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人的資本の開示、来年開始 3月期決算企業から 大手4000社対象、満足度や離職率 金融庁 2022/11/28

人材を企業の資本とみなす「人的資本」の開示義務化に向けて、金融庁が検討してきた制度の詳細が固まった。有価証券報告書(有報)を発行する大手企業4000社を対象とし、2023年3月期決算以降の有報に人材投資額や社員満足度といった情報の記載を求める。上場企業の多くを占める3月期企業は早急な対応を迫られる。

人的資本は人材、または人材が持つ知識や技能、意欲などを指す。近年、米欧を中心に従業員をコストではなく「付加価値を生み出す資本」と捉え、財務情報だけで測れない企業の本質的な価値を探る動きが広がっている。

日本は国内総生産(GDP)に占める企業の能力開発費の割合が米欧に比べて低い。岸田文雄政権は人への投資を「新しい資本主義」の柱としており、投資を加速させるため、企業に情報開示を求める方針を示していた。

今回固まった制度概要では、23年3月期決算以降の有報を発行する企業が開示義務化の対象となった。同年2月期決算の小売企業などは対象外だが、3月期企業は今期決算の段階で準備が必要になる。

ある上場企業からは「非財務情報を文章で記述するのは慣れておらず負担が重い」と早期の義務化を懸念する声もあった。金融庁はこうした声に配慮し、比較的開示しやすい項目を義務化の対象とした。

第1の開示内容として、有報の中にサステナビリティー(持続可能性)情報を記載する欄を新設。人的資本に関する戦略や指標、目標などの明記を求める。まず企業は経営戦略と連動した「人材育成方針」と、働きやすい職場づくりに関する「社内環境整備方針」の策定が求められる。

これらの実現度を数値で示す指標や目標も設定する。例えば従業員の満足度や定着率・離職率、人材に対する投資額などを指標とし、目標も定める。具体的にどのような指標を用いて、目標をどの水準に設定するかは企業の裁量に委ねる。

第2は人材の多様性をはかる指標だ。女性管理職比率と男性育児休業取得率、男女間賃金格差の3つの指標の開示を新たに求める。これらは女性活躍推進法などで一定規模以上の企業に公表が義務付けられており、公表している企業は有報への記載も必要になる。

日本では女性管理職の少なさや男女間の賃金格差の大きさが指摘される。経済協力開発機構(OECD)の調査では、37の加盟国のなかで日本は男女間の賃金格差が3番目に大きい。

金融庁は各企業が公正な処遇や働きやすさの実現に努めるように促す。男女間賃金格差の開示では、賃金の実額ではなく、男性の賃金水準に対する女性の比率を指標とする。全従業員、正規雇用、非正規雇用のそれぞれの区分で開示する。

有価証券報告書は金融商品取引法に基づく法定開示の一つで、虚偽記載をすれば罰則の対象となる。人的資本に関する将来の記述については、記載した内容と実際の結果が異なっても、一律には虚偽記載に問わない方針だ。虚偽記載の責任追及を懸念して企業側の開示姿勢が萎縮しないように配慮する。

金融庁は企業が開示を通じて自社の問題点を把握し、人材や職場環境への投資に積極的に取り組むことを期待する。

人材投資が企業価値を向上させて業績にも寄与すれば、さらなる投資につながる好循環が生まれる。

自主的に情報公開を進めている企業も増えているが、有報への記載が義務付けられることで企業同士の取り組みを比較しやすくなる。人的資本を重視する企業に投資マネーや人材が集まりやすくなれば、従業員をコストとみてきた企業も意識改革を迫られるようになる。

(日本経済新聞)

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