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国際政治経済最新情報

International Political Economy Updates

中国、深刻な景気減速 中長期でも高成長戻らず 2023/01/11

中国経済に悲観的な見方を示す専門家が増えている。元モルガン・スタンレー・アジアの会長で、現在は米エール大学シニアフェローであるスティーブン・ローチ氏もその一人。習近平(シー・ジンピン)中国共産党総書記(国家主席)の強権的な指導体制の確立が、従来の楽観から転じるきっかけだったという。中国はすでに深刻な景気減速に見舞われているとしたうえで「中長期的にも高成長には戻らない」との見方を示した。

――世界経済の先行きをどうみていますか。

「2023年に世界的な不況が到来するとみる。世界経済の半分を占める米国と欧州、中国はいずれも景気後退に陥る可能性が高い。米国では労働市場でスラック(需給の緩み)が生じるまで賃金上昇圧力が残る。米連邦準備理事会(FRB)の利上げは市場想定よりもずっと長い間続くだろう」

「欧州はすでに景気後退に入っている。欧州中央銀行(ECB)による金融引き締めの遅れが一因だ。ロシアからのエネルギー供給の減少は(特に対ロ依存度が高かった)ドイツ経済に大打撃を与えている」

――中国経済はどうみていますか。

「国内総生産(GDP)は縮小していないものの、ほぼ不況入りに相当する状態といえる。今年の成長率は3%未満になるとみる。12年以降は8%前後で推移してきたことを鑑みれば驚くべき数字だ。中国は08年の金融危機時に世界経済の柱となり、その後も世界生産高の35%以上を占めていた。今は中国を頼りにできなくなったため、世界経済は危機的な状況に陥っている」

「中国経済の中長期的な成長も望めない。一人っ子政策は中国の人口動態にゆがみをもたらした。生産年齢人口の減少は想定以上に早く進んでいる。習近平指導部が打ち出す『共同富裕(ともに豊かになる)』政策は生産性を悪化させる」

――かつては中国経済に強気でした。

「過去25年間に中国を分析してきた米国のエコノミストのなかで、最も中国経済を楽観視していたのは私だった。1990年代後半のアジア通貨危機後、中国が日本に代わってアジア経済のけん引役になると確信した。2001年に中国が世界貿易機関(WTO)に加盟した際に、確信はさらに強まった」

「習氏が最高指導者としての地位を確立してからは楽観視できなくなった。彼は17年の第19回党大会で、経済や政治システム、中国社会を支配するという見解を打ち出した。中国経済は市場原理に基づく自由化の力よりも、イデオロギー的な決定で動くようになってしまった」

――中国と米国の対立も激化しています。

「貿易戦争として始まった米中の対立は、技術を巡る戦争に姿を変え、新たな冷戦に突入している。両国が相手に対する誤ったナラティブ(物語)をあおりたてた結果、現在の状況に陥ってしまった。米国は貿易赤字を中国のせいにしているが、実際には米国の貯蓄率の低さに原因がある。中国は自国の台頭が戦略的に封じ込められ、経済の構造改革が妨げられていると米国を非難しているが、実際には中国側により多くの問題がある」

「この紛争に明確な勝者は存在しない。米中双方が打撃を受けている。私は著書の中で共通の問題を解決する方法として、米中の(経済などの)専門家を集めた事務局の設立を提案した。両国が自らの脆弱さと向き合わない限り、解決は見込めない」

――中国は投資対象として魅力的なのでしょうか。

「中国の証券当局は、米上場企業会計監視委員会(PCAOB)による中国本土と香港の会計監査法人の検査を受け入れた。米国に上場する中国企業の透明性を高めるもので、米国の投資家が長年求めてきた。中国に資金を振り向けたいと考えている投資家は増えるはずだ」

「しかし中国政府は成長力の高いインターネット企業に対して規制を強めている。知的財産の保護、産業政策や補助金を巡っても多くの問題を抱えている。中国経済の成長率が8%前後の高軌道に戻ることはありえない。中長期的な成長リスクを懸念すべきだ」

(聞き手は南泰葉)

 Stephen Roach 米モルガン・スタンレーで約30年間、チーフ・エコノミストを務めるなど、ウォール街で影響力を持つ一人だった。モルガン・スタンレー・アジア会長などを経て現在は米エール大法科大学院ポール・ツァイ中国センターのシニアフェロー。近著に「Accidental Conflict: America, China and the Clash of False Narratives」(偶発的衝突:米中と誤ったナラティブの対立)。

(日本経済新聞)

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