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世界のオフィス空室率 米都市、「在宅」広がり悪化 台北は賃料上昇、半導体支え 2023/01/23

新型コロナウイルス下のテレワーク普及で世界のオフィス市況が冷え込んでいる。昨秋時点で3年前と比べた主要都市の空室率の上昇幅をランキングしたところ、首位の米サンフランシスコなど、北米の都市が上位に並んだ。テレワークとの親和性の高いIT(情報技術)や金融などサービス業の集積が目立つのが特徴で、従業員のオフィスへの復帰の割合を示す出社率も低い水準にとどまる。

不動産サービス大手のJLLがまとめているオフィス空室率から、最新の2022年9月末と、新型コロナ感染拡大前の19年9月末のデータを比較した。

上昇幅が最も大きかった都市はサンフランシスコだ。18.5ポイント上昇し、空室率は24.1%となった。シリコンバレーに近く、IT企業が集積するサンフランシスコでは出社と在宅勤務を組み合わせた「ハイブリッド勤務」がいち早く進み、保有オフィスの一部を売却する動きが強まった。手作り品の電子商取引(EC)サイトを運営する米エッツィーは22年7月下旬、サンフランシスコのオフィスを閉じると表明した。

米国の主要都市ではニューヨーク、ロサンゼルスも上位5位に入り、コロナ下での新たな働き方の影響が出ている。足元では米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めに動くなか、米国内ではペイパル・ホールディングスやツイッター、リフトといったIT企業のオフィス閉鎖や縮小が相次いでいる。IT企業は雇用を急拡大してきたが、「フェイスブック」を運営する米メタなど人員削減に動く企業も増えており、今後もオフィス縮小の動きが懸念される。

上昇幅が2位のシドニー(オーストラリア)のほか、英ロンドンの上昇幅も比較的大きかった。オフィス市況が軟調に推移する豪州などについて、JLLの大東雄人シニアディレクターは「都市圏が広く、従業員の通勤時間が長いため」と指摘する。「住宅の広さから在宅勤務もしやすい環境のため、オフィスに戻る動機が乏しい」という。

空室率の上昇に歩調を合わせるように賃料は下落基調をたどっている。日本不動産研究所(東京・港)は毎年2回、世界14都市の新築オフィスビルの契約賃料を調べて指数化している。19年10月の賃料を100として22年10月の数値を指数化すると、ニューヨークは94.9、ロンドンは94.8。需要の落ち込みなどを反映して賃料は下落した。

コロナ下で堅調だったのはソウルだ。22年9月末の空室率は2.5%と3年間で6.8ポイント改善。オフィス賃料の指数も106.1と、空室率の減少幅や賃料の上昇幅は対象都市の中でいずれも首位だった。オフィスビルの新規供給が少ないうえ、「好業績の医療関連やIT企業の需要が旺盛だった」(日本不動産研究所の吉野薫主席研究員)。

足元では従業員の出社を以前より増やしたい企業経営者との綱引きが強まっているが、欧米はアジアに比べてオフィスへの戻りが鈍い。不動産サービス大手のCBREが22年6~7月に世界のオフィスワーカーに出社頻度を聞き取って出社率に算出したところ、米国や英国、豪州の出社率は70%前後。80%程度だった日本や韓国に劣り、オフィスに100%出社する割合は回答者全体の3割ほどにとどまった。

出社率が相対的に高いアジアは住宅の狭さから在宅勤務のしにくさもあり、欧米との違いが出たとみられる。ソウル以外ではシンガポールのオフィス市況が底堅く推移した。「半導体産業などがオフィス拡張に動いた」(吉野氏)ため、台北などもオフィス賃料指数はコロナ前を上回った。

東京の空室率は、コロナ禍前に全都市で唯一1%を下回っていたが、企業のオフィス解約や縮小が進み、3年で4.2%まで上昇した。大型ビルの大量供給を控え、早めに空室を埋めようとオーナーが賃料を引き下げたことも背景に、オフィス賃料指数は97.6と下がった。JLLの大東氏は東京について「古くて立地で劣る競争力の低いビルの空室数は増える可能性がある」と話す。

(原欣宏)

(日本経済新聞)

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