため保有不動産の売却を急いだことで収益力が落ち込んだことが響いた。

ファンド投資先の破綻は件数こそ少ないものの、1件あたりの負債が大きい傾向がある。東京商工リサーチによると、1~4月の企業倒産の負債額は合計で約5000億円。このうちファンドが関わっていた企業は4割程度を占める。前年同期は全体の負債額合計約3900億円に対し、ファンド関連は数%にとどまっていた。

ファンド投資先の破綻が増えている理由は主に2つだ。1つ目はそもそも投資時点から企業の事業基盤が弱いケースが多いことがある。ファンド傘下に入った企業はもともと後継者不足や企業グループ内で十分に資金配分されていないなど経営課題を抱えている場合が大半だ。

ファンドはこうした課題を3~5年かけて解決し、自走できる体制に変える役割を担う。直近で破綻した企業はいずれも10年代後半にファンドが買収した。その後コロナ禍や急激なインフレなど事業環境が大きく変わり、買収当時の成長計画が外れた。

国内ファンド幹部は「プロといえどもコロナ禍やインフレを予想して備えるのは難しく、ファンド各社とも乗り越えるのに大変苦労している」と語る。

理由のもう一つが、ファンドによる買収を経て企業の負債が膨らんでいることがある。ファンドは買収時にLBO(レバレッジド・バイアウト)ローンと呼ぶ、対象企業の資産を担保にしたノンリコース(非遡及型)の借入金を調達する。

投資した当初から負債が多いなかで企業の収益力が落ち込むと、経営は一段と厳しくなる。ファンドが追加資金を投じて救済する場合がある一方、立て直しが厳しいと判断すれば見切りをつけることになる。

海外でもファンド投資先の破綻が相次いでいる。2月には米TPGキャピタル投資先で米ペット用品大手のインディペンデント・ペット・パートナーズが日本の民事再生法に相当する米連邦破産法11条(チャプター11)を申請した。5月にはKKR投資先で医療関連サービスの米エンビジョン・ヘルスケアも同じくチャプター11を申請した。

08年のリーマン・ショック後にもファンド投資先の破綻が目立った。10年には米カーライル投資先でPHS大手のウィルコムが会社更生法を申請し、負債総額は約2000億円にのぼった。その後は倒産件数全体の減少に伴い、ファンド投資先の破綻も減っていた。

コロナ下の公的支援で低水準に抑えられていた倒産件数が徐々に増えるなか、ファンド投資先の大型倒産が目立っている。

投資で全戦全勝は望むべくもないものの、ファンド投資先の破綻が増えれば業界全体へのイメージ悪化につながりかねない。国内の有力機関投資家は「ファンド各社の運用成績は二極化しており、今後新たなファンドを立ち上げる際には厳しく選別したい」と指摘する。

過去十数年にわたり拡大が続いてきたファンド業界でも淘汰の波が起きる可能性がある。

(和田大蔵)

(日本経済新聞)

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