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マネー収縮、世界に試練 世界の債務が2年で43兆ドル増 2022/03/18

米連邦準備理事会(FRB)が利上げに踏み切った。大規模緩和で新型コロナウイルス危機に立ち向かってきたが、予期せぬ供給制約で一転して高インフレに対処が必要になった。世界はロシアのウクライナ侵攻という新たな危機下にもあり、国際秩序の維持には経済の安定が絶対条件となる。

「米経済は非常に強い。物価の安定を回復したい」。FRBのパウエル議長は16日の記者会見でコロナ対策からの政策転換を宣言した。2020年3月、コロナ禍に直面した世界経済は都市封鎖などで大混乱に陥った。FRBは危機対応としてゼロ金利と量的緩和を導入。米国債などを過去例のないペースで大量購入し、保有資産を2年で4兆ドルから9兆ドルへと倍増させた。

巨額の緩和マネーは財政出動や企業投資のテコとなった。政府、企業、家計を合わせた世界の債務残高は、20年3月末の260兆ドルから21年末に303兆ドルに増大。増加幅は世界の国内総生産(GDP)の半分に当たる43兆ドルで、新興国だけでも27%増えた。マネーを膨らませて景気の底割れをなんとか防いできたのが、コロナ危機下の世界経済だったといえる。

FRBの利上げ開始は、この緩和マネーの巻き戻しとなる。米ダウ工業株30種平均はこの2年で5割超上昇し、世界の株式時価総額を60%押し上げた。米企業の破産申請件数は4割減り、米住宅販売価格も2年で2割超上がった。想定外だったのは、コロナ禍による供給制約で半導体不足などに陥り、インフレ率が8%弱と40年ぶりの水準まで上昇したことだ。

インフレ退治に転じるFRBは、今回を含めて22年に7回の利上げを想定し、さらに保有資産を減らす量的引き締め(QT)にも着手する。早ければ5月に計画を決める構えだ。米ゴールドマン・サックスはFRBの資産が今後3年で約3割少ない6兆ドルに減るとみる。約15%しか減らせなかった17~19年の前回QTと比べ、強い引き締めとなる。

問題はFRBの金融引き締めに世界経済が耐えられるかだ。FRBは23年には3%弱まで政策金利を引き上げる考えで、過大債務の国も企業も利払い負担が増す。信用力の低い企業が発行する低格付け債は利回りが米国債よりも4%も上乗せされ、その幅はわずか2カ月で1%超も拡大した。

新興国の資本流出も避けられず、スリランカは外貨準備が急減して7日に最大10%強の通貨切り下げを迫られた。ナイジェリアは最近、輸出企業に求めている外貨による納税を猶予し、自国通貨ナイラで払う特例を認めた。ドル不足が広がる。

約40年前もイラン革命によって原油価格が高騰し、世界的に急激なインフレとなった。1979年にFRB議長に就いたボルカー氏は約20%に政策金利を引き上げて物価高を根絶したが、80年代の米国の不況と中南米の債務危機を招いた。

70~80年代に3%台だった米国の潜在成長率は足元で「1.75%程度」(パウエル氏)。経済の地力は弱まった。インフレ対応で後手に回ったFRBが想定よりきつい引き締めを迫られるとの見方から「スタグフレーション(景気停滞とインフレの併存)につながる可能性が高い」(サマーズ元財務長官)との懸念さえくすぶる。

ロシアによるウクライナ侵攻は、世界景気の先行きへの不安をかつてなく強める。経済の繁栄は自由や人権、ルールに価値を置く民主主義の土台だ。ロシアなどの世界秩序への挑戦を封じるには、経済制裁などの副作用を甘受できる民主主義陣営の経済力があってこそとなる。パウエル氏は「経済成長を持続させることに全力を尽くす」と誓った。秩序の土台を固め直す局面を迎えた。

(日本経済新聞)

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