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ブラックストーンCEO「物価2%目標の達成、不況伴う」 2022/09/17

世界最大規模の投資会社ブラックストーン・グループが守り重視に傾いている。スティーブン・シュワルツマン最高経営責任者(CEO)は日本経済新聞のインタビューに応じ、米連邦準備理事会(FRB)の金融政策について「不況なしでインフレ率2%目標を達成することは難しい」との認識を示した。今後のリスクとしてベンチャー投資と暗号資産(仮想通貨)の価値下落を挙げた。

米国の景気後退入りは「FRB次第」
――多くの投資家は米金融政策や経済の行方を巡って神経質になっています。現時点で米国の景気後退入りは想定してますか。

「答えるのが難しい質問だ。米国経済はまだかなり強い。本当に経済の成長を止めるには、FRBが大幅な金利引き上げに踏み切る必要がある。景気後退に陥るかどうかは今後の展開でわかってくるだろう。政策金利の引き上げと保有債券の圧縮ペースに注目している」

「FRBはインフレ率を下げるために経済を減速させようとしている。本気でインフレ率2%を目指すのであれば、不況なしで達成するのは非常に難しいだろう。彼らがそれをやろうとしているのか見極めなければならない。インフレ率を3%や4%にするのであれば、不況にならずにすむかもしれない。FRB次第だ」

――ブラックストーンは事業買収から不動産投資、企業向け融資まで幅広く手掛けています。不確実性の高い環境でどのように投資を進めていきますか。

「投資というのは常に不確実なものだ。世界は変化し続けている。中央銀行が景気減速を示唆するのだから、これから何が起こるか明らかだ。重要なのは今起きている減速を理解し、今後1〜2年の間で事業に何が起きるのか予想することだ」

「通常、市場や経済が軟化すると、資産の売り手はすべてが素晴らしかったころの古い価値にこだわる。環境がいつの間にか変わってしまったことに気づくまでには通常1年から1年半かかる。私たちは投資に非常に慎重になっていて、価格調整を待つようにしている。何をするにも忍耐が必要だ」。

新たなテーマ追求、新薬候補にも投資
――運用総資産は目標とする「26年までに1兆ドル(約140兆円)」を前倒しで達成しそうです。成長を続けるために最も重要な要素は何ですか。

「まず顧客に対して優れたリターンを提供し、資産を守ることだ。投資の際には常にダウンサイドに敏感になっている。マクロ的に物事がうまくいっていないときには、顧客の資金を守ることが最優先になる」

「さらに私たちは常に新しいものを探している。トレンドというものは永遠に続くものではない。たえず今のトレンドの評価を行い、顧客が投資すべき魅力的で新しいものがないか考えている」

――投資先として有望なトレンドについて教えてください。

「消費行動のインターネット移行が続いており、大きな転機を迎えている。例えば私たちは世界最大の物流施設オーナーになった。米国の物流倉庫の賃料は、インフレ率を大幅に上回る勢いで伸びている。倉庫への投資は大きなトレンドに乗るための一つの方法といえる」

「次に住宅用不動産の建築不足だ。過去10~15年の間、欧米先進国で新築された住宅やアパートの数は、人口増加による需要に比べて、ほんのわずかなものだった。供給不足が賃貸マンションなどに非常に興味深い投資機会を生む」

「バイオテクノロジーや製薬業界の拡大で、臨床検査室のスペースも不足しており、賃料はインフレ率をはるかに上回る勢いで上昇している。医療技術革新の大きな流れの一部だ。第3相(フェーズ3)臨床試験中の新薬への投資も手掛けている」

日本の個人投資家マネーを取り込み
――アジアでもトレンドを捉えた投資は可能ですか。

「先日、インドで大きな利益を得た案件があった。投資当初は伝統的な自動車部品メーカーだったが、別の会社と合併させた。両社の能力と専門性を生かし、インド最大の電気自動車(EV)向けサプライヤーとなった。世界最大のEVメーカーに重要な部品を供給している」

「この事例はエネルギー転換といったテーマに投資することや、インドへの投資について、色々な示唆を与えてくれる。インド市場を理解するのは容易ではないが、私たちは結果を残している。物流やテクノロジー関連など、世界的な投資テーマに沿った形で、インドにより多くの資金を投入していく」

――年金基金など大手機関投資家はすでに未公開株や不動産に多額の運用資金を振り向けています。さらに受託資産を伸ばす余地はありますか。

「新たな顧客チャネルを開拓し、運用資産を増やす。日本では野村証券のような大手金融機関と提携し、個人が初めて当社の不動産投資プラットフォームに投資できるようにした。(投資会社が企業に直接融資する)プライベートクレジットの商品も提供したいと考えている。米国で成功したプロジェクトを日本でも積極展開する」

「世界的にみても、私たちは個人投資家から2330億ドルを調達しており、他の投資会社に比べて圧倒的に大きい。さらなる拡大のチャンスはある」

シャドーバンクよりVCや仮想通貨にリスク
――商業銀行に代わってノンバンクが企業に資金を提供する「シャドーバンク(影の銀行)」の拡大に懸念する向きもあります。プライベートクレジット分野で過剰債務リスクはありませんか。

「私たちは自分たちをシャドーバンクと呼んでいない。企業にカネを貸し付ける行為であり、基本的に返済順位の高い上位債権(シニアデット)だ。企業価値に対する負債の比率を40%程度に抑えており、かなり低いレバレッジといえる。融資先は不況期でも元本と金利を支払う能力があるはずだ」

「プライベートクレジットは銀行に頼むより、迅速に融資を受けられる手段として人気を集めている。もちろん銀行システムは重要だが、(融資条件など)すぐに値決めをできるわけではない。銀行は通常、ローン債権を別の金融機関に売却するからだ。私たちの直接融資は、投資家からあらかじめ集めたカネを提供するだけだ」

「歴史的にみて、どんな企業であってもシニアデットが問題になるケースは非常に少ない。懸念は本当に見当違いだと思っている」

――とはいえ米国の企業債務は08年のリーマン危機時を上回っています。どこに過剰なレバレッジが存在するのでしょうか。

「リスクは負債側よりも株式側にあると思っている。ベンチャーキャピタル(VC)投資先の価値は急激に下がっている。仮想通貨への投資もVCの取引と同様にリスクは高まっている」

Stephen Schwarzman 米リーマン・ブラザーズ勤務などを経て1985年にブラックストーンを創業。運用資産で1兆ドルに迫る世界最大規模のオルタナティブ(代替)投資会社に育てた。企業買収から不動産投資まで幅広く手掛ける。米政界や中国要人との密接な関係でも知られる。
(聞き手はニューヨーク=宮本岳則)

(日本経済新聞)

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