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人への投資、企業価値左右 スコア上位は株価7割高 若手育成、増収に効果 2022/08/07

人材育成をはじめとする「人への投資(総合2面きょうのことば)」に投資家が関心を高めている。社員の能力や人材戦略を見極めなければ企業の実力は測れないとの見方が強まったためだ。人材力は財務諸表には表れにくい。オルタナティブ(代替)データで分析したところ、若手の成長を重視する企業などで株価や業績が高まっていることがわかった。

日興アセットマネジメントは2021年1月から新ファンド「日本株人材活躍戦略」を運用する。狙いは「人への投資」に優れた企業に集中投資することだ。

従業員の増減や人件費などの情報から企業の人的投資効率などを算出し、スコア上位に投資する。1998年以降の過去データではスコア上位20%の累計投資リターンは28%と、最も低い企業群のマイナス25%に対し大幅に高い。

現在の分析は財務情報が主体だが、判断材料は増える見通し。開発を手掛ける石川康氏は「研修費などのデータ開示が進めば取り入れたい」と語る。岸田文雄政権の「新しい資本主義」では研修時間や費用、従業員の多様性といった項目の開示を近く求める。

従業員の能力を伸ばし、社員が働きがいを感じる企業の企業価値は高いのか。

社員クチコミを収集・分析するオープンワーク(東京・渋谷)の協力を得て、社員や元社員が5段階で評価する「企業評価スコア」と業績や株価の関係を分析した。「待遇面の満足度」「社員の士気」「風通しのよさ」「社員の相互尊重」「20代の成長環境」「人材の長期育成」「法令順守意識」「人事評価の適正感」の8項目と、「総合スコア」の計9項目を使い、2021年時点での上位20社と下位20社に分けて調べた。

まず「総合スコア」を分析したところ、上位の株価は7月19日時点で16年末に比べ72%上昇し、下位の18%を大幅に上回った。上位は21年度まで5年の売上高も4割強と下位の1割強に比べ伸びた。

次に、個別のどの項目が効いているのかを探るため、8項目と様々な財務指標の関係を調べた。その結果、1人当たり売上高の伸びと「20代の成長環境」の関連が高かった。主要企業で同スコアがトップのリクルートホールディングスは、管理職が社員ひとりひとりの育成方針を検討する専門委員会などを備える。株価は「人事評価の適正感」の影響が最も大きかった。

社内変革が価値向上につながった一例が荏原だ。17年に報酬体系を役割や成果に基づくものにして研修を増やし、5割の海外拠点に導入した。「人材の活躍推進」を掲げ、20年までに新卒の15%は外国籍になった。売上高が上向き、22年12月期の最終利益は2期連続で過去最高の見込み。佐藤誉司人事統括部長は「『人』を中心にした経営に改めることで、従業員の働きがい向上や優秀な人材の育成につながっている」と話す。

企業は投資家への開示にも工夫を凝らす。ソニーグループは、従業員の会社への信頼度や貢献意欲を示す「従業員エンゲージメント指標」を経営陣の報酬と連動させ「統合報告書」などで開示する。20年度のスコアは過去最高になった。BIPROGY(ビプロジー、旧日本ユニシス)は1人当たりの研修時間や残業時間、離職率まで開示する。

ニッセイアセットマネジメントの井口譲二氏は「ボトムアップ重視の日本企業では人的資本の充実が企業価値に与える影響が大きい」と話す。ただ生命保険協会によると中長期に重要な投資に「人材投資」を挙げた企業は31%。人への投資で成長戦略を磨き、マネーをひき付けられるかが今後の企業の浮沈を握る。

(ESGエディター 古賀雄大、野口知宏)

(日本経済新聞)

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