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金融&M&A業界最新情報

Financial & M&A Industry Updates

メガ銀、デジタル世代争奪 みずほ、楽天証券に出資 ネット企業に急接近 2022/10/06

みずほフィナンシャルグループ(FG)が楽天証券に出資する方針を固めたことで、メガバンクとネット企業の融合が一段と加速する。金融のデジタル技術が進化して新勢力が台頭するなか、メガバンクはネット企業との連携でデジタルネーティブ世代の取り込みを急ぐ。メガバンクにのみ込まれまいとしたたかに立ち回るネット企業との駆け引きも活発だ。

「(ネット上でサービス基盤を提供する)プラットフォーマーの経済圏は面で押さえる」(みずほ首脳)。みずほはソフトバンクとの共同出資会社PayPay証券に49%出資し、LINEとも銀行開業を目指している。さらに楽天証券への出資を固めたことで、デジタル経済圏に点ではなく「面」で接近する戦略が完成に一歩近づく。

みずほを動かしたのが、金融の主戦場がネットに変わりつつあることへの危機感だ。2001年に開業した楽天銀行の口座数は1300万を超えた。PayPayやLINEといった大手プラットフォーマーも決済やSNS(交流サイト)から金融サービスまで若年層に深く食い込み、無視できなくなっていた。

6月に三井住友FGがSBIホールディングスへの出資を発表したことも、みずほの焦りを強めた。三井住友とSBIはスマホ世代の顧客に銀行、証券、カードなどの一体的な金融サービスを提供する準備を急いでいる。三井住友FGの太田純社長は「デジタルネーティブに対応するため徹底的にデジタル化を進める。だからこの分野で一番強いSBIと提携した」と語っていた。

メガバンクにとって、若いうちからスマホで資産形成に取り組む世代を取り込めるかは死活問題だ。グループ傘下の中核証券会社は高齢者や富裕層を中心に手厚いコンサルティングサービスを展開するが、若年層との取引は少ない。デジタルネーティブ世代の求めるデザイン、操作性でもネット証券に軍配が上がる。

三菱UFJFGは傘下のauカブコム証券を通して若年層への接近を図っている。21年12月にはスマホで幅広い金融商品を選んで投資できるプラットフォーム「マネーキャンバス」をグループをあげて立ち上げた。3メガバンクがデジタル経済圏への足場作りを競う状況となっていた。

メガバンクと組むネット企業もしたたかだ。楽天証券もSBIもメガバンクからの出資は1~2割にとどめ、主導権は渡さない構え。その一方で、大手銀行の手厚い顧客基盤へアクセスし、規制対応などのノウハウも取り込もうとしている。

メガバンクの信用力、資金力も魅力的だ。急速に口座数や預かり資産を増やすネット証券だが、激しい競争で収益環境は厳しい。楽天証券の経常利益も21年1~3月期の59億円が直近のピークで、22年4~6月期は36億円にとどまった。

投信販売で得る収益の落ち込みなどが理由だ。人気の指数連動型の投信は手数料が低い。ポイント還元の負担に耐えられず、楽天証券は4月にポイント付与率を一部引き下げた。政府は「貯蓄から投資」を後押しするが、手数料率の上限が決められているつみたてNISAの利益は薄い。

あるネット証券の関係者は「つみたてNISAは顧客獲得の入り口にはなるが、ほかの取引に誘導しないともうけにならない」とこぼす。

大手金融もネット企業もそれぞれの思惑で手を取り合い、金融地図は大きく変わりつつある。買い物から預金、決済、資産運用と切れ目のないサービスが提供できれば利便性も高まり、ポイント還元のメリットも得やすい。一度囲い込んだ顧客がなかなか離れないデジタル経済圏ではスピードが勝負を決める。メガバンクが将来も金融の中心であり続けるためには、フィンテック並みの身軽さも求められる。

(五艘志織、湯浅兼輔)

(日本経済新聞)

みずほ、楽天証券に2割出資へ ネットが金融の主戦場に 2022/10/05

みずほフィナンシャルグループ(FG)は傘下のみずほ証券を通じて楽天証券に出資する方針を固めた。株式の約2割を取得して持ち分法適用会社とする。取得金額は800億円規模とみられる。三井住友FGがSBIホールディングス(HD)に出資したのに続く動きで、メガバンクがネット証券などの取り込みを通じて、若者を中心としたデジタル経済圏を奪い合う構図が鮮明になってきた。

第三者割当増資などは実施せず、楽天グループが保有する楽天証券株をみずほ証券が買い取る。株式の取得は11月ごろになる見込み。みずほ側が役員を派遣することも検討している。両グループが最終調整中で、週内にも合意する見通しだ。

日本経済新聞の報道を受けてみずほFGと楽天グループは5日、「みずほ証券の楽天証券への出資を含めさまざまな提携の機会を検討していることは事実だが、現時点で決定した事実はない」とのコメントをそれぞれ出した。

楽天証券の顧客にみずほの対面サービスを紹介したり、みずほが引き受ける株式や債券を楽天証券で販売したりといった連携を視野に入れる。みずほ証券は対面でのコンサルティングや豊富な金融商品といった自らの強みと、若年層中心の顧客基盤という楽天証券の強みを融合させることで「貯蓄から投資へ」の流れを加速させる。

楽天証券は1999年に設立されたインターネット専業の証券会社。2022年6月には800万口座を超え、500万規模の野村証券を引き離す。口座数ではすでに国内最大規模で、みずほ証券と合わせた口座数は1000万規模になる見込みだ。

