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ユニコーン育成へ投資 三井住友、300億円ファンド 上場直前の成長支援 2023/07/11

三井住友フィナンシャルグループ(FG)は国内の未上場成長企業「ユニコーン」の育成を目指す新ファンドを立ち上げる。投資総額は300億円になる見通しで、同種のファンドでは国内最大級とみられる。日本では事業が軌道に乗ったスタートアップの成長をさらに加速させる資金の出し手が少なく、事業基盤が弱いまま上場に至る事例が目立つ。リスクマネーの厚みが増せば、世界で戦える新興企業は生まれやすくなる。

政府が6月にまとめた「経済財政運営と改革の基本方針2023(骨太の方針)」には、スタートアップの推進が重点項目として盛り込まれた。新たな産業構造に転換するためには「スタートアップを生み育てるエコシステム(生態系)の形成」が必要とする。

スタートアップ企業の資金調達(きょうのことば)は成長段階によって投資家が異なる。創業期から起業家を支援したり、事業モデルの確立を支えたりする段階の投資家は、日本でもベンチャーキャピタル(VC)など厚みが増してきた。

日本に欠けているとされるのが、事業モデルが軌道に乗り業績も黒字化してきたスタートアップに、量産投資や製品・サービスのシェア拡大といった急成長に必要な大型のリスクマネーを提供する投資家だ。「レイターステージ(成長後期)」と呼ばれ、米国では資金流入が拡大し数多くのユニコーンを生んできた。

三井住友FGは、国内の有力VCのグローバル・ブレインと、成長後期のスタートアップに特化したファンドを近く立ち上げる。

資金の大半を三井住友FGが拠出し、実際の投資ではグローバル・ブレインの目利き力を生かす。同社はフリマアプリ運営のメルカリを創業時代から支え、日本初のユニコーン(企業価値が10億ドル以上の未公開企業)に育てた実績がある。

新ファンドの運用期間は7年で、1社に対する投資額は数十億円規模。企業価値が100億円を超える新興企業を中心に投資し、500億~1000億円規模に成長させてから数年以内に売却や株式の上場をめざす。

内閣府の資料によると、VC投資全体に占める「成長後期型」の割合は米中が約7~9割。日本は4割弱にとどまる。日本取引所グループ(JPX)の山道裕己・最高経営責任者(CEO)は「日本でユニコーンが少ないのはレイターステージでリスクをとる出資者が少ないためだ」と指摘する。

日本の新興企業は未上場の段階で大きなリスクをとれず、経営基盤が弱いまま早期の株式公開を迫られていた。東京証券取引所などによれば、東証グロース市場に新興企業が新規株式公開(IPO)する際の株式時価総額は22年の平均で101億円。米国の19億2000万ドル(約2700億円)との差は大きい。

上場時の企業価値が小さければ、十分な成長資金を調達できない。1社あたりの調達額(21年)は米国の450億円超に対し、日本の旧東証マザーズは14億円だった。

米国ではVCに育てられた企業が上場すると次は機関投資家の視点で経営をチェックされる。一方、日本の新興市場は個人投資家が中心で、経営者はプロの投資家と対話しながら成長することができない。株価が不安定になりがちで、経営が短期目線になるといった課題も指摘されている。

銀行融資の「間接金融」が主体となってきた日本では、歴史的に元本が減るリスクをいとわない投資マネーが乏しく、全体の底上げが課題だ。

一般財団法人のベンチャーエンタープライズセンターによると、22年の日本のVC投資額は3403億円と31兆円を超える米国、2兆5000億円の欧州に大きく水をあけられている。

政府が昨年11月にまとめた「スタートアップ育成5カ年計画」では、スタートアップへの投資額を10兆円規模にまで増やす目標を掲げる。

スタートアップへの投融資に慎重だった銀行も近年は支援策を拡充させている。みずほFGが22年に成長後期向けのファンドを100億円規模で立ち上げたほか、三菱UFJフィナンシャル・グループも海外で培った人工知能(AI)の活用による融資を国内でも始める計画だ。

ゆうちょ銀行もスタートアップ投資に本格的に乗り出すと表明した。巨額のゆうちょマネーの一部を成長分野に振り向ける。国内の大手金融機関が投融資に乗り出せば、国内外から新たなリスクマネーを呼び込む効果も期待できる。

(日本経済新聞)

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