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International Political Economy Updates

世界景気減速にシグナル 銅2割安・米金利逆転・海運値崩れ 2023/05/31

市場で世界景気の減速を示唆するシグナルがともっている。中国の経済回復期待が鈍り、銅をはじめ主要商品が今年の高値から2~3割下落した。米国では債券市場で景気悪化のサインとされる長短金利差の逆転が42年ぶりの長さを記録し、低迷する海運運賃は欧米の消費の弱さを反映する。米債務上限問題の進展など、先行きの楽観材料はあるものの、3つのシグナルは市場の根強い景気懸念を映し出す。

商品相場では銅が今年の高値から2割安、亜鉛が3割安、アルミニウムが2割安などと下落が目立つ。特に銅はインフラや自動車、家電製品など幅広い産業で使われ、価格は景気を「診断」するように先行して動く。「ドクター・カッパー(きょうのことば)」とも呼ばれ、値動きが注目されている。

銅価格の下落が示すのは、世界の銅需要の6割を占める中国経済の停滞懸念だ。中国では、建築用銅電線が銅の主要な消費先となっている。中国の1~4月の不動産開発投資は前年同期比6.2%減少。新型コロナウイルス禍後の経済回復で投資が伸びると見込まれていたが、不動産開発会社の資金繰りがなお不安定で、新たな開発投資が低迷している。

不動産は中国の国内総生産(GDP)の3割程度を占めるといわれ、経済への影響が大きい。土地使用権収入に財源を依存する地方財政の信用問題にも発展し、雲南省昆明市、山東省●(さんずいに維)坊市、甘粛省蘭州市、広西チワン族自治区柳州市の4都市が「財政力が弱い」として注目を集めている。こうした地方政府はインフラ投資余力が低下し、財政支出による成長率下支えが難しくなっている。

不動産だけでなく、4月の製造業購買担当者景気指数(PMI)が好不調の境目である50を4カ月ぶりに下回る。欧米の経済成長も鈍り、中国からの輸出が加速する状況にもない。伊藤忠総研の武田淳チーフエコノミストは「中国景気が立ち上がってくる兆しはなく、商品価格が上がる状況にはなりにくい」と話す。

債券市場では米景気の先行きを不安視する見方が増えている。

期間が短い米国債利回りが、長いものを上回る異例の状態を「逆イールド」と呼び、景気後退のサインとされる。満期まで2年の国債と10年の国債を比べると、逆イールドの状態が26日時点で226日間続いている。1981年以来、42年ぶりの長さとなる。

満期まで3カ月と10年の国債を比べると、5月上旬に利回り差が一時マイナス1.9%と42年ぶりのマイナス幅に広がった。この利回り差から米ニューヨーク連銀が算出する米国の景気後退確率は68%と、リーマン・ショックやIT(情報技術)バブルの直前を上回る。

背景には米連邦準備理事会(FRB)によるインフレを抑え込むための金融引き締めが、景気を下押しするとの懸念がある。4月の個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比4.4%上昇で市場予想を上回るなど、インフレの粘着性が明らかになっている。FRBによる利上げ継続の思惑が強まり、逆イールドの長期化につながっている。

コンテナ船市況は欧米の消費の弱さを反映し低迷が続く。

上海航運交易所によると、上海発米西海岸向けのスポット(随時契約)運賃は5月第4週に40フィートコンテナ1個1398ドルと、前年同期と比べ82%安い。上海発欧州向けも同様に20フィートコンテナ1個859ドルと前年同期比85%低い。コンテナ船社からは採算が取れない水準との声も上がる。

荷動きが鈍い要因は、欧米の小売りで積み上がった過剰在庫だ。アジアから欧米への輸送は家具や衣類、玩具など最終消費財が多い。コロナ下の供給網の混乱を受けて、小売り各社は在庫を多めに確保していたが、インフレ下で消費は伸び悩む。在庫を過剰に抱えるようになり、2022年後半から輸送量が急速に減少している。

4月の米国の小売売上高は前月を上回るなど、足元で消費は底堅いとの見方もあるが、新たな輸入需要は強くないことがうかがえる。

海運調査会社シーインテリジェンスは「小売業や卸売業の在庫は増加傾向にあり、調整がまだ十分でない。コンテナ輸送量にしばらくマイナスの影響を与えるだろう」という。

鉄鉱石や石炭などを運ぶばら積み船の市況も軟調だ。ばら積み船市況の総合的な値動きを表す「バルチック海運指数(1985年=1000)」は、26日時点で1172と年初来高値(10日、1640)から約3割低い。

主要な輸入国である中国で鉄鉱石や石炭の輸入の勢いが衰え、船腹需給が緩んだ。

2月半ば以降、「ゼロコロナ政策」の解除や春節(旧正月)休暇明けで経済活動が活発化するとの期待から輸入を拡大していたが、足元では想定ほどの需要はなく指数が下がった。

(日本経済新聞)

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