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不動産向け不良債権 中国4大銀、1年で6割増 直近10年で最大、金融システムにリスク 2023/05/16

【香港=伊原健作】中国の銀行で不動産業界向けの不良債権が増え続けている。2022年末時点で中国工商銀行など4大銀行の残高は前年比6割増え、直近10年で過去最大になった。不良債権を処理する政府系資産会社の業績悪化も鮮明で、中国恒大集団の経営危機から1年以上たつ今も火種がくすぶる。米地銀破綻や欧州のクレディ・スイス救済問題に続き、世界の金融システムを揺さぶるリスクになっている。

不動産は中国の国内総生産(GDP)の3割程度を占めるといわれ、経済への影響が大きい。香港証券取引所に上場する主要32行の22年12月期決算を集計したところ、不動産向け不良債権は2640億元(約5兆1千億円)と1年前に比べ7割弱増えた。うち長期で比較できる4大銀行では約1800億元と6割増え直近10年で最大となり、この数年は1~3%台で推移していた不良債権比率(不動産向け)も5.8%まで急速に悪化した。

一部の銀行が直近で発表した1~3月期決算でも傾向は不変だ。準大手の招商銀行が4月後半に開示した決算では、不動産向けの不良債権は152億元と昨年末に比べ15%増えた。

中国は20年に不動産大手を対象に負債額に厳しい上限を設けるなどの「3つのレッドライン」と呼ぶ規制強化を実施した。

企業の資金繰りが悪化し、21年12月に恒大集団がデフォルト(債務不履行)に陥るなど危機が広がった。過剰債務の適正化を目指す施策だったが、銀行の不良債権が膨らむ結果を招いた。大手行以外も厳しく、地方地盤の貴州銀行は昨年6月時点で0%台の不動産向け不良債権比率が20%台に悪化した。

中国では主要70都市の新築マンション価格が2月に1年半ぶりの上昇に転じるなど楽観的な見方もある。ただ日本総合研究所の関辰一・主任研究員は「住宅購入意欲の強い25~34歳の人口は減少に転じ、市場が勢いを取り戻すのは構造的に難しい」と話す。「不動産は回復途上で問題解決にはより多くの時間を要する」(中国銀行のリスクマネジメント担当役員、劉堅東氏)との声もある。

各行は不良債権の圧縮を急ぐ。甘粛銀行の決算書によると昨年6月と12月にオークションを実施し、政府系資産管理会社などに総額27億元超の不良債権を売却した。21年末時点の不良債権残高全体の約7割に当たる規模だ。浙江省の浙商銀行も昨年に約28億元分の不良債権を証券化したほか、約49億元分を第三者に譲渡したと開示した。

もっとも「リスクが不良債権の受け皿会社に転嫁されている面がある」(日本総研の関氏)。中国ではAMCと呼ばれる資産管理会社が銀行から不良債権を買い取り、再生して転売する。大手の中国華融資産管理は22年12月期の最終損益が赤字に転落し、同業の中国信達資産管理も純利益が半減した。いずれも不動産価格下落の影響で多額の減損損失を計上した。

格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは4月、AMC大手の華融の長期発行体格付けを「Baa3」(トリプルBマイナス相当)に1段階格下げした。今後も「多くの民間不動産会社はストレスを抱え、業界へのエクスポージャー(投資・事業資産残高)は圧力に直面するだろう」と指摘した。

華融など大手AMCは1990年代に4大銀の不良債権処理のため設立された。13年以降は多数の地方政府系AMCが設立され、後ろ盾となる地方政府自体の財政悪化が深刻だ。貴州省では4月、政府の公式ホームページに一時「財源は限られ、債務の救済作業を進めることは非常に困難」として中央政府の支援が必要とする文書が掲載された。現在は削除されている。

AMCにも資本の制約があり、不良債権を処理し続けるのには限界がある。不動産以外も含めた全体の不良債権比率(32行ベース)は平均1.6%台にとどまるが、政府は昨年末から不動産会社の資金調達規制を一部緩和し、市況が回復しなければ不良債権がさらに増える可能性がある。

S&Pグローバルは中国で不動産向け不良債権が24年まで増え続けるとみる。米欧でも米シリコンバレーバンク破綻などを機に商業用不動産に流れ込んでいたマネーが逆回転する懸念があり、世界的に不動産投資への警戒が強まっている。

(日本経済新聞)

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