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三菱商事、時価総額10兆円超え バフェット効果後押し 2023/06/20

三菱商事の株式時価総額が20日、終値ベースで初めて10兆円を超えた。著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる米投資会社バークシャー・ハザウェイの買い増しが続き、国内外の投資家の間で、商社の事業モデルを再評価する動きが広がっている。

20日の東京市場で、三菱商事株は前日比4%高の7200円で取引を終えた。終値ベースの時価総額は10兆3499億円と、ファーストリテイリングに次ぐ7位になり、商社初の「10兆円企業」に仲間入りした。19日にバークシャーが5大商社株の保有率を平均8.5%以上(自己株を除く)に引き上げたと発表したことが好感された。

時価総額はバークシャーの大量保有が判明した2020年8月下旬から3倍に急拡大した。フィリップ証券の増沢丈彦・株式部トレーディング・ヘッドは「日本株を買ってこなかった海外投資家から国内の機関投資家、ヘッジファンド、個人まで全方向の買いが入っている」と指摘する。

商社はこれまで「市況連動株で中長期的な成長を見通しにくい」(海外投資家)との見方が強かった。資源から消費財まで幅広い事業を手掛ける「コングロマリット」業態がわかりにくいこともあり、製造業などと比べ過小評価されてきた。

だが、最近の商社は過去主力だった商品トレーディングから、事業投資や海外企業への経営参画を通じて配当収入や売却益を狙う事業モデルに切り替えてきた。バフェット氏が自社にも似た商社の事業モデルに「お墨付き」を与え、評価する動きが急拡大している。

商社の「変化」として財務に表れているのが、資本効率を示す自己資本利益率(ROE)の改善だ。バフェット氏も含めて機関投資家が重視する指標で、三菱商事は23年3月期のROEは15.8%と、3年前より6ポイント上昇した。

同社は事業部門ごとに疑似的な資本を割り当ててグループROEを算出し、それを高めるための施策を進めてきた。例えば、資源事業では自動化などで生産性を高めたほか、燃料用石炭の売却や銅の追加取得など権益の選択と集中で競争力のある資産への入れ替えを進め、資源高の追い風を捉えやすくなった。

非資源分野の強化も進めている。子会社の再生可能エネルギー大手で発電資産の選択と集中を進めており、電力ソリューション事業の純利益は3年で2割増えた。こうした取り組みが奏功し、天然ガス事業と金属資源事業を除く純利益は5708億円と、20年3月期の2.3倍に増えた。

個人投資家などが重視する株主還元への期待も高まっている。23年3月期に自社株買いと配当を加えた総還元額は6293億円になり、3年前からは3倍以上になった。24年3月期は資源高の一服などで最終減益を見込むが、年間配当を200円と前期比20円増やした。総還元性向を40%程度にする方針を示し、従来の「30〜40%」から引き上げている。

SMBC日興証券の森本晃氏は「キャッシュフローの状況や財務健全性を踏まえると、株主還元を通じた資本効率向上のポテンシャルは大きい」と、今後も株主還元の拡充を期待できるとみる。

三菱商事に限らず、商社株はバークシャーの買い増しを受け、20日は5社そろって上場来高値を更新。PBR(株価純資産倍率)は3年前に伊藤忠商事を除く4社が解散価値を表す1倍を下回っていたが、将来の成長期待もあり23年6月20日時点では5社全てが1倍以上になった。

商社株自体の上昇はどこまで続くのか。東海東京調査センターは三菱商の目標株価を7600円としている。栗原英明シニアアナリストは、株主還元の拡充と非資源分野の収益力向上に加え、「今後たまったキャッシュを投資拡大に振り向けるステージに入る」との期待を示す。

一方、足元の株価には「過熱感がある」とも明言する。バフェット氏は商社株について最大9.9%まで保有したいとの考えを示しているが、8月初旬ごろ発表予定の23年4〜6月期決算で減益となる可能性を指摘。失望売りで決算発表後の8〜10月は株価上昇が止まる可能性があるとみる。

バフェット効果の賞味期限が近づくなか、市況に頼らない資本効率の改善と成長投資を進めていけるか。世界に類をみない商社の事業モデルの真価が問われている。

(長谷川雄大、白岩ひおな)

(日本経済新聞)

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