口座開設者の多くは30代以下で、これから資産を増やしていく資産形成層が多い。預かり資産も前年同期比3割近く伸びて16.5兆円となった。みずほ証券と合わせた規模は60兆円超。野村の約120兆円の半分程度となる。

高齢の富裕層への対面営業が中心だったみずほ証券にとって、楽天の顧客基盤は魅力的だ。みずほ証券はすでにPayPay証券にも出資している。電子商取引(EC)が基盤の楽天と決済が軸のPayPayの2つのデジタル経済圏に食い込み、金融の主戦場となりつつあるネット上でライバルよりも優位に立ちたい狙いがある。

大手金融グループによるデジタル企業の争奪戦は激しさを増している。メガバンクでは三井住友FGが6月にSBIHDに1割出資すると発表。三菱UFJFGはauカブコム証券と連携し、野村ホールディングスはLINEと組んでLINE証券を展開する。みずほにはSBIなど有力なネット証券を他社グループに取り込まれた焦りもあった。

楽天証券にとってもみずほの信用力と資金力は魅力的だ。SBI証券が23年度上期までに国内株の売買手数料などを無料化する方針を打ち出すなど、ネット証券の収益環境は厳しくなるばかり。楽天グループは携帯事業で収益が悪化し、銀行や証券といった金融ビジネスの中核子会社を上場させて資金を確保する方針を打ち出していた。

楽天グループは22年10月に楽天証券HDを設立。楽天証券と楽天投信投資顧問、暗号資産の楽天ウォレットの3社を傘下の連結子会社として再編した。今回、みずほ証券は楽天証券の普通株式の約2割を取得する。楽天グループは楽天証券HDの上場を目指している。

(日本経済新聞)

みずほ出資 裏に楽天苦境 楽天証券に800億円投資検討 三菱UFJ・大和は見送り 2022/10/07

みずほフィナンシャルグループ(FG)はおよそ800億円を投じて楽天証券に2割出資する方針を固めた。資産形成層である若者に強みを持つネット証券の雄、楽天証券にメガバンクの一角が触手を伸ばした。楽天グループは携帯事業の苦戦でキャッシュの流出が続き、早期に資金調達する必要に迫られていた。

打診は7月下旬

「楽天証券への出資に興味はありませんか」。7月下旬、楽天は国内の金融機関にこう打診した。声をかけられたのは三菱UFJFG、大和証券グループ本社、そしてみずほだった。

ネット証券の強化が課題の三菱UFJは51%以上の出資が難しいとみるや早々に見送った。すでにKDDIと共同出資のauカブコム証券を展開し、主導権を握れない少額出資は魅力的でないと判断した。

大和証券は対面営業を軸に置き、自前で店舗網を拡充している。もともと興味を示す可能性は低かったが、楽天の主幹事証券を務めるなど親密な関係にあるため、声をかけないわけにはいかなかったようだ。

みずほ内でも議論は割れていたようだ。「ネット証券は手数料が低く採算がとりにくい。本当にシナジーがあるのか」「PayPay証券を共同設立したソフトバンクとは次世代金融の戦略提携を結んでいる。裏切りと思われないか」。慎重論が出るのも当然だった。

楽天証券の2021年12月期の純利益は90億円、持ち分法投資利益として取り込めるのはその2割。今回の800億円の出資を全体の企業価値に引き直すと4000億円で楽天証券を評価したことになり、業界から「割高」との声も上がる。

楽天の電子商取引(EC)を中心とした経済圏のなかでポイントなどのお得感を得られるところに楽天証券の大きな価値はある。まずは楽天証券の顧客にみずほの対面コンサルティングサービスを提供したり、みずほ証券の引き受ける株式や債券を楽天証券に販売委託するなどの連携から手を組む見通しだが、これだけでは相乗効果は十分とは言えない。

携帯不振が発端

「10年先への投資だな」(みずほ首脳)。それでもみずほは出資に傾いた。6月に三井住友FGがSBIホールディングス(HD)への1割出資を発表した際、みずほはSBI証券を取り込むチャンスを失った。楽天から持ちかけられた出資話に「乗った」のは、他社に押さえられる前に将来の潜在力に賭けるべきだと考えたためでもある。

そもそもの発火点は、楽天の携帯事業の不振にあった。基地局などの設備投資が財務にのしかかり、楽天の22年1~6月期の最終損益は1766億円の赤字(前年同期は770億円の赤字)となった。携帯事業の営業損失(2593億円)が好調なネット通販「楽天市場」などの利益を食い潰す状態が続く。

楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は「投資は今後どんどん減る。収益は改善していく」と説明する。ただ、市場は性急に成果を求めがちだ。

格付け大手のS&Pグローバルは9月、楽天の長期発行体格付けを引き下げ方向の「クレジット・ウオッチ」に指定。21年7月には楽天の格付けを「投機的水準」となる「ダブルBプラス」に下げた。年内に資金調達ができないと判断すれば格付けをさらに1段階下げる可能性があった。

楽天は金融子会社の2社を上場させる方針を掲げている。楽天銀行は上場を申請し、東証が審査を続けている。楽天証券の親会社である楽天証券HDは正式な申請前の段階だ。年内の資金調達は不透明だった。みずほが出資するおよそ800億円は、いったん楽天証券HDに入るが、上場前に配当で楽天本体に融通されるとの見方がある。

出資が伝わった5日夜の時間外取引では楽天株が急騰し、6日は一時前日比9%高となった。しかし、両者の提携が歓迎されたというよりも、楽天の財務改善期待が高まった面が強い。打診からわずか2カ月余りでの電撃出資が吉と出るか凶と出るか。成功が約束されているわけではない。

(山下晃、五艘志織、西城彰子)

(日本経済新聞)

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