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中国、国富で世界首位 20年に米の1.3倍 不動産バブルにリスク 2021/12/19

土地や住宅などの資産から負債を引いた中国の正味資産(国富)が米国を追い抜いていたことが、米研究機関の調査でわかった。マンションバブルで資産の評価額が膨らんだためで、世界全体の23%を占めた。1990年に米国を上回った日本は、バブル崩壊で国富が減った。中国政府も不動産バブルが金融リスクを膨らませていると警戒する。

米マッキンゼー・グローバル・インスティチュートがこのほど、主要国の国富に関する調査報告書を発表した。世界の国民所得の6割を占める10カ国(オーストラリア、カナダ、中国、フランス、ドイツ、日本、メキシコ、スウェーデン、英国、米国)が対象だ。70年以降の毎年の各国の純資産をはじき出した。

2020年の世界全体の純資産は510兆ドル(約5京7630兆円)で、2000年(160兆ドル)の約3倍に膨らんだ。国別では中国は120兆ドルと同17倍に拡大した。シェアは中国が首位の23%で、米国の17%(89兆ドル)、日本の7%(35兆ドル)と続いた。中国の国富は13年に初めて米国を抜き、20年には米国の1.3倍に達した。

中国の純資産が大きく増えたのは、不動産市場の過熱が背景にある。不動産シンクタンクの易居不動産研究院によると、主要50都市の住宅価格は20年に平均年収の13倍となり、15年の10倍から高まった。広東省深圳市は40倍、上海市は26倍など大都市ではもはや市民の手に届きにくい。

新型コロナウイルス対応の金融緩和であふれた投機マネーがマンション価格をつり上げた。中国は全国統一の固定資産税や相続税がない。所有コストが低く中古市場に物件が出にくいことも価格を押し上げてきた。

調査対象の10カ国平均でみても、住宅価格は2000年の3倍に上昇した。「不動産は値崩れしない」との考えが根強い中国は同5倍に達した。地方財政が国有地の使用権を不動産開発業者に売って得る収入への依存度を高めるといったいびつな構図も生み出した。

報告書によると、純資産額が米国を上回ったのは中国とバブル経済で沸いた1990年代前半の日本のみだ。90年の日本のシェアは23%で、米国を1ポイント上回った。「東京都心部の土地価格で米国全土が買える」といわれた時代だ。

純資産額の国内総生産(GDP)比も近い。日本は90年のピークに8.3倍となり、中国は20年に8.2倍に達した。

中国都市部の生活コストを高めるマンション価格の高騰に、市民は不満を募らせてきた。習近平(シー・ジンピン)指導部は「共同富裕(ともに豊かになる)」を旗印に、不動産投機の抑制を優先課題の一つに挙げている。

しかし、急激な締め付けは、不動産価格の急落を通じて金融システムを動揺させ、経済の長期停滞を招きかねない。日本は旧大蔵省が90年に導入した不動産融資の総量規制が、バブル崩壊の引き金の一つとなった。

中国共産党は8~10日の中央経済工作会議で不動産規制を修正する方針を示した。投機の抑制は続けつつも、減速感を強める経済にも配慮する姿勢だ。不動産問題の軟着陸が中国政府の重い課題となっている。

(井上航介、北京=川手伊織)

(日本経済新聞)

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