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メタの「スレッズ」登録5日で1億人 企業広告、長期で重視 ツイッターの減収を教訓に 2023/07/12

【シリコンバレー=渡辺直樹】米メタの短文投稿サービス「Threads(スレッズ)」が10日、公開からわずか5日で利用者が1億人を超えた。ツイッターは投稿管理を緩め、課金に誘導して企業や利用者の離反を招いた。スレッズは過激なコンテンツを避け、企業が安心してユーザーと交流できるコミュニティー基盤をつくる。ツイッターと逆張りの戦略で収益化を狙う。

「まず製品をうまく機能させ、次に10億人への明確な道筋をつけられるかを確認する。そのときに初めてマネタイズ(収益化)を考える」。メタのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)はスレッズ収益化の青写真をこう示した。

スレッズ公表後のメタの発表や幹部の発言から解き明かすと、短期の収益化のために改革を急ぐ米起業家イーロン・マスク氏のツイッターと対照的な戦略がみえてくる。

ザッカーバーグ氏は短文投稿サービスの主導権争いに長期戦で臨む構えだ。無料モデルを軸に10億人までは普及を優先させる考えを示すが、スレッズの基盤である画像共有アプリ「インスタグラム」の利用者数は20億人とされる。インスタユーザーの半分までスレッズの利用者を増やす目標の達成は簡単ではない。

主導権争いが持久戦に陥ったとしても、メタにはフェイスブックとインスタという巨大SNSから得られる安定した広告収入源がある。

攻められるツイッターは売上高が約50億ドル(約7000億円)で赤字が続いていた。課金を急ぐツイッターに対し、売上高1200億ドルに迫るメタはプラットフォームを育てるため長期での収益化を図りやすい。

収益モデル構築のカギは企業との関係だ。インスタのトップ、アダム・モッセーリ氏は「政治やハード(難しい)ニュースに手を出さなくても、活気あるプラットフォームをつくるには十分すぎるすばらしいコミュニティーがある」と投稿した。SNSの中立性を担保して企業参入を促す狙いがある。

スレッズには米ネットフリックスやアマゾン・ドット・コムなど企業の公式アカウントの開設が相次ぐ。メタは今後、企業アカウントの取り込みや広告を考慮し、コンテンツの健全性にも目を光らせていくとみられる。

他山の石となっているのがマスク氏の買収以降に起きているツイッターの広告離れだ。

マスク氏は行き過ぎたコンテンツモデレーション(不適切な投稿の監視・削除)を懸念し、投稿管理を緩めた。その結果、ヘイトスピーチ(憎悪表現)や偽情報の拡散といった過激な内容を恐れた企業の広告離れを招いた。

マスク氏もフロリダ州のデサンティス知事の大統領選出馬表明に関してツイッター上でホスト役を務め、SNSの中立性を疑問視する声もある。

米インサイダー・インテリジェンスによると、2021年に44億6000万ドルあったツイッターの広告収入は23年に前年比28%減の29億8000万ドルとなった。25年には26億4000万ドルまで減少すると予測する。

マスク氏はザッカーバーグ氏やメタをツイッター上でののしり、企業秘密を奪ったとして法的措置も辞さないスタンスで対立姿勢を強めている。

ツイッターの代替として期待がかかるスレッズだが、課題もある。欧州では規制対応のためにリリースが遅れている。データプライバシーに関して慎重な対応を進めているとみられる。

巨大テック企業の独占禁止をめぐる攻防も懸念材料だ。米連邦取引委員会(FTC)はこれまでSNSの相互運用を問題視してきた。インスタを基盤としたスレッズはこうした当局による介入を招く可能性もある。広告に使うデータ連携では難しい対応を迫られることになる。

(日本経済新聞)

メタのThreads、Twitterの失策突く(The Economist) 2023/07/11

米起業家のイーロン・マスク氏とメタのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は6月下旬、2人が格闘技の「金網マッチ」で対決するというジョークをSNS上で繰り広げた。マスク氏によるとローマの円形闘技場遺跡コロッセオで決闘するかもしれないという。

それが実現するかどうかはともかく、2人はテックビジネスの現場で重大な対決に直面している。

メタは今月5日、自社のSNSサービスに「Threads(スレッズ)」という新しいアプリを加えた。短文を投稿するSNSで、マスク氏が昨年10月に440億ドル(約6兆3000億円)で買収したツイッターに酷似している。SNSの覇者をめぐる新たな闘いの火蓋が切られた。

ユーザーや広告主がツイッター離れ
マスク氏がツイッターを買収して以来、多くの人が被害を受けた。8000人近くいた従業員の約80%がコスト削減のため解雇された。米調査会社イーマーケターによると、サービスに不具合が相次ぎ、利用者も離れている。月額8ドルの有料サービスに加入しないと閲覧できる投稿数を制限する「課金の壁」を導入したことも利用者の減少を加速させる可能性がある。

広告主もツイッターを敬遠している。イーマーケターはツイッターの今年の広告収入は2022年より28%減ると予想する。米資産運用大手のフィデリティは5月、マスク氏がツイッターの買収を決めて以来、同社の評価額の3分の2が失われたと推計した。

混乱はザッカーバーグ氏に有利に働いた。21年ごろ、同氏の会社は偽情報と悪口雑言の代名詞だった。その後、社内の最高権力者として、先が読めず、黒字化のメドも立たないメタバース事業にのめり込み、投資家を怒らせた。シリコンバレーでザッカーバーグ氏ほど毀誉褒貶(ほうへん)の激しい人物はいない。

