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メール文、6秒で自動生成 日本語AIで業務改革 東大発新興、文章構成「人間並み」 2022/03/29

英語圏に端を発した言語分野の人工知能(AI)の進化の波が日本に押し寄せている。東京大学発スタートアップ、ELYZA(イライザ、東京・文京)はキーワードから電子メールの文面などを自動生成する技術を開発。契約書の作成や広告文の考案への応用を見込む。文章を扱う仕事は多岐にわたり、「日本語AI」の発展はホワイトカラーの業務効率化に効果を発揮しそうだ。

「弊社では、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進に関する勉強会を毎月実施しております。次回の勉強会にぜひ田中様をお招き致したく、企画を現在練っている最中でございます。つきましては、下記日程にてご登壇をお願いできませんでしょうか」

人間が書いたとしてもさほど違和感のないこのメールの文面は、イライザが開発したAIが生成した。作業は単純だ。「田中様」「登壇」「DX推進」など5つのキーワードを入力して「執筆」を指示しただけで、約6秒で自動生成した。仕事で大量のメールを送る人には興味をそそられる機能だ。

あらかじめひな型を用意しているわけではなく、キーワードを基にAIが類推して言葉を並べ、「もっともらしい」文章をつくっていく。人間がチェックし、必要に応じて加筆・修正すればビジネス用のメールの作成にも利用できそうだ。

イライザは日本のAI研究の第一人者である東大の松尾豊教授の研究室から2018年に創業したスタートアップ。人間が使う言葉を対象にした「自然言語処理」の技術を強みとする。28日から文章執筆AI「ELYZA Pencil(イライザ・ペンシル)」をウェブサイトで一般公開し、新市場の開拓を狙う。

このサービスではメール、ニュース記事、職務経歴書の3種類の文章を扱い、数個のキーワードをもとに約6秒で生成する。試しに「テスラ」や「電気自動車」という単語を指定すると「テスラが好調な理由」という見出しや「電気自動車『モデルS』の販売台数が、前年同月比で2倍以上に伸びた」などと書かれた記事が表示された。

イライザ・ペンシルは大量の日本語の文書から知識を得ている。学習データに含まれない情報などで事実と異なる記述をすることもあるが「文章の流ちょうさではほぼ『人間並み』を実現できた」と曽根岡侑也最高経営責任者(CEO)は話す。一般公開を通じて幅広い利用を促すと同時に、顧客や連携先となる企業の開拓につなげる。

言葉を巧みに操る「大規模言語モデル」というAIは近年、急速な進化を遂げている。20年に米国で「GPT-3」と呼ぶAIが登場して以来、世界で開発が活発化した。その波が日本にも到来し、イライザなどが実用化に動き出している。

イライザ・ペンシルは無料で公開することもあって機能を限定しているが、顧客企業に有料サービスを提供する際にはより高度なモデルを使う想定だ。特定の文書データを学習させれば精度向上が期待でき、例えば広告関連の企業と連携して過去の事例などを学ばせることで、自然な広告文を生み出せるとみている。

イライザが21年夏から公開した日本語の長文を自動要約する技術は、開始から5日間で約13万人が利用した。人間なら約5分かかる平均900字程度の記事の要約を5秒以下で実行できる。SOMPOホールディングスと組み、約26万件のデータを用いて音声認識で文書化したコールセンターの通話内容をAIで要約する取り組みも進める。

資料や報告書、企画書などで文章を扱う業務は多い。AIによる生成や要約が普及すれば、ホワイトカラーの生産性向上につながりそうだ。イライザは文章執筆AIについてまずはメールや広告文、契約書を念頭にサービスを展開し、現在約20社の顧客の拡大をめざす。

日本語を対象にしたAIではLINE(東京・新宿)も注目を集める存在だ。韓国ネイバーと共同で「HyperCLOVA」(ハイパークローバ)と呼ぶ大規模言語モデルの開発に取り組む。文章の生成や要約、対話への応用が見込まれ、すでに商品PRや営業日報などで高度な文章をつくる性能を実現済みだ。

現在は高性能のスーパーコンピューターを駆使し、新聞の縮刷版2700年分に相当する膨大な文書データを学習させて「能力」を高めている。実用化の時期や想定するサービスの詳細は明らかにしていないが、「日本語を使うあらゆる作業を手助けする」として、幅広い展開を見据える。

日本語の文章はひらがなやカタカナ、漢字の表記が交じるうえ、語彙数が多い。同音異義語や敬語などの扱いも複雑で、主語や目的語の省略も珍しくない。こうした事情から「日本語AI」は実現へのハードルが高いと指摘されてきたが、技術の進展や参入企業の増加で展望が開けつつある。

1月には日本マイクロソフトからスピンアウトしたrinna(りんな、東京・渋谷)も大規模な日本語対応モデルの開発を発表した。言葉で指示を与えるとAIがその意味を「理解」して画像をつくり出す技術の研究も進める。各企業が競い合うことで、日本語AIの発展が加速しそうだ。

(日本経済新聞)

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