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ヘッジファンド運用、1~6月過去最低 淘汰始まる 2022/07/28

ヘッジファンドの運用収益が悪化している。全体の成績を反映する指数の2022年1~6月の騰落率はマイナス5.6%となり、1~6月として過去最低となった。世界的な金融引き締めの流れを受け、世界で株式や債券が同時安となったことが響いた。相場環境に左右されずに収益を狙うヘッジファンドも成績が悪化し、投資家の資金の受け皿になりきれなかった。

米ヘッジファンド・リサーチ(HFR)が算出するヘッジファンド総合指数は1~6月に5.6%下落し、比較可能な1990年以降で1~6月として最低だった。株式ヘッジ戦略が12%、企業のM&A(合併・買収)などに収益機会を見いだす「イベントドリブン」戦略が7%、それぞれ下げた。

株式に投資する戦略では一般的にショート(空売り)を取り入れ、相場の下落局面でも安定した運用を目指す。ただ、ヘッジファンド調査会社アクシア・ジャパンの鷲尾学社長によると「株式ロング・ショート戦略ではベータ(市場連動性)が0.6~0.7と高く、相場の下落で苦戦している」という。また「この10年程度、株価の上昇トレンドが続いたため、空売りをメインとするロング・ショートのファンドは廃業に追い込まれてしまった」(鷲尾氏)との指摘もある。

株式を対象とするヘッジファンドのなかでは、市場の価格変動に対して中立を目指す「マーケット・ニュートラル」戦略の指数が1~6月に0.3%下落と最も下げが小さかった。同戦略を得意とするエピック・パートナーズ・インベストメンツの武英松代表取締役は「この半年は、グロース(成長)株の値動きの波を読めたかどうかで成績の明暗が分かれただろう」と振り返る。

ロング・ショート戦略の米有力ヘッジファンドのメルビン・キャピタル・マネジメントは5月、顧客資金の返還を決めた。ゲームストップ株の空売りで名が知られ、21年に個人投資家が一斉に買いを入れたことで巨額の損失を計上。メルビンはハイテク株の保有が多く、この上期のハイテク株安で打撃を受けたとみられる。6月中旬には、ハイテク株に投資する米タイガー・レガタス・キャピタル・マネジメントの閉鎖が伝わった。

7月にはシンガポール拠点の暗号資産(仮想通貨)ヘッジファンド、スリー・アローズ・キャピタルが米破産法の適用を申請した。HFRの総合指数には含まれていないが、仮想通貨を取引対象とするファンドのパフォーマンスを示す「仮想通貨指数」は上期に48%下落した。

一方、好調だったのは為替や金利、商品などあらゆる資産を対象とするマクロ戦略(9%上昇)だ。上期は商品高やドル高などの基調が続き、収益機会となったとみられる。ウィズ・パートナーズの石見直樹・債券運用最高投資責任者(CIO)によると「マクロ戦略のヘッジファンドは、久しぶりに為替や金利が一方向に動いていたので収益を取りに行ったようだ」という。

英ヘッジファンド大手マン・グループが手掛けるトレンドフォロー型の旗艦戦略「AHL・ディバーシファイド」は17%高と好調だった。同ファンドは様々な資産の400の市場からアルゴリズムでトレンドを見つけ、先物やオプションなどを使ってポートフォリオを構築する。

HFRによると、ヘッジファンド全体では上期に77億ドルの資金流出超過に転じた。21年には151億ドルの流入超過だった。マイナスの収益が続けば、資金の出し手からの解約が増える懸念はある。「過去の金融危機時ほどレバレッジを効かせていないため、ヘッジファンドの破綻が金融システム不安などにつながる可能性は足元では高くない」(市場関係者)というが、取引先の金融機関に損失を与えかねない。

長く続いた金融緩和に伴う上昇基調の中ではファンドの運用手法のまずさは覆い隠されてきた。金融引き締めにより相場環境が変わり、運用の巧拙が表面化するようになった。伝統資産の相場の不透明感が高いなか、投資家の資金の受け皿となれるのか、運用手腕が問われる局面に入っている。(五味梨緒奈)

(日本経済新聞)

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