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三菱UFJ、挑んだ「逆合併」タイのアユタヤ銀買収10年 現地主導でリテール成長 2023/12/13

三菱UFJフィナンシャル・グループが2013年にタイのアユタヤ銀行を5360億円で買収して10年になる。純利益の伸び率は現地大手で最も高く、アジアの事業をけん引する。三菱UFJの海外経常収益は22年度に初めて日本を逆転。邦銀初のアジア大手銀買収の成否のカギを握ったのは、支店の「逆合併」を柱にした現地化だった。

11月末のタイ最大規模のモーターショー。中国電気自動車(EV)大手の比亜迪(BYD)などの展示会場で、黄色い襟のシャツを着た約100人のアユタヤ銀の行員がローンの契約作業に追われていた。アユタヤ銀は自動車ローンで近年シェア首位を走り「アジアのデトロイトと呼ばれるタイのEV化を支えている」(BYD現地幹部)。

三菱UFJは自らアジアの資金需要を開拓するため、米GEキャピタルなどからアユタヤ銀の株式の70%超を取得し買収した。22年度の純利益は307億バーツ(約1300億円)と買収前の12年度比で2.1倍になり、大手5行で伸び率はトップになった。自己資本利益率(ROE)は9.3%と首位で不良債権比率は2.3%と最も低い。買収前はROE4位、不良債権比率は2番目に悪かった。

「三菱UFJは買収した側なのに、どうして支店は逆に吸収されるのか」。買収後、アユタヤ銀の初代頭取になった後藤謙明氏(現会長)が追われたのは、三菱UFJのバンコク支店の社員の引き留めだった。

タイでは同じ資本系列で2つの銀行を運営できない。貸出金残高で当時約5000億円、資産規模でタイ最大の外銀と言われた三菱UFJのバンコク支店をアユタヤ銀に吸収合併せざるを得なかった。外銀首位の三菱UFJではなく、現地5位のアユタヤ銀で働くことになる行員の反発は少なくなかった。

「なんでも心配なことをきいてくれ」。後藤氏は何度も三菱UFJのバンコク支店に赴き、キーパーソンとみた人材は膝詰めで慰留した。アユタヤ銀の稼ぐ力を高めるには三菱UFJの支店が抱えていた約4000社の法人顧客を生かす必要がある。取引先とのパイプを持つ行員がいなくなれば元も子もない。

同様に腐心したのがアユタヤ銀の現地行員との融合だ。現地5位とはいえ「クルンシー(偉大な都)」の愛称で親しまれる。600を超す国内トップクラスの支店網を持ち、自動車ローンなどリテールに強みを持つ。

「第2のユニオンバンク」。当時、三菱UFJの平野信行社長が念頭に置いたのが、海外粗利益の4割を稼いでいた米銀ユニオンバンクだ。三菱UFJの田中正明副社長(当時)がユニオンバンクのトップとして現地化の陣頭指揮を執った経験を生かし、アユタヤ銀ではリテール、法人営業など部門・グループのトップを原則現地社員にした。出向者で幹部を埋める当時の米英銀で主流だった手法と一線を画した。

三菱UFJの法人顧客が加わったことで預金の厚みも増し、自動車ローンなどのリテールに一段と資金や人的資源を投下できるようになった。自社で販売金融を持つトヨタ自動車やホンダとの取引も増え、22年末のリテールの貸出残高は10年で2.3倍に拡大し競合4行をしのぐ。「リテールの成長がアユタヤ銀の高い利益率の源泉だ」(ティスコ証券のアナリスト、タナワット氏)

米国のユニオンバンクを昨年12月に売却した三菱UFJにとって、海外事業のドライバーはアジアに移る。地域別の経常収益はアジア・オセアニア(日本除く)が19%を占め、10年前(9%)から上昇した。

デジタル銀行で先行するシンガポールのDBSとの本格的な競争も待ち構えている。三菱UFJとしては現地のフィンテック出資などによるデジタル事業の地固めはまだ始まったばかり。アユタヤ銀を含めたグループの戦略投資の巧拙が問われる局面に入る。

(日経新聞)

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