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日本経済は30年にわたりデフレに沈んできた。値段や賃金は変化しないものだという強いノルム(社会規範)が消費者、経営者に浸透した。コスト削減に経営資源を振り向ける縮小均衡のワナから脱するには、物価を上回る賃金の上昇や、人々の意識の変化が重要になる。
日本経済は1990年代以降、物価の低迷が続いてきた。インフレやデフレに関する代表的な指標の消費者物価指数(CPI、生鮮食品を除く総合)はその傾向を鮮明に映す。
多くの先進国は毎年、モノやサービスの値段が平均で2%ほど上昇してきた。物価はこの30年間で米国や英国は2倍、ドイツは1.7倍になった。日本だけが1.09倍とほぼ横ばいにある。日本のゼロインフレは戦後の世界でまれな現象だ。
人口減少だからデフレになるという単純な関係性はない。イタリアや韓国は足元で人口が減っているが、インフレ率はプラスで推移する。
日本は1994年ごろにゼロ%台の伸びに鈍化し、95年からは何度か前年を割り込む月が出てくるようになった。98年以降はほぼ一貫してマイナス圏になった。
国内要因のインフレの動きを示す国内総生産(GDP)デフレーターはさらに一足早く、1994年後半に前年割れが始まっていた。「価格破壊」が流行語となり、円高を消費者に積極的に還元する動きがスーパーなどで広がった年だった。
デフレの要因は大きく2つある。1つは需要不足だ。1990年代前半にバブル経済が崩壊し、企業は負債、人員、設備という3つの過剰に苦しみ、金融機関は不良債権処理に追われた。経済活動が落ち込む中で、供給力に対し需要が慢性的に下回った。
需要が低迷する中で企業は値上げを避け、できるだけ安くモノやサービスを提供することに腐心するようになった。コスト削減のため人件費が抑えられ、結果的に家計がモノを買う力も落ちるスパイラルに陥った。
もう1つが「将来、物価が上がるかも」と人々が思えるかという予想物価上昇率の低迷だ。世界では経済活動が低迷してもインフレが続く国は多い。物価や賃金が上がると信じているかが大きく左右する。
日本はバブル崩壊以降、企業も家計も「モノの値段は上がらない」という考え方がノルム(社会規範)のように染み付いた。幅広い分野で価格が動かない世界でも異形の経済になった。
プラスに浮上したのは2006年ごろだ。景気回復の影響もあり、CPIでみたインフレ率はゼロ%台前半と小幅のプラスとなった。
食料不足の懸念などが話題になった08年には、投機マネーの資金流入などで世界的な資源高となり、インフレ率は一時2%台まで上昇した。直後にリーマン・ショックによる急激な景気悪化が発生し再びマイナス圏に陥った。
デフレ脱却を掲げた第2次安倍晋三政権が発足し、インフレ率は消費増税の影響を除くベースで14年には一時1%台半ばまで上昇した。だが、増税後の個人消費の低迷や賃金の伸び悩みなどがあり、ゼロ近傍の小幅プラスにとどまった。
この数年でインフレ率が急激に上昇したのは新型コロナウイルス禍からの急激な経済活動の回復と、ロシアのウクライナ侵攻といった地政学リスクの高まりだ。一時は1981年以来の4%超えを記録した。物価は上がると考える人も増えた。デフレからインフレへの移行期にある。
(日経新聞)