金融、コンサル、外資系の転職・求人なら人材紹介【アスパイア】

無料転職支援・
相談のお申し込み

簡単登録
(入力1分)
信頼度NO.1の人材紹介エージェント
  • pic

    U.S. President Joe Biden

  • pic

    White House - Washington D.C. United States of America

国際政治経済最新情報

International Political Economy Updates

世界のREIT市場に試練 米オフィス指数は14年ぶり低水準 2023/04/07

世界の不動産投資信託(REIT)市場が試練を迎えている。米国のオフィスREITを組み込む指数は一時約14年ぶりの低水準となったほか、欧州などでも歴史的な安値が目立つ。米欧金融機関の危機に伴う資金の目詰まりや在宅勤務に伴う需要減退などが根底にある。先進国の金融引き締めが市場全体の逆風となるなか、本格的な復調には時間を要するとの声が多い。

米国の主要オフィスREIT銘柄の値動きをまとめたS&Pコンポジット1500オフィスREITs指数は、3月下旬に53と2022年末比で2割超下落し、リーマン・ショックの余波が残る09年以来の安値をつけた。以降も指数の戻りは鈍く、今月6日時点でも60未満にとどまる。個別で見るとより苦境にある銘柄が少なくない。

たとえば、サンフランシスコなどで多数のオフィスを運用する大手ボストン・プロパティーズ。投資口価格(株価)はこの1年で6割ほど下落した。ニューヨーク中心に投資するボルネード・リアルティ・トラストはリーマン時も下回り、90年代半ば以来の安値にある。

歴史的な低迷は米国だけではない。ドイツのREIT大手、アルストリア・オフィス・リートが足元で約10年ぶりの安値をつけた。日本でも三井不動産をスポンサーに持ち時価総額最大の日本ビルファンド投資法人株が22年末から一時7%下落した。新型コロナへの懸念が強かった20年の安値に迫る水準だ。

主因の一つが、資金繰りを巡る懸念だ。3月の米シリコンバレーバンク(SVB)などの破綻とスイスの大手金融機関の経営危機で金融システムに不安が広がり、中小銀行を中心に融資姿勢は一気に厳しくなった。預金流出に備える必要性が高まり、不動産融資の絞り込みにつながるとの見方から、REITの資金調達への警戒感が急速に広がった。

REITは集めた資金で物件を取得し、得られる賃料などを主な収益源としている。資金の不足や調達コストの上昇は、銘柄の稼ぐ力の低下に直結し、成長期待の後退につながる。

欧州でも大手金融機関の融資態度の厳格化が懸念されている。クレディ・スイス・グループの救済買収では同社のAT1債(劣後債の一種)が無価値となり、他の金融機関のAT1債利回りにも上昇圧力がかかる。「AT1債の借換時の利払いが増えるため、金融引き締めと同様の効果が働く」(ロンドンの邦銀担当者)との声がある。

在宅勤務の定着で、オフィス需要は構造的に減少している。米JPモルガンによると、全米のオフィス空室率は22年10〜12月期に12.5%とリーマン期なみの高さになった。米ゴールドマン・サックスは、英オフィスの稼働率は3割程度とコロナ前水準のおよそ2分の1にとどまるとみる。いずれもオフィス市況の大きな重荷だ。

先進国の中銀がインフレ沈静化のため、金融引き締めを続けてきたことも逆風だ。長期金利の上昇で投資家が不動産に求める投資利回り(キャップレート)にも上昇圧力がかかる。コロナ下で高騰した不動産価格も勢いを失うなか、金融不安が景気後退を招けば、需要面からさらに下押し圧力をかけかねない。

オフィス以外のREITもさえない。たとえば、米住宅REITを対象としたS&Pコンポジット1500住宅REITsは、足元で約2年ぶりの低水準にある。小売店を対象にした商業や産業関連も似た傾向で、世界のREIT時価総額は3月時点で1.9兆ドルと、前年同月から約2割減少した。

歴史的な低金利を追い風としたREIT市場の拡大局面は終わり、当面は調整が避けられない。米不動産投資大手PGIMリアルエステートのエリック・アドラー最高経営責任者(CEO)は「不動産価値の下落の痛みは今後も続くが、いずれ底を打ち、辛抱強い投資家には買い場が訪れる」と話す。個々の銘柄をより吟味する局面になりそうだ。

(今堀祥和、ニューヨーク=佐藤璃子、ロンドン=大西康平)

(日本経済新聞)

menu