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令和臨調、3度目の挑戦 なるか衰退日本の立て直し 2022/03/07

民間が引っぱるかたちで政治のあり方を変え、この国を立て直そうとする運動がはじまる。日本生産性本部の茂木友三郎会長(キッコーマン名誉会長)らが2月28日の記者会見で発表した「令和国民会議」(令和臨調)がそれだ。6月に正式に発足させる。

政治改革への試みとしては1990年代の民間政治臨調、2000年代の21世紀臨調につづく3度目の挑戦だ。

茂木氏は「先送りされてきた課題に今、取り組まないと日本の社会と民主主義は危機的な事態をむかえる」と臨調立ち上げの理由を語る。

改革運動をつうじ世論を喚起して政党や政治家を突き動かすのがねらいだ。ずるずると先進国から転落しつつあるのに歯止めをかけ、国家再生への合意づくりをめざす。

なぜ今また令和臨調なのか。昭和からの歴史を振りかえってみよう。民間から政治に注文をつけるようになるのは、土光敏夫を会長とする第2次臨時行政調査会(土光臨調)の教訓からだ。

世論の風を背景に民から官をかえようとしたのが土光臨調だった。しかし3公社の民営化どまりで、官の本体までは行きつかなかった。利益誘導政治の改革など、ほど遠いものに終わってしまった。

「法律は国会で決まる。政党・政治家のあり方を変えない限り抜本的な改革は進まない」――。土光臨調で国鉄の分割民営化に取り組んだ亀井正夫・住友電工会長(当時)が抱いた確信だった。そこから政治とその担い手を変える仕かけづくりがはじまる。

時あたかもリクルート事件の真っただなか。政治改革を求める声がふきだす。しかし91年、政治改革関連法案は廃案となった。海部俊樹首相が退陣、政治改革は迷走する。

民間主導の政治改革運動をめざす亀井らは政治改革フォーラムをへて、92年4月、民間政治臨調を旗あげする。亀井が土光臨調以来の盟友だった赤沢璋一(元日本貿易振興会理事長)、川島広守(元官房副長官)に「民間政治臨調の立ち上げは国への最後のご奉公。これは赤紙だと思ってくれ」と参加を求めたのが語り草になっている。

経済界、労働界、学界、言論界などのメンバーが集った。若手の超党派の国会議員も加わった。中心にいたのが石破茂、岡田克也両氏らだ。自民党の分裂と新党の結成につながり、非自民連立の細川護熙内閣をもたらすきっかけにもなった。

94年1月29日未明、東京に雪がふり積もるなか、細川首相と河野洋平自民党総裁がペンを交換して合意書に署名、政治改革法は成立の運びとなった。亀井らの思いは成就した。とにもかくにも政治改革に向けて制度は一応整った。

仏をつくったからには魂を入れなければならない。制度の運用が次の課題となった。そこに挑戦したのが21世紀臨調だ。民間政治臨調をひきついで99年7月に発足。亀井が亡くなったあと03年7月、茂木、佐々木毅(東大学長)両氏らを共同代表に衣がえして第2期が再出発した。

与党による事前審査制の廃止や政府・与党による二元体制をあらためて内閣に一元化するよう促したのが21世紀臨調だった。

政治主導とは首相を中心とする内閣主導のことで、政治家主導や与党主導ではないと警鐘をならしたのもそうだ。

小泉純一郎内閣の発足から半年たった01年11月19日。亀井ら臨調のメンバーは小泉首相に、首相主導の改革断行を促す提言を手渡した。

そのあと首相はわが意を得たりと記者団に語った。

「与党の了承に法的根拠はないと聞いて面白いなと(思った)。政治学としても私のやり方に何ら問題はないッ」

学問的な裏づけも得て小泉改革は一気に加速した。思えば第2次安倍政権の官邸主導の源流もここにある。

21世紀臨調は衆院選に向けて時期と金額を明示した政権公約(マニフェスト)の作成も訴えた。茂木氏ら経済界から声があがっていたという背景もあった。

それは09年の政権交代をもたらす。皮肉なことに民主党政権の自滅にもつながった。マニフェストはもろ刃の剣だった。

一連の過程を振りかえると政治はいいとこ取りで、臨調側からはつまみ食いされた面があるのは否めない。小選挙区制も結果として失敗だったという批判は絶えない。

令和臨調がめざす第1は、政党や国会のあり方など90年代以降の改革のバージョンアップにあたる「統治構造改革2.0」だ。

次に国内総生産(GDP)の2倍超にのぼる債務残高をかかえる財政・社会保障制度の改革である。3つ目は人口減少と超高齢化を直視した国土構想の戦略だ。

それぞれ部会をつくり各界の識者に参加を求め、3年がかりで提言をまとめていく。

民間政治臨調からずっと事務局を担当してきた日本生産性本部の前田和敬理事長は次のように語る。

「平成デモクラシーの制度を検証し、運用がおかしくなっているところはあらため、担い手の政党と政治家のあり方もただしていくことで、日本を立て直していくきっかけをつかみたい」

制度、運用と来て、こんどは担い手を組み込んだ政治改革の総仕上げができるかどうか。そう平たんな道行きでないのは過去の経験が物語るとおりだが、手をこまぬいていたらこの国がもっと沈んでいくことだけはまちがいない。

(日本経済新聞)

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