だが、マスク氏が買収した後のツイッターの混乱ぶりをみると、ザッカーバーグ氏によるメタの経営は企業統治の模範例にすら思えてくる。

最近のツイッターはコンテンツモデレーション(不適切な投稿の監視)を緩め、発言の自由を優先している。このスタンスは、フロリダ州のロン・デサンティス知事(ツイッター動画で次期大統領選への出馬を表明したが、システム不具合に見舞われた)を含む一部の保守派に歓迎されている。一方で、リベラル派はこの姿勢に反発している。

英調査会社ユーガブによると米国でのマスク氏の人気は今もザッカーバーグ氏より高い。だが、ツイッターで問題が相次ぎ、政界が中国発の動画アプリ「TikTok(ティックトック)」の規制に動くなか、ザッカーバーグ氏に好感を抱く人の割合は過去3年間で最高になっている。

ザッカーバーグ氏が率いるメタはビジネスの結果でも勝利を狙っている。ツイッターの混乱に乗じようとした新興SNSは多かったが、どれも成功しなかった。従業員1人の分散型SNS「マストドン」はマスク氏によるツイッター買収から22年11月までの間に利用者が200万人以上増えた。だが、アプリが使いにくく、米調査会社センサータワーの推計によると利用者数は6月には22年11月時点より61%減少した。

トランプ前米大統領の会社が運営する保守派向けソーシャルネットワークの「トゥルース・ソーシャル」はマスク氏がツイッターを右寄り路線に変えたこともあり伸び悩んでいる。もう一つの新興SNS「ブルースカイ」も利用者の確保に苦戦している。

ライバルの技術を模倣するメタ
メタの新サービスはこれらよりは有望にみえる。ライバルの技術を模倣するのはメタの得意技だ。動画・写真共有アプリ「スナップチャット」で投稿が一定時間後に自動的に消える「ストーリー」が人気になるとザッカーバーグ氏は自社のインスタグラムに「ストーリーズ」を追加した。

22年にティックトックのショート動画がメタを脅かしそうになると、インスタグラムとフェイスブックに「リール」を追加した。ザッカーバーグ氏は4月、リールがインスタグラムの利用時間を4分の1近く伸ばしたと明かした。

スレッズには立ち上げから有利な面もある。リールと違って独立したアプリだが、インスタグラムの利用者はそのアカウント情報を使ってログインでき、インスタグラムと同じ人を簡単にフォローできる。調査コンサルティング会社データリポータルによると、ツイッターユーザーの87%がインスタグラムを併用しており、ツイッターの代用品を簡単に手に入れられる。

利用者はスレッズに移行するのか。メタのクリス・コックス最高製品責任者が6月、社内に向けて語ったように、「まともな運営」さえされていれば十分という利用者も多い。マスク氏はスレッズ公開の数日前に課金の壁を導入したことで敵に塩を送った。

メタに比べるとツイッターの事業規模はごく小さい。利用者数は世界最大のSNSであるフェイスブックの8分の1にとどまる。21年のメタの売上高は1160億ドルだったのに対し、ツイッターは51億ドルだった。売り上げが小さい割に、リスクは大きい。ツイッターには他のSNSに比べて問題を起こしがちな過激な人を引き寄せる面がある。

メタは最近ニュースコンテンツの掲載に消極的だ。ニュースは政治論争の種になるうえ、利用者に歓迎されるわけでもないためだ。一方、ツイッターはニュースをサービスの柱の一つにしている。

広告収入を狙う
ザッカーバーグ氏はスレッズのどこにトラブルのリスクを上回る価値を見いだしたのだろうか。理由の一つは広告にある。ツイッターは利用者の情報にうとく、広告で大きな収益を上げたことがない。データリポータルのサイモン・ケンプ氏によるとツイッターで投稿を見る人の半数から3分の2はログインせずに使うという。ユーザーの多くが他人の投稿を見るだけで自分ではほとんど投稿しない。

だが、メタは他の自社アプリを通して利用者の情報を集めており、利用者がスレッズに登録するとすぐターゲット広告を打てる。ツイッターではブランドを宣伝する「ブランディング広告」が中心だ。一方、フェイスブックやインスタグラムは見込み客から直接反応を得る「ダイレクトレスポンス広告」が主力だ。スレッズでツイッター流の手法をとれば、相互補完もできる。

AIに必要なテキストデータも入手
人工知能(AI)もメタがスレッズを投入した動機の一つだ。ChatGPTのような生成AIでは膨大なテキストデータが重要になる。米ネット掲示板「Reddit(レディット)」などのサービスは自社で管理する膨大なテキストデータを利益につなげる方法を模索している。

マスク氏はツイッターに課金の壁を設定したのはAI企業による「極端なレベルのデータスクレイピング(AIや自動プログラムによる大量のデータ収集)」に対抗するためだと発言している。動画や画像を扱うフェイスブックやインスタグラムに加えてテキストベースのサービスを持つことでメタは豊富な言語データを手に入れられる。

ケンプ氏は「ザッカーバーグ氏は(スレッズで)AIにコンテンツを取り込もうとしている」という。獲得したテキストデータは、他社に提供するにしても、自社で活用するにしても、投資家に訴求できる材料になる。

SNSの立ち上げは容易ではない。38億人の利用者を抱えるメタも数々の失敗を経てきた。恋人を探す「フェイスブック・デーティング」のサービスは不人気で、メタのゲームやショッピングのサービスも軌道に乗っていない。

だが、ツイッターが利用者や広告主に負担を押しつけ、マスク氏がとっぴな経営スタイルを続けるなら、ザッカーバーグ氏が戦利品を得る可能性は高まるだろう。

(日本経済新聞)

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