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世界の新規上場株変調 半数が公開価格割れ、過熱の反動 2022/01/14

世界の新規上場企業の株価が変調している。2021年に上場した世界約4000社のうち約5割は足元の株価が上場時の公開価格を下回っている。21年は上場数が過去最高となり、公開価格の評価がIT(情報技術)バブル期以来の高水準となるほどの活況となった反動が大きい。低金利下で膨張したマネーの流入がこのまま急減すれば、新興企業の資金調達の障害となるリスクをはらむ。

「市場環境を鑑みIPO(新規株式公開)の延期を決めた」。米国の人事労務ソフトウエア会社ジャストワークスは22年1月12日、こう表明した。翌日に米ナスダック市場へ上場する予定だった。

世界でIPOの環境が悪化している。インドでは後払い決済サービス大手モビクイックが21年11月に予定していたムンバイ市場への上場を急きょ、延期した。ニューヨーク証券取引所に12月上場したブラジルのネット銀行の持ち株会社ヌーホールディングスは直前に公開価格を引き下げた。

背景にあるのが世界的なIPO銘柄の株安だ。上場時に企業や証券会社は会社の実力や投資家の需要をみながら発行する株式の価格(公開価格)を決める。金融情報会社リフィニティブによると、21年の上場数は前年比60%増の4413件。QUICK・ファクトセットで株式発行を伴わない直接上場などをのぞいた3260社を対象に調べたところ、1676社で現在の株価が公開価格を下回る。公開価格割れの割合は20年の3割弱や過去5年平均の4割を上回る。

21年11月にインドのムンバイ市場に上場した電子決済サービス会社ペイティーエム(Paytm)を運営するワン97コミュニケーションズは、インドで過去最大のIPOと注目を集めたものの初値は公開価格を9%下回り、その後も株安が続く。

世界の新規上場銘柄の値動きを示す「FTSEルネサンスグローバルIPO指数」は21年に13%下落。足元でも21年2月の最高値から3割超安い水準に沈む。

変調の原因の一つはITバブル以来の水準まで高まった公開価格の割高さにある。

米フロリダ大学でIPOを研究するジェイ・リッター教授は、公開価格が1株当たり売上高の何倍かを示す「株価売上高倍率」を集計している。21年に上場した米国のテクノロジー企業(バイオ関連を除く)では同倍率の中央値が15.2倍と、00年(31.7倍)以来の高水準だ。赤字企業の割合も8割弱とITバブル期に近い。

21年7月に上場した株取引アプリのロビンフッド・マーケッツの同倍率は30倍以上だった。足元の株価は公開価格の半分以下だ。11月上場の米電気自動車(EV)メーカー、リビアン・オートモーティブは販売実績がほぼないのに時価総額が1500億ドル(約17兆円)を超える場面があった。その後の株価は低調で今月6日には公開価格を下回った。

株価を押し上げた背景には「低金利と、創業から上場までの時間が長いこと」(リッター教授)がある。

長引く低金利のなか、取引しやすい上場株式は割高感が強くなった。未公開株市場には上昇余地を求めマネーがなだれこんでいる。従来は新興企業への投資を専門とするベンチャーキャピタルのみだった市場に、ソフトバンクグループのような多額の資金を投じるファンドや、一般の運用会社が続々と参入した。未公開株のうちから取引価格が実力と比べ割高になりやすい。

ソフトバンクGが出資し、米ニューヨーク市場に3月上場した韓国の電子商取引(EC)大手クーパンの株価は22ドル台と、公開価格の35ドルを下回る。「韓国版アマゾン」と呼ばれ、当初は840億ドル(約9兆円)超の時価総額が付いたものの、6月に物流倉庫で火災事故が発生し不買運動に発展するなど苦境が続く。

米中対立も影を落とし始めた。2月に香港市場へ上場した中国の動画投稿アプリの快手科技(クアイショウ)は、中国当局の規制が響き株価が急落している。中国の画像認識大手、商湯集団(センスタイム)は米財務省から証券投資禁止の制裁を受けて香港上場をいったん延期した。

ITバブルの崩壊後は米国で400社前後だった年間の上場数が100社以下に低迷し、市場が持ち直すまで3年以上かかった。過熱の反動が大きければ、来年に上場を予定するインテル傘下の自動運転部門モービルアイなどの上場にも響きかねない。

(古賀雄大、和田大蔵)

(日本経済新聞)

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