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上場廃止へTOB、最多の65社 東芝・大正薬HD・ベネッセHD 株式市場退出で経営改革 2023/12/29

TOB(株式公開買い付け)を通じて上場廃止をめざす企業が増えている。2023年は東芝や大正製薬ホールディングス(HD)など65社と、前年より35%増えた。集計できる00年以降で過去最高となった。

東京証券取引所や投資家から株価を意識した経営を求める動きが強まっている。短期的な株価変動や株主への利益配分にとらわれず中長期の視点で経営改革を進めるために、株式市場からの撤退も選択肢になった。

M&A(合併・買収)調査のレコフデータ(東京・千代田)によると、上場廃止を想定した国内企業へのTOBを公表した件数は、23年1月から12月25日までに65社だった。23年のTOBは全体で80件で、このうち上場廃止をめざす案件は全体の約8割に達した。10年代はTOBの成立後に上場を廃止した企業は5割以下だった年が多かったのを踏まえると、市場からの退出を決める企業が増えている。

買い付け金額は5兆3600億円と前年の3.8倍にのぼり、過去最高となった。

国内外の投資ファンドが株式の非公開化を主導する事例が目立つ。日本産業パートナーズ(JIP)の傘下で経営を立て直す東芝は12月20日に、74年におよぶ上場会社としての歴史に幕を引いた。TOBの買い付け金額は約2兆円と今年最大となった。6月には産業革新投資機構(JIC)が半導体材料のJSRを買収する方針を発表した。

大型企業が市場退出を自ら選ぶ例も増えている。11月には大正製薬HDやベネッセホールディングスが上場廃止に向けてMBO(経営陣が参加する買収)を発表した。

上場廃止の理由は変わってきた。東京商工リサーチによると、リーマン・ショックが直撃した08年は経営の悪化で市場からの退出を余儀なくされた例が多く、79件の上場廃止のうち33件は倒産によるものだった。07年以降で上場廃止が最も多かった21年は86件で、持ち株会社への移行や新型コロナウイルス下の企業再編が相次いだ。23年は倒産による上場廃止はなく、上場維持基準に抵触したのも3社にとどまった。

意図的に上場を廃止する例が目立つ背景にあるのが、東証や株主の動きだ。東証は3月、PBR(株価純資産倍率)が1倍を下回る企業に改善を求めた。アクティビスト(物言う株主)による企業への要求も相次ぎ、株価が割安な企業への圧力は増している。TOBで既存の株主から株式を買い取り、短期的な株価変動などにとらわれず、中長期の視点で構造改革に取り組みたい企業が上場廃止を選んでいる。

非効率な資本関係や連携関係の改善に向けて、親子上場を解消しようという動きも加速した。富士ソフトはサイバネットシステムなど上場子会社4社を完全子会社にする方針を打ち出し、いずれのTOBも成立した。住友電気工業も製品設計や販路拡大での連携強化をめざし、日新電機とテクノアソシエの2子会社の上場を廃止した。

事前同意を得ないまま、買収提案された事例も23年の特徴だ。ニデックは7月にTAKISAWAの同意がないまま買収提案を公表したが、最終的にはTAKISAWAが買収を受け入れた。株価対策が不十分な企業は買収にさらされるリスクが浮き彫りとなった。

TOBを実施して上場廃止をめざす動きは24年以降も続きそうだ。ビジョナル傘下でM&A助言を手掛けるM&Aサクシード(東京・渋谷)の佐藤憲シニアコンサルタントは、「東証などが求める経営効率の改善を短期で達成するのは難しいと判断し、非公開化をめざす動きは今後も一段と増えそうだ」との見方を示す。

非上場企業への投資を手がけるプライベートエクイティ(PE)ファンドと連携して非公開化するケースでは、不特定多数の株主が株式を保有する上場時よりも株主の経営への関与は高まる。この場合、投資家との対話は引き続き重要になる。M&Aサクシードの佐藤氏は「PEファンドは5年程度で再上場などをめざす場合が多く、非公開化が完全な市場からの撤退を意味するものとは限らない」と指摘する。

(大越優樹)

(日経新聞)

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