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世界株の時価総額、上期1割増の100兆ドルに ピークの8割回復 景気懸念、偏る資金流入 2023/07/02

世界の投資家がリスク資産に資金を戻し始めた。世界の上場株の合計時価総額は2023年上期(1~6月期)に約1割増え、100兆ドル台を回復した。「コロナ緩和」下でつけたピークの8割水準だ。日本株の上昇率は主要株式市場で首位だった。もっとも景気懸念を背景に資金流入には偏りがある。利上げ停止シナリオが崩れれば、マネーは逆回転しかねない。

QUICK・ファクトセットによると、世界の株式時価総額は30日時点で103兆ドル(約1京5000兆円)。22年末(94兆ドル)に比べて9%増えた。過去最大値は21年11月につけた120兆ドル。新型コロナウイルス対策で米連邦準備理事会(FRB)をはじめ世界の中央銀行が大規模な金融緩和に踏み切り、資産バブルにつながった。足元はピークの86%まで回復したことになる。

時価総額の大きい主要15株式市場をみると日本株の上昇は突出していた。日経平均株価は昨年末比27%高となり、約33年ぶりの高値をつけた。新興国にも資金は流入しており、インドと南アフリカ共和国の主要株価指数は最高値圏にある。

22年は世界の中銀が利上げを加速した結果、株式と債券が同時大幅安となり、多くの投資家は損失を被った。23年に入り、市場は落ち着きを取り戻した形だ。フィデリティ投信の重見吉徳マクロストラテジストは「利上げ打ち止め観測や、近い将来の利下げ期待が、株高につながった」とみる。

景気減速下の株高は「いいところ取り」の解釈によるところが大きい。(1)消費や企業業績は底堅く、たとえ景気後退に陥っても短く浅い(2)景気減速がインフレ抑制につながり、中銀が金融引き締めを止める――といった楽観的な見方だ。

とはいえ、あらゆる企業の株式が買われたわけではない。ハイテク中心の大型成長株は昨年末比2割高となった一方、中小型株の上昇率は1割未満だった。

大型成長株の上昇が加速したのは、3月に米中堅銀シリコンバレーバンクが破綻した後だ。地域金融機関を中心に企業への融資条件が厳しくなり、景気悪化につながるとの懸念があった。米国の中堅企業は国内景気への影響を受けやすい。

米運用会社ナベリアの最高投資責任者、ルイス・ナベリア氏は「マイクロソフトやアップルなど大型成長株はキャッシュフローが良好で、多くの投資家にとって安全な逃避先となっている」と指摘する。アップルの時価総額は30日に終値で初めて3兆ドルを超えた。

国・地域別にみても濃淡はある。たとえば英国の株価指数は年初から横ばい圏にあり、日本株(3割高)に比べて出遅れは鮮明だ。

投資家は中銀の姿勢で選別している。日銀の植田和男総裁が金融緩和を続ける構えを見せ、幅広い通貨に対して円安が進んだ。日本の輸出企業にとっては追い風だ。一方、英国の中銀はインフレを抑えきれず、利上げ継続で景気を冷やしすぎるリスクが警戒されている。

様々な資産の値動きを比較すると、景気不安の根強さが分かる。

世界の主要国債を組み入れた指数は前年末に比べて高くなった。景気見通しが改善していれば通常、投資家は安全資産とされる国債を売り、より高いリターンが見込める株式に資金を移す。23年上期は景気後退懸念が残っており、マネーは国債にも向かった。

原油は敬遠された。米指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物価格は1バレルあたり70ドル台と、22年末比12%安に沈んだ。最大規模の原油需要国、中国景気の先行きを不安視している。

商業用不動産に対する見方も厳しい。米不動産指数の「オフィス」は2割安と下げが目立つ。空室率が高まり収益性が落ちるなか、高金利環境下での資金借り換えが順調に進むのか、懸念を拭えていない。

FRBは利上げを進めてきたものの、過去に買い入れた資産の圧縮はあまり進んでいない。「(金融市場は)いまだ過剰流動性相場のなかにある」と野村証券の松沢中チーフ・ストラテジストは指摘する。カネ余り環境がもうしばらく続くのであれば、投資家はリスクをとってリターンを追求するようになる。

波乱の芽は金融引き締めの行方にある。英イングランド銀行(中央銀行)は22日、政策金利を4.5%から5%に引き上げ、市場予想を超える利上げ幅となった。他の中銀もインフレの抑制に向けて、利上げの再開や再加速を迫られれば、株高継続シナリオは揺らぐ。金融市場は不安定になりかねない。

(今堀祥和、ニューヨーク=佐藤璃子)

(日本経済新聞)

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