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中小DX、ファンドが支援 大学と連携しAIも駆使 生産性向上、デジタル化競う 2022/07/22

投資ファンドが中小企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する。アント・キャピタル・パートナーズ(東京・千代田)は大学と協力し、人工知能(AI)のデータ解析を企業経営に生かす。DXを活動の軸に据えたファンド設立も相次ぐ。中小企業は人材難でデジタル化に課題がある。ファンド間の競争も激化しており、DX支援で付加価値を高める狙いがある。

アントはこのほど九州工業大学と共同研究契約を結んだ。投資先企業のデータをAIで解析し、販売増やコスト削減に生かす。アントは大学が持つ高度なノウハウを活用できるほか、大学側も具体的な事例を研究の題材にできる。ファンドと大学との提携は珍しい。

アントは2018年に専門部署を設けてデータを活用した企業の成長支援に取り組んできた。例えば投資先の飲食チェーンでは、各店舗のグルメサイトでの評価や口コミをもとに、従業員のスキルを数値化。店舗ごとの人材の最適配置で顧客満足度を高めてきた。今回の大学との提携で、すべての投資先でAI活用を視野に入れる。

DX支援を軸にしたファンド設立も相次ぐ。D Capital(東京・港)は中堅・中小企業を投資対象とする300億円規模のファンドを設立中で、5月には大阪市のフォワーダー(運送仲介業者)への投資を発表した。デジタル技術を活用した運送業務の効率化などをめざす。

ファンドが企業のDX支援に動く背景には、新型コロナウイルスの感染拡大がある。生活様式や企業活動が変わり、デジタル化への対応で企業の競争力に大きく差が付くようになった。

人材紹介会社キャリアインキュベーション(東京・千代田)の赤池辰介ディレクターは「ここ1~2年でファンドから投資先企業に派遣する人材として、DX関連のコンサルタントなどを採用したいといった相談が増えた」と話す。中小企業では取引先と電話やファクスでやり取りするケースも多く、人材不足の中で生産性の向上が急務になっている。

くじらキャピタル(東京・港)が設立中の約50億円のファンドは企業価値が数億円の中小・零細企業も投資対象とする。資金不足でデジタル機器を満足に導入できていない中小企業は多い。電子商取引(EC)やクラウドソフトの導入など「データ活用の手前の部分の困りごとにもきめ細かく対応する」(竹内真二社長)のが特徴だ。

ファンドとデジタル技術を持つスタートアップとの提携も広がる。ユニゾン・キャピタル(東京・千代田)は支援先の医療機関を、ヘルスケア関連の新技術やサービスを試験導入する場としてスタートアップに提供するよう準備中だ。アジア系のPAGは消費データ分析のナウキャスト(東京・千代田)と組み、飲食・サービスチェーンのGYRO HOLDINGS(東京・新宿)の顧客情報と位置情報データを組み合わせて出店判断に役立てている。

ファンドにはDX支援で差別化を図る狙いもありそうだ。M&A(合併・買収)関連サービスのマーブル(東京・中央)によると国内で活動するファンドは独立系、大手金融機関系合わせて約80社。このほか地域金融機関系のファンドも約70ある。

競合ファンドが増え、資金調達の支援や経営人材の派遣といった従来型の手法では違いを出しにくくなった。すでに海外の大手ファンドでは投資先企業の選定や経営改善にデータを活用する動きが広がっており、米ブラックストーンはデータサイエンティストの採用に取り組んでいる。

日本の中小企業はDXの遅れが目立つ。21年度の経済財政白書によると、DXを実行または検討中の企業は中小で4割にとどまり、大手の7割超を大きく下回る。企業側のニーズに応えることで、ファンドの社会的役割を示す機会にもなりそうだ。

(和田大蔵)

(日本経済新聞)

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